第5話 彼女と旅館で夕食

温泉に入浴した後、個室の食事所に手を繋いで向かいます。

廊下や、エレベーターの床も編竹や畳敷になっているので、浴衣のまま裸足でOKです。

受付で部屋番号を伝えて、中居さんの案内で個室に着きました。


「わあ!素敵なお部屋。 夕食楽しみ!」


さっそく、テーブルの上に置いてある花べっぷ会席のお品書きを見ながら、用意してある、かぼす果汁入りの梅酒で乾杯します。

「今日はありがとう。 本当に来てくれるのかどうか、朝、岡山駅で待って

いる間も半信半疑だったんだ。」

「すっぽかすわけ無いじゃない。 楽しみにしてたんだから。」

「初めて飲みに誘ってくれた時から、きっとこんなことを言い出すに違いないと思っていたの。 よくこんな遊びをしているんでしょう。」 

「俺、そんな顔してたのかな?」

「丸出しよ。 いつも顔から滲み出しているわ。」


思わず、先付けのじゃがいもとブロッコリーのムースを飲み込んで、グラスの生ビールを一気飲みしました。

女好きの糞親父であることを、ずっと見透かされてしまっていたのです。

動揺が止まりません。 しかし、さっき部屋で休憩していた時も、マッサージをしてあげると言いながら、猫を愛でる様に頭を撫でたり、喉をゴロゴロしたり、足の肉球をぷにぷにしていたのです。

しかも、彼女が脇腹は痛いので辞めてと言っているのにも関わらす、わざと秘口を突くように、指で強く押し「ギャーやめて!」と悲鳴を出させて、一人悦に入っていたのです。


前菜は、モロヘイヤと菊花のお浸し、牡蠣の有馬煮牛蒡添え、ポルチーニ茸のキッシュ、車海老のキャビアのせ、干し柿のクリームチーズ巻き、長芋のゼリーです。


ビールが空になったので、もう一杯グラスビールを注文しました。

しかし、言われっぱなしのままでは、面子が丸潰れです。

「君の方こそ、会社の色んな人と飲みに行っているみたいだけど、泊まりに誘われたりしない?」と言い返してみました。

「しょっ中よ。 この会社の人達どうかしているみたい。」

「あっそう!」と軽く受け流しましたが、思いがけない言葉に動揺が止まりません。 いったいどこのどいつでしょうか。見つけ次第、首を締めてやりたいです。


美味しいお料理なので、どんどん楽しい会話が続きます。 



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