第2話 渡しておけばよかったかな。

あった! これこれ。

二十七年前の写真を見つけて喜ぶデバネズミ。


アルバムの一ページ目はウエディングドレス姿の私。

うん、若いね。前歯もちゃんと収まっている。

夫も若獅子のようにカッコいい。惚気。


二ページ目。妊娠中の私の写真がたくさん。

お腹の膨らみが分かるように横向きだ。

三ヶ月。六ヶ月。八ヶ月。臨月。

ワンピース。マタニティー服の私。

少しずつ膨らみが大きくなっている。


「で、予防接種はやってあったの?」

夫に返事を急かされた。

娘からラインが来たんだった。

赤ちゃんの時打った予防接種の確認。


隣の引き出しを開けて母子手帳確認。


風疹、日本脳炎、ポリオ、麻疹。

百日せき、ジフテリア、破傷風。

BCGなど記録を見て返信する。


妊娠初期に血液型と予防接種、持病の有無を

産婦人科から聞かれる事を忘れていた。


タンスの奥には私自身のと産毛と

私が赤ちゃんだった時の母子手帳が入っている。


結婚した時に母親が持たせてくれた物だ。


───娘にも渡しておけばよかったかな。


娘のへその緒と産毛が入った小さな桐の箱と

臨月の大きなお腹の写真を夫に見せた。


「今度来たら、これ渡すね。旦那むこさんにも見てもらいたいし」

「……写真はやめておきなさい!」

「えっ? なんで?」


娘が可愛いのはわかるけど、子離れ出来ないんだな。

いや、若かりし頃の私の姿を手放したくないのだな。



「あんた、それパンツ一丁でしょ!」



ガビーン! 昭和の落ち込みデバネズミ。

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