リアリティー
荒川馳夫
見たくないものを見せられる
逃げ惑う群衆がそこかしこにあった。それ付きまとうのは猟犬だった。
私は群衆に紛れて、ただひたすらに逃げ惑う。命を奪おうとやっきになる猟犬が迫りくる。不気味さと恐怖を引き連れて。
「頼りがいのある先輩」も「かわいい部下」も「ご近所さん」さえも区別はされない。弾丸が突き抜ければ、そこに残るのは抜け殻だけ。
そうだ。ここには小さな悪意があふれている。命の価値が最低に落ち込んだ世界が創造されたのだ。
あれこれと思いを巡らせている余裕はなかった。逃げる以外の選択肢をとれそうになく、足を全速力で振り上げていた。
その中で、私は目にしてしまった。幼馴染が倒れてしまう姿を。
長い付き合いがあった彼女からは生気が失われ、赤い液体が周りにドクトクと流れ出る現実を見たくなんかなかった。
彼女は胸をえぐられた。私はそれを見て、心をグラグラと揺さぶられた。
「どうして、どうしてだよ……」
心を占めるのは非情な現実への嘆き。
それに襲われながらも、なんとか逃げ切ることができた。
安心したのと同時に冷静な思考が戻りつつあった。
「くそ、あの猟犬どもめ。許さない……」
猟犬の行為が新たな猟犬を生み出していくのだった。
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