顔がいいは、褒め言葉だ
キリカ様は言った。
「顔がいいは、褒め言葉だ」
⌘⌘⌘
翌日から、エメリーヌさんの厳しい指導が始まった。城中の掃除の方法や、食事の支度。備品管理のやり方。
そして、キリカ様のお相手をするためのマナー指南。
エメリーヌさんは厳しいけれど、テキパキと的確にアドバイスをくれる。甘くはしないけれど、聞いたことはしっかりと教えてくれる、それがエメリーヌさんの優しさだとすぐに気がついた。
キリカ様のお部屋の掃除をするために入室すると、キリカ様は安楽椅子で微睡んでいた。窓から差し込む光でキリカ様のプラチナブロンドの髪やまつ毛が照らされて、絵画のようだった。
そして、長いまつ毛をゆっくりと開けると、僕に向かって微笑んでくれた。
「おはよう、スヴニール」
「おはようございます。キリカ様」
そして僕の顔を見て急に、真剣な顔になる。
「スヴニールは、顔がいいな」
真顔で放たれた言葉に固まる。
顔がいい、とは。
「顔……ですか」
「ああ、顔がいい。顔がとてもいい」
「えーと……」
何と返していいか分からずにモジモジとしていると、キリカ様が聞いてくる。
「見た目を褒められるのは嫌か?」
「いえ、そう言うわけではないですが……」
顔を褒められたことがないのでどうしていいか分からずに、頭をかいた。
⌘⌘⌘
ふと、キリカ様が言った。
「顔がいいは褒め言葉だ」
⌘⌘⌘
またしても真顔で言われたので、少し呆けてしまった。自信満々にキリカ様は言い切ってくる。
「中身の方が大事とか、そう言う話じゃないんだ。シンプルに、顔がいいは褒め言葉。かっこいいでもかわいいでもなく、良いんだ。顔が」
「はぁ……」
またも気が緩んで呆けてしまうと、キリカ様はまた据わった目をしたけれど、こほんと澄まして咳払いをした。
「何だって褒めるよ。たくさん褒めたいんだから」
「……そちらが本音なんですね」
僕がそう返してみると、キリカ様はまた一つ、小さく咳払いをした。
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