第12話袴着の儀式と不穏な噂
月日が経つのは早いな~。もう三歳だよ!
生まれた当初は、混乱の極みの陥っていた時もありました。
今ではかなり落ち着いて、新しい自分に慣れてきた。なれって怖い。
「光、立派になって……。まるで天も光の
僕の晴れ舞台を見て感激している父帝には申し訳ないんだけど、ほんと、空気よめ!
周りを見ろ!
ドン引きしちゃってるじゃん!
「まさか二の宮様の
「いやいや、御寵愛著しい桐壺の更衣との愛し子。できうる限り豪華絢爛に飾り立てたいという親心であろう」
「いささかやり過ぎというものだ。二の宮様は身分の低い更衣腹。しっかりとした後ろ盾を持たない皇子なのだ。それをこのように華やかな事をなさって…悪い前例にならねばよいのだが…」
「よもや帝は二の宮様を『東宮』に据えるおつもりか?」
「それは問題だ。二の宮様は未だに『
「太政大臣様に止められたそうだ」
「後見人がいないのだから当然の事だ」
「帝は桐壺の更衣のために後見人を探しているようだ。もっとも、大臣達からは断られているようだが」
「無理もない。国政を見誤らせるような女人だ。義理とはいえ娘になど出来ないだろう」
「この件に右大臣様は怒り心頭らしいぞ」
「右大臣様の姫君は弘徽殿の女御様だ。既に一の宮様をお産みになっている。母君の身分といい、後ろ盾といい、これ以上にない『次代の東宮』だというのに……」
「いったい帝はどうなさるおつもりなのだ」
めっちゃ不安を煽ってる!
そりゃそうだ。
片や右大臣家というバックがいる女御の皇子。
対抗するのが帝の愛情だけが頼りの更衣の皇子。
本来なら、女御腹の皇子にの方に傾くんだけど、桐壺帝の常軌を逸した桐壺の更衣への愛情をみていたら「もしかして……」と勘ぐる輩も当然出てくる。
その場合なに?政変?兎に角、どう転ぶのか分からんって事だ。
ニコニコ上機嫌の父帝を見ると、ぶん殴りたくなる。
このややこしい状況を作り出している張本人だから余計に!
母親以上に、僕は宙ぶらりんの状態なんだぞ!理解してんのか!
母親は『帝の身分の低い妃』の更衣だ。
だけの僕は?
帝の第二皇子という肩書だけ。
今は良いさ。幼児だから。
でも将来は?
公家たちが懸念しているように、僕は帝の皇子であって、『親王』じゃない。
後見人がいないに等しい状態で皇族なんてやってられない。
無位無官ので生きろってか?
ふざけんな!
一生を食いつないで生ける財産なんてないぞ?
さっさと、「二の宮は将来臣下に降ろす」と宣言しやがれ!
僕の願いも虚しくこの袴義は世間でも噂になった。
『二の宮様の
帝の桐壺の更衣とその皇子に対する寵愛は深まるばかり、この分では、帝は一の宮様ではなく二の宮様を東宮にするのではないだろうか。
上達部などは、弘徽殿ではなく桐壺の方に御機嫌伺いをする者が増えているそうだ』
◇◇◇◇◇
袴着の儀:七五三の儀式。源氏物語では光源氏は三歳で儀式をした。
内蔵寮:中務省に属し、宮中の御料を司った役所。宝物を管理する。
納殿:金銀・衣装・調度品など各種の品物を納めて置く場所。
親王宣下:皇族に「親王」という地位を与えること。親王宣下を受けない限り、「親王」を名乗ることはできない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます