第47話 事実は小説より奇(喜)なり

「BBQに誘われてコージ(仮名)の所に行ってきた。

すっごい大きな家だったぞ。お土産もたくさん貰った」

去年の夏。満面の笑みで話したのは私の父親、金造(仮名)

「いいなぁ、今年も行くなら私も誘ってね」

そうお願いしたのだが、何ら声が掛からなかった。残念。

もう秋だよ、秋。まっ、いいけど。


そもそもコージって誰?

金造の甥っ子。つまりは一つ年上の私の従兄弟いとこ

「てか、コージくん、元気で生きてたんだね」

何十年も会ってない従兄弟のコージ兄ちゃん。

私の中では30代のまま、止まっている。


幼い頃から従兄弟たちの中でも目立ちたがり屋。

お世辞にも歌は上手くないのだよ。

ないのだけど、ちびっ子カラオケ大会テレビ出演。

ガンダーラを歌っていた遠い記憶。昭和の名曲。

そもそも家族がカラオケ大好き人間。

『家族対抗歌合戦』のリスチームでテレビ出演。

ほのぼの家族を演出する選曲が多い中、

「昭和枯れススキ」で対抗した強者家族。見事撃沈。

子ども心に選曲ミスじゃね?って思ったよ。


中学生になっても目立ちたがり屋は健在。

やんちゃだったからね。

小さな小さな暴◯族のリーダーをやって町中爆音爆走。

元雷族(昭和の言い方)だった金造も注意してた。

「タバコはいいが、シンナーだけはやるなよ!」って。


彼ね、夜な夜な走ってたからなのか、仲間は多かった。

多いと錯覚するよね。人気あるんじゃないかって。単純。

成績は下から数えたほうが早いのに、

なんと生徒会長に立候補したのだよ。

「校則だらけの学校を変えていきましょう」のノリ。

結果、2位の票獲得。本当は一位だったらしいが大人の事情。

落選で激昂した従兄弟と仲間たち。先生たちと対立勃発。

やっぱりね、学力がないとダメ。素行が悪いとダメ。

社会の厳しさを従兄弟を通して学んだ私。


歌も下手で頭も悪かった従兄弟。

中卒からの寿司屋見習い。

なぜか仲間には恵まれる男。

お金を貯めて会社を立ち上げた。

バブル期は順調。重機を買って、従業員を雇って順調。

バブルはじけて借金だけ残る。残る。返済無理。

その後も家族を養う為に頑張ってきたのだけど、

なぜか離婚。そこから音信不通になった従兄弟。

(私が知らないだけで、金造は知っていたと思うけど)


しかし、消息不明になった時期もあったらしい。

会社も失くなり、家族に捨てられたら蒸発したいよね。


「コージの奴、腹が減ってキャベツ畑に忍び込んだそうだ」

「えっ?何のために? まさか盗むため?」

「違う。キャベツを食うために。むしゃむしゃ食ってたら」

金造がキャベツを貪り喰う真似で話を続けた。


「畑の持ち主に見つかった。普通、警察に突き出すよな?」

「そりゃそうだよね。不法侵入の窃盗。食い逃げ犯だもん」

「それがな、突き出さず、コージの腕っぷしを見て」

「……まさか?コージ兄ちゃん、やっちゃったの?」

嫌な予感がするデバネズミ。やんちゃな従兄弟だ。ぼ、暴力?

「違う。食べた分、ここで働けって言ってくれたらしい」

「……はい?」

「コージの奴、根は働き者だ。食べた分以上に働いたらしい」

「ほぉ、それで? まさか、そこで雇って貰えたとか?」

「それだけじゃないぞ。畑の持ち主とその娘にも気に入られて……」

「……嘘、まさか?」

「そのまさかだ。結婚して婿になって欲しいって言われたらしい。

新築一棟建ててくれたそうだ」


一文無しの逃亡者だったコージ兄ちゃん。

今はキャベツ農家の跡取り婿として幸せに暮らしている。



このネタは思わず漫画動画シナリオで使ってしまったよ。

やっぱり、がいい。

けれど、コージ兄ちゃんに期待している。

何かまたやらかしてくれることを!


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