ノット リアリティー
「別世界で起こった出来事さ。直接オレには関係ない」
男は自身の眼に映しだされる映像に、ただ笑って応じた。
彼が見ていたのは、とある国でリアルタイムに行われているイベント。
そこにあふれているのは泣き声、爆風、閃光、赤い液体、傷ついた肉体……。
とても、同じ世界で行われている事象とは思えなかった。
少なくとも彼はそうだった。なぜか?
「オレの周りではそんなこと起こりっこない」
関わりがないと本気で信じていた。知人に聞いても似たような答えだった。
「そりゃそうさ。ボクたちは平和な世界に生きている。これからも変わらないよ」
「わたしも同じ意見だよ」
「そんなことよりも自分のことを優先するよ」
これらの返事が男の思いを補強してくれた。
「やっぱり、そうだよな。自分には関係ない」
一人でそう呟いていると、ひときわ大きな声が聞こえてきた。
「逃げろ。早く逃げるんだ!」
なにがあったんだろう?男が自宅から出て、周りをながめてみた。
そこには現実がありありと映しだされていた。
砲弾が少し遠くで着弾し、負傷者も発生していたのだ。
泣き叫ぶ声も徐々にだが耳に響いてきた。ゲームの世界だとは言い訳できそうになかった。
「ウソだろ……。ここは争いの現場じゃない。隣国のはずだぞ。どうしてさ……」
ほんの数分前に抱えた楽観的主観は粉々に吹き飛んだ。
同時に自分の甘さを否応なしに痛感させられた。
「リアリティー(現実味のある話)じゃなかった。これはリアル(現実)なんだ」
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