第8話 その意志に思う意思


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、竜は?俺は生きッ———グシャ—へ?」


神楽は背後から魔竜の鉤爪に心臓を貫かれ、アッサリと命を落とした。

その日神楽は二度目の死を体験した。




「お前はまだッわっかんねぇのかッよッ!!俺はッお前と対等にっ戦えるッ!!」


『グゥラァァァア゛ァァッ!!』


「チッこんな範囲の地均し出来んのかよッ






此処は、何処だ?そもそもなんで此処に?、俺は、確か竜と、竜、竜、、、あぁそうだ、俺は死んだんだのか確かに、覚えてる、全部、何一つ忘れる事なく、鮮明に、爪が俺の体内に無理矢理入ってきた事も心臓が一瞬で潰されて体を貫通した事も、その後倒れてどんどんどんどん血が、血液が体外に出て行ってた事も、その後、急に体が動かなくなって徐々に冷たくなっていった、悲しみとか疑問とか後悔とかなんも感じる暇も無くただただ痛みと苦しみだけがそこにはあった。

俺は、多分弱くは無いんだ、だから調子に乗ってた、でも強くも無い、あぁもう意識が持たない、俺、本当に、死んだんだ……………




「ッ!?なんだ?、此処は、俺が死んだ場所?心臓は?ッ体は?竜はッ居ない、かぁ、、、なんで俺、生きてんだろ」


『グロロロロロロッ』

「あぁお前はワームか、」——バゴンッ!!


神楽の放ったその一撃はロックワームの体な三分の一を吹き飛ばした。


「ぁ、?強くなってる?あぁ、俺、復活のスキルがあったな、そのせいで自分の経験値が加算されたのか、」


「早く、帰りたいなぁ〜家に、アイツらの所に、、、」



そう考えると自然と思う所がいろいろと出てきた。

「そうだよあぁそうだ、あの暗殺者が居なけりゃこうはならなかった!!しかもあの竜、くそウゼェ、なんだよ嘲笑ってスキル、なら手加減も使えよあのクソ野郎がよぉっ!!マジで許さねぇ、竜王、奈落の王?破壊王?そんなのクソ喰らえッ関係ねぇ、俺がぶち殺してやるッただじゃ帰らねぇ、いっぺんアイツ殺してやんねぇとだめだ、そう敵打ちだよ敵討ち、絶対にだ、死んでも死んでやらねぇ、何があっても、どんな理不尽でもだ、俺は、


神楽は自分にそう言い聞かせる様に言い放つと今度は目の色を変え、

「覚悟は決まった、なら後は実行に移すだけだ、確定の死か不確定の死かそれなら俺は、不確定の死の道を歩む」

ともう一度自分に言い聞かせその闘志を燃やした。






奈落の底で人一人、それは十分に絶望に、人の心を壊すのに値する地獄では無いだろうか?自分のことすら見えない真っ暗な暗闇の中でいつ魔物が襲いかかってくるのかすらもわからない極限状態、だが神楽はそれに敗れる事なく新たなる一歩を踏み込んでいた。








    















それから体感凡そ一ヶ月程経った頃神楽はまたあの岩山の上に居た。

神楽は奈落という地獄にも勝るとも劣らない劣悪な環境のなかを生き抜き今、かつて自分の事を殺した竜に会う為に。


「ふぅ、やっぱ此処に戻って来るのは勇気がいるな、」

俺は結局この迷宮をクリアした、多分。

絶対だって言えない理由はまぁ弱かった、確実にあの竜よりも、でも魔法陣があったからそうなんだろうけど。

確かに厄介な奴はたくさん居た、実際二桁以上は死んでると思う、

ステータスがおかしい奴とかスキルがおかしい奴、どっちもおかしい奴、あと集団リンチにあった事もあった、けどそのどれもが俺の闘志を燃やす事はなかった、対策をしっかりとすれば勝てた。

でもあの竜のは違う、脳内で何回もシュミレーションしてみたけどそのどれもが毎回最後には死んだ。

まぁ最初しかしてなかったけど。

だけど気づいた、俺はもう此処じゃ強くなれない、だから俺は勝てないかもしれないけど、それでも俺は皆んなの所に帰る為に、———「」そう決めた

「魔竜、お前やっぱずっと此処で待っててくれたんだな、」


頷きはしない。

だが分かる、そんな事は必要無い、この竜は俺の為だけに此処に居る、それが分かる。


両者が向かい合い、今にも戦いが始まりそうだ、だがそこに空気を読む事なく割って入ったのが三体のロックワーム、ワームはそれぞれ先にきた二体のワームが神楽と魔竜に襲い掛かった。


