第29話 天然ボケ

「お客様、はお持ちですか?」

「……え?」

「……は? 申し訳ございません。はお持ちですか?」

やっちまった。カードって聞かなければいけないのに、出されたお預かり書にあった名前を読んでしまった。


たぶん、ちゃんとカードって言うつもりが、視界に入ってきた「カズコ」のせいで変化しちゃったんだよな。きっと、そう。そう思いたい。


けど良かったよ。自分の名前を呼び捨てにされた挙句、持ってますかって聞かれたのに笑ってくださるお客様で。お互いツボに入ってずっと笑ってた。


別の日。



「一万円お預かり致します……三千円のお返しで……」

「ありがとう。でね、この着物は娘が着てたんだけど孫にも着せたの」

「そうなんですね。それは娘さんもお喜びでしょうね」

「今どきの子には少し古い柄かなって思ったけど」

「そんなことないですよ。レトロで素敵です。で、えーとお釣りは三千円ですね」

「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいわ」

「仕上がりましたらご連絡差し上げます。時間はいつでもいいですか?」

「夕方にお願いします。自宅の留守電に入れてください」

「かしこまりました……で、えっと私、お釣りはお渡ししましたよね?」

「……どうだったかしら? 貰ったような、貰ってないような」

「私も渡したような、渡してないような……」


やっちまった。お互い話に夢中になって釣り銭を渡したのか、渡してないのか。

貰ったのか、貰ってないのか分からなくなった。


私の手にお札がない。お客様の手にもお札がない。レジから出してないんだなって結論で三千円を渡す私。三分くらい前のことなのにお互い覚えてない。(笑)


やっちまった。レジ締めでマイナス三千円。店長に経緯を報告。不足で処理してくれるとのこと。こちらの不手際だからお客様には言えないのだ。凹むデバネズミ。


翌朝。何とそのお客様の方から電話が来たらしい。おしゃべりに夢中になってお釣りを二度貰っってしまったと。後日ちゃんと持って来てくれた。感謝。



───◯◯ちゃんって天然だよね? 二十代の職場。

───デバネズミさんて天然だよね? 今の職場。


「髪の毛を洗うとクルクルってなるんですけど、癖毛だと思います。父親は天然パーマなんですよ……きっと遺伝ですね」


天然って聞かれるとそう答えてた。真面目にそう答えてた。天然の意味が分からなくて。そういう所だよって言われて凹む、凹む。


ボケてるつもりはないんです。一生懸命に生きてるんです。


⭐︎☆⭐︎☆

「何となく連続ものぽいネタを思いついたんですが書いて頂けますか?」

動画漫画のシナリオの仕事が入った。はい、喜んで。

「ヒロインは天然ボケの芸能人です」


天然ボケ? 複雑なデバネズミ。

塩対応の委員長、会社のマドンナ、オタサーの姫。

色々なヒロインを自分なりに頑張って書いてきたが、どれもになってしまうらしく、クライアントさんが気を利かせてくれてる(泣)

既存作品とは異色すぎて新たにチャンネルを作ってる。申し訳ない。

もうすぐ切られるかもしれないわ。バクドキ。


おとぼけ、お下品は認めるのよ、私。

けど、天然ではないと思うのだよ。

(最近知った言葉だけど)養殖だよ。

キャラを作ってるんだよ。


いまさらですが、天然ってなんですか?

私って天然ですか? 解せないわ。



本物の天然さんってどういう人のことを言うのかしら?

あなたの周りの天然さんエピソードあったら教えてください。

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