犬どもの実態
オレはビデオゲームが大好きだ。特にFPS、歩兵で戦闘を行うジャンルの作品を頻繁にプレイしていた。
「ああ、また負けた。相手は強いなあ」
上手いか下手かはどうでも良かった。ただ非現実的な世界に没入したかったのだ。
現実はどうにも退屈でつまらないものだった。同じことの繰り返し、ひたすら浴びせられる叱責、うんざりしていた。
「よし、勝った!銃撃戦で相手を倒したぞ」
だが、ゲームの世界は違う。現実とはかけ離れた疑似世界ではオレは一兵士だ。そして、仮に撃ち負けても実際に死ぬことはない。それは相手も同じだ。
「誰かが本当に傷つくことはない。なんて良い世界なんだ」
それから、数か月後のこと。オレは戦場を駆け回っていた。仲間たちとともに、まるで軍隊アリとなったように。
「おい、〇〇が撃たれたぞ!」
隊員の一人が叫ぶ。撃たれた〇〇はおびただしい出血で、どう見ても助けられそうにない。それでも、オレは仲間たちとともに呼びかけた。
「大丈夫だ。故郷に帰れるさ。だから、死ぬなよ」
そう言い終えると同時に、〇〇は息絶えていた。手から力が抜けていたのだ。
認めたくなかった。こんな現実なんて。
ゲームだから、遠慮なく撃てるのだ。本当に人を撃ちたいわけじゃない。
本音はそうであっても、オレは引き金を引き続ける。
「命を直接的にやり取りしたかったとは思っていない!信じてくれよ」
もし戦場で主張ができる立場ならば、相手国の人々にそう伝えただろう。
しかし、おそらく聞かれることなどないだろう。
侵略された側からすれば、オレたち兵士は血に飢えた猟犬。
上からの指示に従う、犬ころだと思われているに違いないのだから。
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