第16話 デバネズミの出産秘話 2
ギャンブル婚を決め、一ヶ月間はとにかく忙しかった。不動産、布団、家具屋を飛び回り、引越。あまりにバタバタで両親との別れもバタバタ。
引越し前夜、ミヨに何が食べたいか聞かれた。私はおでん🍢と答える。
金造とミヨと三人でおでんの鍋を囲む。百恵ちゃんの秋桜脳内再生。
「こんなはずじゃなかったっていう事がこれから起きるんだからね……結婚は楽しい事ばかりじゃないから。とにかく思いやりを持って……思いやりが大事」
何度も旦那さまを大事にするよう言うミヨ。隣でうなずく金造。
「で、あれだ。体調がいい日は赤ちゃんと旦那をこんにちはさせなさい」
「……?……?」
何を言ってるのかな、金造。明日嫁ぐ娘に何をしろと言いたいのかな?
お腹の赤ちゃんに話しかけろって事かしら? 胎内記憶ってすごいものね。了解。
「旦那のちんち◯と赤ちゃんの頭をこんにちはさせるんだぞ。夫婦は思いやりが大事だ」
そっちかーい! 私は熱いのではなく、空気を読まない金造発言に玉子を吹き出しそうだった。母親も呆れて……うなずく。私の涙を返してください!
そんなこんなで、私は両親の言付けを守り無事に五ヶ月を迎えた。赤ちゃんの性別を知りたくなった私は夫と一緒に産婦人科へ。女の子だった。その日の夜、義母に電話する私。
「わぁ嬉しい! 初めての女の子。キャ嬉しい!」電話口でも喜んでくれるのが分かる。女の子って分かった時は拍手しちゃった。義母は何度も言ってくれた。
私の実家にも電話する。金造が出た。嫌な予感しかしない。
「……女の子か! 俺は生まれるまで知りたくなかった。楽しみがなくなった」
おい、金造!(父親なのに)金造の反応、おかしいよね。想定内。
くどいようだが、金造の言付けを守って臨月を迎えた。予定日まであと二週間。お腹の大きさを写真に残す。パンツ一丁で残す。マタニティーパンツって可愛いんだよ。クマさん、キリンさん、うさぎさん柄なの。
予定日一週間前。私は入院バッグの中身を何度も確認したり、お産が楽になるようにと雑巾がけをして過ごした。落ち着かなかったのである。動物本能。
───絶対、六日に産んでやる! いや生まれてきてね。
赤ちゃんに優しく声をかける。一週間、全く音沙汰がない。決戦の日は近いのに全く産気づく気配がない。
予定日当日。今日生まれなきゃ、私の計算が間違っていたってことになる。いや、そこじゃない。5、6、7日とまとめて誕生日を祝う方が効率的じゃん。いや、そこでもない。私のギャンブラーの血が騒いだのである。
「デバさん、どんな感じ?」義母からの電話にお印もないって答える。
「そろそろかね?」ミヨの電話に、今年は猛暑だから出てきたくないらしいと答える。
「こんにちは……あなたは神様はいると思いますか?」チャイムが鳴って開けたら玄関に二人組のおばさんが!
「今日、私、予定日なんです。けど生まれないんです!」とチグハグ会話。
悲しいかな、それから五日間、何も無かった。初産って遅れるのかな。遅れるんだ。このまま出て来なかったらお腹の中で……腐る? ナマモノ賞味期限案件。恐怖!
(実際は二週間を過ぎるまで大丈夫だそうです。42週目から過期産と呼ばれリスクが高くなります)
「きっと、お母さんのお腹の中が居心地いいんでしょうね。予定日を5日過ぎました。十分成長していますから出しましょう! 陣痛促進剤を使います。月曜日の朝8時に病院に来てください!」
11日金曜日の検診でそう告げられる。あー促進剤は使いたくなかったな。あっ、別にいいか。月曜日までに出ちゃえばいいんじゃない。6日出産は無理だったけど、14日までにはきっと生んでみせる!
そう意気込んだにもかかわらず、赤ちゃんは出てこなかった。
ついに14日の朝を迎える。陣痛促進剤の点滴を腕に打たれて、いざ決戦。
次回、陣痛促進剤ってそういう感じ!? パニック! 聞いてないよー!
乞うご期待!
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