まるで鏡を見ているようだという言葉。今なら妙に得心がいく。本当に鏡だったのです。


 そして、私の未来でした。


 どうやったって運命からは抜けられない――というよりかは、他人は他人の手では変えられない。その方が正しかったのでしょう。

 しかしてそれは自分自身においても変わりは無かった。


 矢張り私は私のままだった。


「結局、都市伝説というものは人の作った面白おかしいお話というだけで、現実に存在などするわけはないのでした」


 とても長い時間だった。でも、もうその日を悔やみ悲しむことはありません。


 何故なら私も、あの時の「彼」のように人生をたっぷり悔いて、準備も重ね、もう悲しむことのない「土台」を手に入れたのだから。

 様々な血生臭い「彼ら」の跡が私を導いた。


 今はもう、怖くはありません。


 嗚呼、今日。ようやく、ようやく「私の番」が回ってきたのです!


「世界一怪奇現象が発生するとか皆が大口叩いて言うものですから、余計な期待をしてしまっただけで。ああ、何もかもが徒労に終わりました。わざわざこんな時間に寒空の下、母を騙し、こんな格好をしてまで駆けてきたというのに。

 私の期待するものはどこにもなかった。

 もうお終いです」


 そうでしょう、そうでしょう。今はそうに違いない。

 しかし、いつの日か貴方は期待以上の物を手に入れる。

 未来を見て、その後チャンスを手に入れる。


 やり直す、チャンスを。


「それは私に会えた……それじゃあ意味には成り得ませんか?」


 ニヤニヤと止まらない笑いを堪えながら私は「昔の私」に向けて言葉を発しました。


「鏡」の向こうに、私の思い描く理想の未来が口を開けて待っている。


「私はこの大学に受からなければもう、死ぬしかないんです。」


「どうぞ続けて」


 嗚呼、私の美しい未来が、見えます。


 今度は、上手くやりましょう。

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