第4話 課題
「は、前世?」
思ってもみなかったワードに、思考が停止した。
もちろんそういうことを信じている人がいることは知っているし、考え方としては面白いと思っている。ただこの夢の真相の可能性としては考えていなかったため、言葉が出なくなってしまった。
「そう。カルマっていうのは、魂に課せられた業――わかりやすくいうと課題みたいなものなんだ。ざっくり言うと4種類にわけられて、人ごとにクリアする条件がちがうの」
「と、ということは、僕は前世で人を殺してしまったから、罰を背負ったってことでしょうか…」
現実味のない内容で、頭はぐるぐると答えのない脳からどうにか話についていこうと回転する。無理もない、そこまで親交がまだ深くないクラスメイトに相談して言われるがままついてきたら、初対面の男におでこをくっつけられ、科学的根拠のないスピリチュアルな話が原因だと、あやしい施設で言われているのだから。
「どうだろ?カルマは人によっては罰にもなるし、プレゼントにもなる。でも、そのカルマをクリアできるチャンスは5回しかないんだよね」
「5回…」
「そう。そのカルマを課せられて5回人間に生まれ変わることができるんだけど、それを超えちゃうと恐ろしいことになってしまう」
課題の提出期限は守らないとね、とにっこり微笑む。
横で冷め切った紅茶をすすり始める東海林に、どういうこと?と視線を送るが、ふっと視線をそらされた。
「信じられないよね、でも証明してあげよう」
「証明、ですか」
「―――みんな緑の軍服を着ている。君は必死に拒否しているが、女性は受け入れているように見える」
「な…っ」
軍服の色など東海林に伝えた覚えはない。したがってここで一度も夢の内容を伝えていない以上、絹が事細かに夢の内容を語るのはおかしいのだ。
「ずいぶん位の高い騎士なんだね。それに君は知らなかった。でも、運命は残酷だ」
終始微笑んでいる絹から出る言葉たちに、また夢が思い出されて涙が浮かんできた。
「や、やめて…」
「殺すしかなかった。そうでしょ?」
「絹」
東海林が続きの言葉を制止するように口をはさんだ。
「泣かすな」
そう一言絹にいい、僕の方を見た。
「意味わかんねーと思う。俺も意味わかんねー。でもこいつ、魂が読めるんだよ」
「正しくは該当する魂の記憶だけ、ね!怖がらせてごめん」
(本当に意味が分からない、この夢が魂の記憶?)
気を落ち着けようと、目の前の紅茶を飲む。
(あれ、これハーブティーだったんだ…)
「美命くんは、
少し落ち着きを取り戻した僕。
「――でも、死んだ人に会うなんて不可能じゃないですか。それに、おそらく現代の日本じゃないです」
「もちろん。その人に会うことは無理だけど、その女性の魂の生まれ変わりがきっといる。美命くんの前世が美命くんとして生まれ変わったようにね」
「なるほど…」
「ただ…必ずしも近くにいるとは限らない。だからチャンスは5回あると俺は思ってるんだ。」
「もし会えたら…カルマが解消出来たら、わかるんでしょうか?」
「俺が研究を始めてまだ数年で、正直まだ未知数なことも多いんだ。わかってることとしては、また人間になれるだろうってことで、今世の時点でなにか変異が起こるかはわかってない。――まだカルマが解消した人に出会ったことがないんだ」
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