第8話 事実はラノベより奇なり

「これ、マジでオヤジが書いてるラノベの新作ストーリーとかじゃないんだよな・・・?」

「もちろん、全部事実で現実だよ。僕が昔から言ってた事が全部本当だった、ってやっと分かってくれた?」

「はぁ~、確かに中二病ってだけじゃ片付けらんねぇこと、いっぱいあったけどさぁ、まさか本当だったなんて・・・」


オヤジ鳥が語ったことがあまりに現実離れしていて、俺は、マジで眩暈がしそうだった。


とにかくそれによると、俺とオヤジは元々この訳分かんねぇ異世界の人間らしい。

おまけにオヤジはフェニキリアって国の王子様だった。

それで何もなけりゃずっとこの世界にいたんだけど、俺が『至宝のオメガ』として生まれて来ちまったもんだから、俺を守るために稀代の魔術師だったオヤジは俺を連れて異世界、つまり地球に避難して来た、っていうのがことの真相らしかった。


「だからね、僕や蒼真くんの言語能力や身体能力は、フェニキリア人なら普通に持ってるスキルなんだよ」

「確かにスキルだスキルだ、って言ってたけどぁ、まさか本当だとか思わねぇだろ・・・」


ばふっとベッドに仰向けに転がりながら溜息を付く。


「つか『至宝のオメガ』ってホント、何?結局奴らの狙いは俺で、だからこうやって拉致られたんだよな」


一番の疑問を口にすると、オヤジ鳥がぱたぱたと俺の胸の上に乗って来た。


「至宝のオメガはね、何百年に一度生まれる、うーん何て言ったらいいかな。そうだな、世界中の人が欲してやまない財宝が詰まった、宝物庫の鍵みたいな存在なんだよ」

「鍵ぃ?俺が?」

「うん、至宝のオメガを自分のものにした人間は、あらゆる権力や財を手に入れられるって言われてるんだ。実際、過去の文献では無一文の放浪者が至宝のオメガと契って、それから何もかもがうまく行くようになって、最後には一国の王になった、って話もあるしね」

「はぁ!?嘘だろ、そんなの都市伝説みたいなもんじゃねぇの?だって俺がそんな究極の幸運引き寄せ体質だったらさ、今までもっといい目に遭って来ても良さそうなもんじゃん」


だよな?けど俺は今までクジも当たったこともないし、好きな子に振り向いて貰ったことだってない。絶対嘘だろそれ。異世界の人間だから皆そんなファンタジー、マジで信じてるだけだろ。


疑い100%な気持ちでそう言ったら、オヤジ鳥はぷるぷると頭を振った。


「そりゃあ、至宝のオメガが能力を発揮するのは『契った相手』にだからね。オメガ本人が幸せになるわけじゃない。勿論、契った相手と本当に愛し合ってれば幸せだと思うけど、その特質からオメガはいつもあらゆる権力者が手中に収めようとする。その結果意に沿わない相手と契ってしまったオメガは、到底幸せとは言えなかったんじゃないかな。幸せな人生を送ったオメガなんて、少なくとも文献には残ってない。過去のオメガは皆、権力者や力を持った魔術師に囲われて、一生閉じ込められてたみたいだしね」

「何だよ、それ!?至宝のオメガって本人は全然いいことねぇじゃん!!自分自身にラッキーが起こるわけじゃない上に、欲まみれの奴らに狙われて一生監禁とか、理不尽過ぎんだろ!」


しかもそれが俺なんだろ!冗談じゃねぇよ!

ムカついて叫んだら、オヤジ鳥もうんうんと頷く。


「そうなんだよね~。だから僕はそんな人生を蒼真くんに送って欲しくなくて、地球に逃げ込んだんだ。昔から異世界には興味あったからね。いくつもの世界を探索していて、ドラコニアの連中が決して手出しできない場所として、地球が最も適していたんだ。何しろ地球には魔素がないからね」

「魔素?」

「ああ。ドラコニアの連中は皆、高い魔力を持って産まれる。だけど魔素・・・この世界には普通に空気と同じようにある魔力の源だけど、それがないと力を行使できないんだ。それだけじゃなくて、全く魔素がない世界じゃ存在する事も出来ない。息が出来ないのと同じだよ。だから魔素のない地球なら、奴らは蒼真くんを追って来る事も手を出す事も出来ないと踏んだんだ。そしてそれはこの前までうまく行ってた。どうやったのか、ドラコニアの王族が直接地球にやって来て蒼真くんに接触するまではね」

「ニール、か、やっぱり」

「・・・そのニールくんじゃないかな?」


オヤジ鳥のアホ毛がぴょこんと揺れて、俺も部屋に近付いて来る気配に気付いた。


「うーん、やっぱり僕でも地球から通信するのは結構キツイな~。ちょっと休むよ。あ、腕輪の効力は永久的だから、絶対外さないでね!」


そう言うと鳥の姿はぼやけて、また腕輪になって右手首に収まった。


「・・・オヤジ」


何となく腕輪をぎゅっと掴む。

たった一人、俺にとっては知らない世界、それも敵地に囚われてるって状況だけど、腕輪を通じてでも一番の味方と繋がれてるっていうのは、心強かった。

あんなでもやっぱり、俺の父親だしな。


顔を上げて扉を見つめると、ちょうどトントンとノックの音と、知っている声が響いた。




*******

説明回だけど書く方にとっては書きやすい(;^ω^)

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