第7話 双子
102号室のインターホンを押し、少ししてドアが開く。
「はい…」
出てきたのは部屋着の、僕より少し背の高い気の弱そうな男の子だった。左目に泣きボクロがあり、髪は緑がかっており肌は色白。東海林の言ったように、たしかにイケメンである。
「あの、何か用ですか…?」
好奇心が抑えられず、インターホンを押してしまったはいいが、見てみたかっただけなど言えず咄嗟にべらべらと思いついた言葉を口にする。
「僕、隣の東海林の友達で、カルマがあるからここにたまに遊びに来てて…」
「はあ…」
「清城美命っていうの、よろしく!」
我ながら意味の分からない行動に、苦笑いで握手しようと手を伸ばす。しかし握手は返されない。
「ごめんなさい、他の人に触ると兄が怒るんです…」
「え?」
「俺は
柘榴がそういいかけた瞬間、後ろからぬっと手が出てきて柘榴を抱きしめた。突然のことに驚く僕。柘榴の肩から同じ顔の――といって泣きボクロはないが――男が僕をキッとにらみつける。
「誰?あんた」
柘榴とは違う気の強そうな雰囲気。明らかに敵視されているのがわかる。
「え、えーと」
「東海林くんのお友達の清城くんだって、カルマがあってここにたまに来るからあいさつに来てくれたんだよ」
僕のためにうまく誤魔化してくれたのか、自分を守るためなのか、どちらともとれる内容で説明してくれる柘榴。説明中もずっとこちらをにらんでおり、目をそらすなんてことは許されない。
「あんた、次俺のいない前で柘榴に近づこうとしたら、殺すから」
(異常だ)
先ほど東海林がなにやら引っかかったように、仲が良いのかどうかに言葉を濁らせたことにも納得がいく。恐らくこの二人は依存しあっている。そしてそれはこの研究所にいることを考えると、おそらくカルマがそうさせているのだろう、と僕なりに結論付けることができた。
「桔梗、先輩なんだから礼儀正しくしなきゃ、ね?」
よしよし、と肩に顔を乗せた桔梗を撫でる柘榴。完全に飼いならされた肉食獣にしか見えない。二人の関係性に思考を巡らせたのもつかの間。
「おい!」
突然廊下に響く声。驚きながら声の方をを見ると、半裸でタオルを頭に乗せた東海林が小走りでこちらに駆け寄ってきていた。
「お前何やってんだ、勝手にうろうろすんな!」
「東海林くん!こんばんは」
「ちーす」
東海林を見るなりにこにこになる双子。やはり東海林は女子人気にとどまらず、後輩男子からの人気も厚いようだ。
「ごめん、つい気になって…」
「ったく、考えるよりまず行動なのは見習いてーもんだ」
はあ、とため息をつき腕を組む。風呂から出てすぐ僕の姿が見えないことに気づき、すぐ探しに出たのだろう。髪はまだ濡れており、ぽつぽつと廊下に垂れている。
「お前らも急に悪かったな」
「全然、東海林くん風邪ひいちゃいますよ」
「つか絹さん知らないすか?」
どのくらいここに彼らが住んでいるのか知らないが、皆同じ悩みを抱えて絹のもとに集まっただけあって、どこか家族のようである。うらやましさを感じつつ、顔面偏差値に圧倒される。そしてもちろん部外者の僕はそれを見ていることしかできない。
やっぱり新しく参加したコミュニティにはそれ相応のストレスがかかるな、なんて思いつつ彼らの話を聞いていた。
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