第11話桐壺の更衣の被害者
「そういえば、御存知ですか?皆さま。狐が主上にお
「ええ。局の主である
「狐が内裏に来る前は“お気に入り”でしたのに」
「長らく仕えてい
「
「憐れなこと。聞いた話では以前の局よりもずっと狭いそうですわ」
耳が痛い。
父帝は桐壺の更衣が自分の目の届かない処に居させることを心底嫌がって、あろうことか、清涼殿に近い
なんで空いている局にしなかったんだよ!と、思っても、清涼殿の周りの局はことごとく埋め尽くされていて空きがない状態だ。
誰かから奪うしかなかったんだろうな……。
なにせ、内裏に入内してくる女性たちが後を絶たない。
「おや、また新しい更衣が増えたのですね」
「今度は何処の
「このところ下々からの入内が相次いでおりますわね」
「先月などは二十人ほどが入内してきましたわ。入内の式も挙げずに参られる更衣のなんと多い事か……大した後ろ盾を持たない者達ばかりが増え続けているなど、内裏の質も落ちたものです」
「
「主上のことです。新たに入内してきた女人の顔すら覚えていらっしゃらないでしょう」
「ふぅ~…。弘徽殿の女御様がおりませんと、内裏の秩序と風紀が乱れる一方ですわね」
「お宿下がりなさって半年が経つのですね。弘徽殿の女御様は御加減も宜しいようで、安産が期待できるみたいです」
「まあ!それはようございました」
弘徽殿の女御は誰よりも先に入内した女性だ。
血筋、財力、家柄、美貌、才覚。全てを兼ね備えた桐壺帝の妃。彼女は内裏の女主人に等しい。
あの父帝も弘徽殿の女御だけは無視できない存在のようで、数は少ないものの、桐壺の更衣以外で唯一夜のお召しがある女御だった。
その女御が懐妊中で、今は実家に里帰りしているのだ。
鬼の居ぬ間に、なんとやら。
身分が低い公家たちが、この機に乗じて娘を宮中に出仕させている。
そのせいで他の女御たちはピリピリしていた。
その年の初夏に弘徽殿の女御が皇女を産んだ。
僕の異母妹、女一の宮だ。
◇◇◇◇◇
上達部:公卿の異称。三位以上の殿上人をいう。ただし「参議」は四位であってもこれに含まれた。
上局:生活する部屋とは別に休息に使う部屋のこと。
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