第3話 何の神様?
「次の休み、何処か行こうか?」
「何処かに連れて行ってくれるの? 嬉しい」
休日は家でゴロゴロしていたい夫が言う。
何か思うところがあるのだな。
何処かと書いてどこかと読む。
しかし、私の中では特定の場所。
「桜はまだよね。じゃ、いつものね」
「そうだな、いつものだね」
いつものとは、お決まりのコースの事である。
車で四十分くらいの所。神社でのお詣り。
何処かとは
春はお花見。秋は紅葉狩りを兼ねて。
夫が心を落ち着かせたい時に必ず行く神社。
鳥居をくぐり、境内をゆっくり歩く。
神聖な砂利道を手を清めてから歩く。
池には大きな鯉。
私はエサを買って……鯉に
鯉の頭に投げつけるのが好き。
夫に一瞥されたあとは、
樹齢八百年のイスノキを仰ぎ見る。
さすが古代の森。
天然指定なんちらかんちら。
春は見事な桜、秋は紅葉に心癒され
参拝。
健康を、家族の安全を、世界の平和を
たぶん夫は願うのだろう。知らんけど。
クリスチャンもどきの私は、
参拝しないで、そこら辺の人を
暇そうな人を捕まえて話しかける。
「おみくじ、何でした?」が定番。
一通りの儀式が済むと、モグモグタイム。
お土産屋さんで試食しまくり、和菓子を買い
美味しいお茶を試飲しまくり、銘茶詰め放題。
結婚してから二十七年、いつものを何回しただろう。
いや、これから何度、する事が出来るのだろう。
病気した時も、転職する時も、
そうそう、首安静ムチウチ
「今年は安産祈願しなきゃね」
「……小國神社は開運福徳・縁結びの神様だよ。
安産祈願はまた違う所でしょ。覚えてないの?」
そういえば、そんな記憶も。
八百万の神様って、神様の数の事だったかしら?
いつの間にか、脳内変換されて……
八百万の願いを叶えてくれるんだと
都合の良い解釈をしてきたデバネズミ。
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