第5話 協力


絹が言うには、ほとんどの人はカルマをもって生まれたことに気づかない。もちろんカルマのない魂もあるが、そのほとんどは5回以内で気づかぬうちに解消してしまっているらしい。そのため研究資料も少なく、実例も協力してくれる研究対象が少ないため、まだ収集段階とのこと。


前世という、輪廻転生の考え方・また研究なども多くあるだろうが、その研究者と大きく違うことは、絹が魂(詳しくはカルマの要因となった回の魂)を読めるということだ。また驚くべきことに、握手をすれば人の心も読めてしまうらしい。


(だから最初に友達といえるか、と心情を当ててきたんだな)



「でね、お願いがあるんだけど…俺の研究に協力してくれないかな?」


「お前なあ」


「だって滅多に出会えないんだもん!それに、そう言う事がわかってて俺のとこに連れてきたんでしょ?」


「そりゃそうだけど、普通の人間は信じ「いいですよ」


揉める二人に割って入り、協力を快諾する。

転入してきて、これといった友達もおらず楽しみもない僕にとっては、非日常な体験になり、いい刺激になると思った。そして、それが真実であれはったりであれ、この二人ともっと親しくなりたかったということもある。


「本当に!?ありがとう!やったー!」


犬だったらしっぽを振っているだろう、と描写できるほど心の底から嬉しそうな絹は、隣の東海林に抱き着いた。そこまで喜んでもらえると、こちらも良いことをした、と胸がほっこりする。当の東海林はあきれ顔で、いつものことと言わんばかりに絹には構わず僕に話しかける。


「連れてきといてあれだけど、お前変わってんな」


「そうかな?」


「あとここのことは、他の奴に口外すんなよ。…俺がここに住んでる事もだ」


(あ、迷惑だったかな…)


思えば、東海林が連れてきたとはいえ、研究対象になるとはおもっていなかった様子だったし、生活に急に転入生が割り込んでくるというのは、迷惑だったかもしれない。


少しシュンとしていると、絹が東海林の手を握り、


「美命くんが心配なんだってー!」


と心の内を暴露してくれ、僕は安堵した。

ただその後すぐに絹が東海林にげんこつをくらってしまったことは言うまでもない。




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