第6話 好奇心


6月。

あれから数週間たったが、放課後になると東海林とともに研究所に向かうことが増えた。部活をしていない僕たちの格好のたまり場となっており、単純に暇を持て余しているからということもあるが、稀に絹からカウンセリングと称して呼び出されることもあった。


「あれ、今日絹さんはお出かけ?」

「・・・」


珍しく所長室の明かりがついておらず、廊下にいた菫に聞いてみるも安定の真顔で首をかしげるだけ。


「絹さんってプライベートは何してる人なの?」

「知らねえ、つーかこの研究所自体どうやって運営してんのかもわかんねー」


研究所自体は2階建ての造りとなっており、1階は所長室のほか、101~103までの部屋にわけられている。東海林は103号室に住んでおり、大抵は僕もそこで時間を過ごすことが多い。


内部は1Kの間取りで、1部屋1部屋に風呂トイレが設置されており、部屋から出ずとも生活が完結する普通のアパートのような造りだ。高校生でありながら、一人暮らしとさほど変わらぬ生活をする東海林にちょっぴりあこがれる。


「ねえ、ここには何人くらい住んでるの?」


東海林の部屋に入り、ベッドに腰かけ聞いてみる。東海林はすぐにシャワーを浴びようとシャツを脱いでいるところだった。6月に入り梅雨のいやな湿気が体を不快に感じさせる。


「あ?あー、絹いれて8人じゃね?」

「え?そんなに?!」

「101に菫さん、102に俺らの1個下の双子、2階によく知らねえけど3人住んでるらしい」


何度も来てはいるものの、他の住人には一度も会ったことがない。


「2階には行くなって言われてるしな」


そう、これは僕も遊びに来るようになって絹に念押しされている。2階には危険な研究対象がいるため、決して上がってはいけない、と。東海林も例によってそう伝えられており、ここに住んでから一度も会ったことがないのだとか。


「双子にはあったことあるの?」

「学校行くときしょっちゅう。つか学校同じだしな」

「え!?」


転入して2か月。自分の学年の生徒を覚えることもまだままならない僕に、学校内の双子の存在など知る由もなかった。


「でもあいつらずーっと二人でいるからさ。なんつーの、近寄りがたいって感じ?結構イケメンだし、クラスの女子の間でも噂になってんぞ」

「そうなんだ、仲良しなんだね」

「仲良しっつか、、まあいいや、俺風呂入る」


言葉を濁しながら、東海林は浴室へ行ってしまった。気兼ねなくシャワーを浴びられる関係なことに少しうれしさを感じつつ、先ほどの双子に興味がわいてきた。仲良しでなければ、ずっと一緒にいる意味とは何なのだろうか?



(102ってことは、隣の部屋か・・・)


僕は東海林にばれないようこっそり部屋を出て、気づけば102のインターホンを押していた。

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