1-3

 おれがいつも見まわりをするところから、少しはみだしてみた。

 他の猫の気配がした。

「シャムにゃ。おれの仲間にゃ」

 アメショーさんに伝えた。「そうか」と返ってきた。


「見ない顔だな」

 シャムは、高い木の上にのぼっていた。

「アメショーさんにゃ。キジトラさんがつれてきた、助っ人にゃ」

「助っ人お?」

 シャムが、せせらわらった。

「たしかに、いい面がまえだな。

 今日は、なにもなさそうだぜ。平和なもんだ」

「そうなんにゃ」

「こんな日くらい、のんびりしてろよ。マル」

「そういうわけには、いかないにゃ」

「まじめだなあ」

 あきれたような声がふってきた。

「ずっと、そこにいるんにゃ?」

 シャムは、木から下りようとはしなかった。

「そうだな。マルは、公園に戻ってろよ。なにかあったら、知らせてやるよ」

「そうかにゃ。じゃあ、そうするかにゃ」

「またな」

 シャムにしっぽをふって、あいさつをした。


 公園へ向かうことにした。アメショーさんも、おれについてきた。

 とちゅうで、女子高生たちにからまれてしまった。

「マルちゃん。かわいいー」

「あたし、餌もってない」

「野良猫にあげちゃ、いけないんじゃない?」

「かもね」

「でも、おなかがすいてたら、かわいそうじゃん」

「そうだね」

「もふもふー」

「うちの子にしたーい」

「いやにゃ」

 たくさんの手を、なんとかかいくぐって、アメショーさんのそばにいった。

「やだ。イケメンの猫」

「ほんとだー」

「行くぞ」

「はいにゃ」

 もうなでられたくなかったので、早足で、そこから逃げだした。


「いい街だな」

「そうですかにゃ」

「飯は、どうしてるんだ」

「公園に、持ってきてくれる人がいるんにゃ。あとは、みっちゃんに、おねだりするんにゃ」

「おねだりって」

 鼻で笑われた。

「おかしいかにゃ?」

「いや。お前は、幸せなんだな」

「そうだにゃあ。不自由は、してないにゃ」

「いいことだよ」

 アメショーさんは、しみじみと言った。


 公園には、長老がいた。

「マルや。どうだった」

「異状なしにゃ」

「それはよかった。その猫が、助っ人か」

「そうにゃ。キジトラさんから、聞いてたにゃ?」

「先ほどな。

 お若いの。どうか、よろしくたのむぞ」

「ああ。わかった」

 アメショーさんがうなずく。たのもしい感じだった。

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