第4話 句会

「ねえ、に旬という字でって読むの?」

「……そうだね。自分で調べようね」


「ねえ、TwitterのDMってどうやって送るの? 貰ったのに返信は出来るんだ」

「……誰に送りたいの?」


久しぶりに来た娘を頼って分からない事を聞く。

ちょっとイラって顔したけど、丁寧に教えてくれる娘。


「お母さんね、俳句を送りたいの。『筍』が季語なの」

「いつまでに? もう作ったの?」


うん、今日の夜までに送りたい。

しかし、まだ作っていない。さっき漢字確認したばかりだし。


あっ、一つだけ思いついた。『たけのこの〜』

句会に招待して下さった方のDMに俳句を送る。

16時から仕事だ。慌てて送る。


そう、分かっている。きっと最低でも五句は必要ね。

しかし17文字で表現出来る脳ではないのだよ。私。

毎日投稿している方を尊敬するデバネズミ。上月様、神。



あっ、思い出した。二十五年前にもこんな事があった。

娘の一歳の誕生日に記念になる事をしたかった。

独身時代からの趣味の公募ガ◯ド。

小説や童話を書いて送っていたデバネズミ。


授乳期は眠くて原稿用紙に向かえない。

ハガキに短歌を書いて送っていた。

ちょっとしたお小遣い稼ぎのため?

いや、子育て中こそ創作意欲が増していた。


『応募作品から選ばれた俳句220句が一冊の本にして

出版されます! 選者 鈴木真砂女、黛まどか両氏……』


鈴木真砂女先生? 誰? まっ、いいか。

娘一歳のお誕生日記念に俳句を一つ作って記念にしよう。


ハガキに俳句を一句書く。ポストイン。



忘れた頃にダ・ヴィンチ編集部を名乗る男性から電話が来た。

三十秒くらいで書いた俳句の事で五分くらいお話をした。



───すっかり忘れてた。

本棚から一冊の本を取り出すデバネズミ。


一番最後のページをめくる。


『一九九六年 八月  ◯◯一歳

 ◯◯ちゃんへ

お誕生日おめでとう。貴方を産んだ瞬間の喜びを俳句に詠みました。

一歳の誕生日の記念にプレゼントします。 母より  』


胎動を感じ始めた娘よ。

あなたもきっと喜びを言葉に残したいってなるよ。


感動とは同じかもしれない。


難しい言葉じゃなくてもいいって気がつくデバネズミ。


貴女が母親になる感動を……。

孫に会えたら喜びを……。


俳句で残そうっと。








☆娘に送った25年前の句、本を近況ノートに写真を載せました。

お時間と関心あればご覧くださいませ。


株式会社メディアファクトリー販売部発売

平成8年12月1日 初版第一刷発行


今は株式会社KADOKAWA メディアファクトリー

カクヨムと同じなのですね。知らんかった。(笑)




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