機械ノ国
日景の餅小豆
プロローグ
―旅人:この物語における旅人とは、家族を持たず、財産を所有せず、各地を転々としているもののことを指す。―
夢というのは実に不思議な事象だ。
夢を見たことは覚えているものの、内容についてはぼんやりとしていて言葉で表すにはなかなか骨が折れる。その上、大半の夢というものは起きて数分後には頭の中から消え去ってしまい、ぼんやりとした印象と感情だけが身の内にとどまる。
どんな夢だったのか、詳しく思い出そうとするほどにその実態はかすれていってしまう。たとえそれがどんなに良い夢であろうと悪い夢であろうと、その夢に対する印象と感情だけが残る。
僕はここ数日悪夢に悩まされている。
何か恐ろしいものが迫ってくる夢を繰り返し見続けている。
だけど肝心な「恐ろしいもの」が何かを僕は覚えていない。それが大きいものか小さいものか、個体なのか団体なのか、はたまた僕が知っているものなのか知らないものなのか、それすらも覚えていない。
ただ、覚えているのは追いかけられる恐怖、夢だと気が付いた時の楽観、目覚められない焦燥、捕まりかけた時の絶望、そして目が覚めた時の安堵。それらの感情と「恐ろしいもの」というぼんやりとした印象だけだ。
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