第12話 秘密の関係4

「ふーん、あのリアムがそんなことを言ってきたの?」


「ああ、さすが教官だな」


「あの人は昔から人の心を読むことだけは優れているのよね」


「だけって……教官も頭すごく良い人だろ?」


「でも、わたしよりは悪いよ?」


「――――」


 俺はあの後、日報をティナに渡し、正直に話すことにした。

教官に久しぶりに会って話をしていたら、急に俺とティナが付き合っているんじゃないかと疑ってきたこと、そして、嘘をつくことが出来ずに教官に関係を正直に話したこと……。

 俺は怒られる覚悟でティナに話した。

しかし、ティナの口から出た言葉は、


「別に良いんじゃない? 今まで誰にもバレずに来たことがおかしいくらいよ。それにリアムは信頼できる人だから、気にしなくても大丈夫」


 だった。

確かに考えてみれば、2年経っても誰にもバレなかったことが奇跡と言っても良い。

それに、俺とティナの関係を知っている人が教官で良かった。

教官なら一番信頼できる人だし、それに俺と約束をした。

教官の応援に応えなければならないな。


「それにしても、あのリアムがわたしのことが好きだったなんて……」


「ティナとの関わりが深かったせいもあって、ティナの本当の姿を知っていたみたいだな。誰よりも優しくて、人思いなところが教官は惹かれたって言ってた」


「ふふっ、それってヴァルと同じこと言ってるじゃない」


「俺だってティナに惹かれた理由はそれだからな。それに……こんなに可愛くて……」


 もっとティナに伝えようと思っていると、ティナは俺をじっと見つめた。

頬を赤くして、俺を上目遣いで見上げるティナを見て、俺は虜になってしまった。

そのまま雰囲気に飲み込まれた俺とティナは、お互い顔を近づけ、そしてキスをした。


「ん……。はあ……ヴァル大好きぃ……」


「ティナ……。俺も大好きだティナ」


 俺はティナにそう伝えると、ティナはとても嬉しそうな顔をして、俺の胸に顔を埋めた。

俺はそんな彼女を抱きしめて、自分に引き寄せた。

ティナの体は本当に細い。

子供っぽい体つきというのもあるが……。


「――――何か失礼なこと考えてない?」


「いや? 考えてないぞ?」


「――――わたしの見た目が子供っぽすぎるって思ってるでしょ」


「うっ……」


「ほらやっぱり……。わたしだって結構気にしてるんだからね?」


「ご、ごめんティナ……」


「分かれば良いよ」


 と言ってはいるが、ちょっと拗ねてるようだ。

微妙にだが頬を膨らませている。

 本人曰く、見た目通りだが高校生になってもあまり身体的な成長の変化があまりなかったのだそうだ。

そのため、幼馴染は年齢を重ねていくごとにどんどん大人の女性らしい見た目になっているのに、自分だけほとんど変わらないことにショックを受けていた。

今でも見た目にコンプレックスを抱いており、この話題になると絶対に拗ねるか本気で怒り出しそうになる。

 普段はそんな話をすることはないが、勘が強いティナは俺の思ったことを正確に読み取ってくる。

そして、結局ティナを怒らせてしまう……というパターンがほとんどだ。


「怒ってる?」


「別に怒ってなんかない」


「本当にか?」


「怒ってないよ!」


 ツンデレを発揮しまくるティナ。

そうやってツンデレになるティナも、これまた可愛いんだ。

本当は良くないけど、この表情を見たくなる。


「もう、さっきからヴァルが悪いこと思ってる。ヴァルなんか嫌い」


「ごめんって……。でもなティナ、見た目が幼くても俺は気にしない。何故なら……!」


「ひゃっ!」


「こうやって、軽々とティナを抱きかかえられるからな」


 俺はティナの膝裏と上半身を手で支えて持ち上げ、お姫様抱っこをした。

ティナは驚いた表情をした。

ティナの顔が眼の前にくるため、ティナの顔を近くでまじまじと見られるというのも利点だ。


「も、もうヴァルったら……。は、恥ずかしいよ……」


「本当は嬉しいくせに」


「う……べ、別に嬉しいわけないんだからね!」


「一回正直に言ってみて?」


「――――本当はすごく嬉しい……」


 ティナは俺から視線を逸した。

だが、ティナの腕は俺の首にかけている状態のため、否定はしているが本当はこれをされたことが飛び跳ねるほど嬉しいのだと分かる。

全く、ティナはどこまで可愛い人なんだ……!


「ヴァル、あのね……」


「ん?」


「な、なんでもない! そろそろ降ろしてもらえない? これされるの、結構恥ずかしいから……」


「はいはい」


「何ニヤニヤしてるの……」


 俺は仕方なくティナを降ろした。

本当はもっとされたいのだろうが、恥ずかしさが勝ってしまったようだ。

でも、これをしている時のティナの表情が良すぎるから、また次回もやることにしよう。


「――――ヴァル? その……たまにはやってくれる? その……お姫様抱っこを……」


「ああ、もちろんだ。もしかしたら、ティナの許可なしに突然やるかもしれないけどな」


「ちょっ! それは恥ずかしいからやめてよ……」


 ティナは困った顔をしながら赤くなり、また視線を逸した。

俺はティナに弱い男だな……。

好きな女ができたら男子は弱体化する……そんな言葉は本当に合ってる気がする。


「ねえヴァル。今日は一緒に寝ない?」


「えっ? どうして?」


「何だか今日はそういう気分なの。もっとヴァルと一緒に居たいっていうか……そんな感じなの」


「そうか……。分かった、今日はお邪魔するよ」


「うん!」


 ということで、今日は艦長室で一晩を明かすこととなった。

頼む、どうか暴走しないでくれ、俺もティナも……!

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