第5話乳母の長い独り言~母の立場~
その後も乳母の長い独り言は続いた。
「帝の桐壺の更衣様に対する御寵愛の深さにも困ったものです。
『片時も離したくはない』と仰り、御自身に直接仕えさせるのですから…そのような扱いを受ければ自ずと他者が桐壺の更衣様を『女房のようだ』と思われ、軽い存在と侮られてしまいますのに……。
世間では、桐壺の更衣様を『帝からの眩しいばかりの寵愛を受ける幸せな女人』とされておりますが、あのような寵愛では桐壺の更衣様にとっては辛く苦いものでございましょう……。病が癒えないのも当然です。御所での生活は酷いものだったのですから」
どうやら僕の母親は、帝の寵妃である桐壺の更衣で、あまりいい扱いをされていないようだな。
女房と間違われるような扱いて…一体。
でも、帝に直接仕える女房って意味だろうから、傍を離れる事を許されないならそういう扱いになるのか。そうだよね。妃は普通後宮にいて、帝が来るのを待ってるもんだ。
僕の母親、立場的に不味くない?妃か女房か区別がつかないような扱いって。
「ある時など、帝が昼近くまで寝過ごしてしまわれ、そのまま一日中、寝所に桐壺の更衣様と共に籠られてしまわれて……更衣様の資質まで疑われてしまい悔しゅうございました。無理やり引き留めたのは帝だと申しますのに、あたかも、桐壺の更衣様が帝を寝所からお出しにならないほど行為に耽っていると口さがない方々から侮辱され、どれほど恥ずかしかった事でしょう」
あー。こりゃ、世間での評判は最悪だな。悪女にされてないか不安。
「帝があまりにも
酷い時など、
嫌がらせというの名の虐めだ。
おかしいぞ~~~~。
女の虐めの基本は『悪口』と『無視』と相場が決まってんのに!
「またある時などは、どうしても通らなけれならない
せやね。
物理的な虐めが発生してる。
「きっと他の女御様や更衣様たちが示しあわせて戸を閉じてしまわれたのでしょう。似たような事がしばしばありましたから間違いございません。
闇夜の中、どれほど桐壺の更衣様が恐ろしい思いをなさった事か……。
長時間放置された挙句に、急な雨で全身を濡らしてしまわれた時もございます。あの時は、桐壺の更衣様は高熱を出され生死の境をさまよわれてしまったほどです」
やべー。
虐めが悪化してる。
「桐壺の更衣様はすっかり心を病んでしまわれて……」
いじめを苦に自殺する学生みたいだ……。
僕の母親は大丈夫なの?
◇◇◇◇◇
打橋:建物と建物との間の渡り廊下の一部 。取り外し式の橋。
渡殿:寝殿造りの二つの建物をつなぐ屋根付きの廊下。細殿ともいう。
馬道:殿舎と殿舎を結ぶために設けた厚板を敷いた簡単な通路。
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