第1話

 息を切らして目を開くとそこは薄暗い見慣れた自室だった。早鐘を打ち続けていた心臓が痛いくらいだ。汗で寝巻がぐっしょりと濡れている。

 今日もまた僕は夢を見ていたらしい。

 部屋のカーテンを引く。辺りはまだ薄暗かった。

 二度寝しようともあんな気味の悪い夢を見たばかりだ。また同じような夢を見るなんてことは避けたい。いまだぼんやりとしている頭を起こすために顔を洗いに行く。

 洗面所の鏡をのぞき込むと青白い顔で死んだ魚の目をした僕の顔が映っていた。

 なぜだかおかしなことに、その時僕は見慣れたはずの自分の顔に既視感を抱いた。

 僕はその既視感の正体をつかめぬまま、荷物をまとめ、宿を出た。

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