4-2

 それから、アメショーさんは、おれのだんなさんになった……らしい。

 毎日、ふらっとあらわれて、おれの毛づくろいをしてくれるようになった。

 たまに、草むらにつれていかれて、抱かれた。きもちよかった。

「いい?」

「ん、んん……。あっ、あん」

「マル。かわいい」


 背中から抱かれることにも、すっかりなれてしまった。

 したあとで、ふたりで、うとうととひるねをしていると、この世でいちばん幸せな猫は、おれだというきもちになった。

「アメショーさん。すきにゃ……」

「うん」

 てれくさそうな返事がかえってきた。


「このあと、デートしないか」

「デート?」

「ふたりで、ぶらっとするってこと」

「いいにゃあ」

「起きられる?」

「まだ、ねむいにゃ……」

「日が暮れるぞ」

「そしたら、デートは、またべつの日にゃ」

「ちぇっ」

 アメショーさんが、舌うちをした。

「だって、しんどいんにゃ」

「しんどい? 俺が、へたなのかな」

「わかんない。おれの中に、なんか、あったかいものがあるにゃ。

 それがでてくるまで、ごろごろしていたいんにゃ」

「そうか」

 アメショーさんは、おれの横に、ごろっと寝そべった。

「かわいいな」

 おれをしげしげとながめて、満足そうな顔をした。

 イケメンの満足そうな顔を見て、おれも、満足した。

「アメショーさんには、他にも、奥さんがいるにゃ?」

「いないよ。子はいるけど」

 しょうげきの発言だった。

「……えっ?」

「四ひき生まれて、二ひき死んだ。たまに、様子を見にいってる」

「たまに、でいいの? どうして、いっしょに住まないんにゃ?」

「あいつらの母親がいるし。母親は、ほかの猫のパートナーになってるから。

 俺は、あぶれちまったんだよ」

 さびしそうな顔をしていた。

「そ、そうだったんにゃ……」

「うん」

「じゃあ、おれが、アメショーさんといっしょにいるにゃ」

 笑いかけると、アメショーさんは、だまったままてれていた。


 おなかが落ちついたので、体を起こした。

 アメショーさんにくっついて、歩きはじめた。



 デートは、楽しかった。

 どこまでも歩いて、いろんなものを見た。

 もえるような夕やけも見た。

 また公園に戻って、ふたりで、愛しあった。

 この日は、ずっと、いっしょにいた。

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