「邪魔だな、——グシャッグサバゴンッ—でも今の俺らなら相手にすらならない、だろ?、そんな驚くなよ俺も強くなったんだ」


「じゃっ、初め」———ドゴォォォォン

「まずは一発、なぁ魔竜、いや、面倒臭いか、イレア、流石に舐めすぎだぞ?」


それでも魔竜は本気を出さない、神楽の全力、いやせめて自分と対等に殺り合えると分かるまでは。


「二発目は蹴りだ、」——ドゴンッ


『グゥ゛ッラァ゛ァァァッ』

「竜の息吹、それは最初に出しただろ?もう見切ってるよメテオインパクトッ」


ドゴォォォォンッドドォォォンン


「なぁ、せめて前と同じ位には本気出してくれよ、」

メテオインパクトは魔竜に当たりその周囲は土埃に包まれた。

だがそこから出て来たのは落下途中の魔竜でもなく負傷した魔竜な訳もなく無傷の魔竜の姿だった。

が、しかしその魔竜は先程のスリムな姿では無く岩石に身を包んだ岩竜や地竜とでも言うべき姿の竜だった。

その魔竜は地に足を付きその足を進めるごとに地均しを起こした。

また神楽が放った豪速球の岩メテオインパクトが当たった事により出来た土埃からはスピード重視の竜の息吹が飛んできた。

その事に直前まで気が付かなかった神楽は不意打ちを受けた。





「なぁ、お前マジで言ってんのか?鑑定なんて無くても何となく分かるだろ?こんなんじゃ傷一つつかないんだってことくらい」


神楽は竜の息吹を食らっても無傷だった。

それだけでも神楽が最初に魔竜に会った時からどれ程の成長を遂げているのかが分かる。





「あぁわかった、分かったよ、何がなんでも本気を出さないんだな?がっかりだ、本当に、、、でも良い、もう良い、死ねよ、本気じゃないお前なんて雑魚だから」


その言葉を言い終わると同時に全速力で魔竜に向かっていく神楽。

だが魔竜はそれに対して大地を変形させ槍のようにし迎撃、岩を飛ばし迎撃、壁で行手を拒み大穴を作り砂をばら撒き足取りをおぼつかせようとするも今はなく、ありとあらゆる迎撃をしたが意味はなく遂には目の前にまで迫られ神楽の全力の一撃を食らった。


「ッラァ!!」

その一撃は凄まじく咄嗟に庇った両腕での防御は意味を成さず半壊、さらに胸部分にまで少しではあるが傷が付いた。

だがそれでも魔竜はその傷をすぐにとまではいかないが今も癒し続けていた。

その成果は半壊していた腕がその巨体を支えれる程だった。





「はぁ、はぁ、、、いい加減、本気出せよ、これじゃあ、俺が惨めだろ、俺は、本気のお前を倒す為に、殺す為に強くなったんだってのに当のお前は本気を出してすらしてくれない、俺が、あそこまでして強くなったんだってのによ、、、」


人間が何を言っているのかは全て理解出来た、その人間が唯一自分が仕留め損なった存在である事も、だがそれはそれで良いのではないか?とも思った。

だって本当は、殺しなんて好きじゃなかった。

別に一匹狼見たな殺して欲しいとかは無い、でも戦いが嫌いだった。

それは自分がその時だけ変わってしまうから、自分と戦った者は総じて生きて帰ることは無く、当然誰か自分を倒す事もなかった。

だからだろうか?、自分に襲われて生き延び、更にはこの奈落を自分を除いて制覇した事がとても喜ばしかった。

だってそうしたらもう此処に囚われる方は無くなるから、だから直ぐに居なくなるだろうと思った、それと同時に少し寂しくもあったが、、、それでもやっぱり嬉しかった。

だけどその人間はまた自分の所に来た、正直どうしてだッて思ったけど嬉しかった、だってその人間は更に強く鋭かったからだ。

でもそれでもまだ自分には届かない、だから殺すのを躊躇った。

すると今回は何故か体を支配する謎のものが無くなった、つまり無理して全力で戦わないといけない状態から解放されたのだ。

だから手を抜いた、あわよくば自分を殺して更に強く、そしてアレらに牙を、と自分じゃ届かなかった頂にと思った。

でもその人間は何故か手を抜いている事に怒り出した、本気じゃない自分は敵じゃないとも、あぁやっと殺る気になってくれたのかとも思った。

でも案外その人間の全力の攻撃は痛かった。

それと同時に悲しかった、自分は聞いた、なんの為に強くなり、そして耐えてきたのかをそれを聞き、不意にも揺らいでしまった、だから、こんな弱い意志だけども、それでも強い意思が自分にはあった、もしこの人間と全力で戦ったら、どれだけ楽しいのだろうか?と、だから大義名分かも知れないけど応えなければと思った。

だから今から本気を出す。

あの人間を殺す為に、そしてあの人間の意志に応える為に。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る