第4話 奈落の中には
「ッ!?翔吾ッ敵だ!!——「なっあっおい教師がやられてる」
「動揺し過ぎです、ほら、もう此処まで刃が来ッ——「
「一応、それは私の技の中で一番殺しに特化していたのだけれど」
火骸絲は花音の技の中で一番殺しに特化しており、その火に焼かれると治る事は無く屍の様に命を削り切るまで燃え続ける火をつける細かい斬撃
まるで絲の様に斬撃を巡らせ攻撃する技である
※焼き続けると言う効果は魔力がある限りで有り、治療阻害は己の熟練度次第で、本当に傷を治す事を出来なくさせることもできなくは無い
「それは悪い事をしてしまった、でも全方位からの攻撃で意識を逸らしたのは褒めてあげたいよ、まぁその隙を突くのがコレじゃあねぇ、今回は相手も仲間も悪かった、
もしかして手加減した方がよかったのかな?」——「ガハッ!?」
黒スーツ黒手袋を着た長身の男は背後から隙を突き攻勢に出た神楽の事を見向きもせずに回し蹴りをかますと物凄い勢いで神楽は壁際まで飛んでいった
「神楽!!テッメェッこのッ——「はぁー、空気読んでくれ」
無謀にも突っ込んできた翔吾に今度は回し蹴りでは無く裏拳を決めると神楽が飛ばされた方へと殴り飛ばした
「翔吾、ッ!?ガハッ(コイツは、ヤバいのは分かったんだが、あの花音ですら遊ばれてやがる、隙がない、こんな所で死ぬ、のか?、俺は、、、俺達は、俺に、力がぁ、ち、から?、あるっあるじゃねぇか、力が、あの黒の宝石の力が、だけどどう使う?どう、)どぉッ!?——「命が危ないってんのに考え事ですか」
「ッ見え、無かった「逃げろ花音!!上に行ったら誰かが気づいてくれる!!いいから早く!!」
「はぁ落ち着きなさい、そこの貴方、」
「ん、僕?、もしかしてなんか怒らせる様な?」
「そう、私は今とても怒っているわ、貴方みたいな奴に私の技を何事もなかったかの様に逸らした事もその口調も私にその刃を向けたことも全部」
「そうか、そりゃ光栄だ、もっと怒ってもっと注意を欠いてくれ」
「それもそうね、周りの目があるとやり難いわ、だからそうしてあげる、
でも、この私の永炎に、果たして貴方は、耐えられるのかしら?」
「クッ隠してやがったなッ!!このクソアマが!!」
「なんとでも
「あ゙ァ゛?ふざけんじゃねぇこのクソガキガァッ死に晒せぇェェェ」
「はぁ、ガキね、コレじゃあ全く面白みに欠けるわ、知ってる、わけないわね、私の炎はね、酸素さえあれば何処からでも着火出来るの、範囲は半径五十メートル貴方は今私から半十メートル」
「ッ!?まさかあ゙ぁ゛ァァァア゛ァァ゛やげりぅゥゥゥ脳があ゙ァァがリャダァがうじがはが゛ラ゛やげてキ゛ュゥ゛ゥゥゥ
酸素さえあれば火がつく、有向半径五十メートルと言う言葉を聞いたその瞬間、彼は最早反射的にと言っても良いほど再び恥を捨て逃げ出した。
だがそれももう遅い、その瞬間彼は彼女の不敵な笑みを浮かべているところを見た。
彼からは全ての穴という穴から灼熱の炎が吹き出し、まるで意思でもあるんじゃないかと思うほど正確に彼をじっくりと痛めつけ火だるまに変えた。
「殺った、のか?」
「あぁ、多分な俺らはなんもしてねぇけど、あっ花音、ありがとな、お陰で助かった」
「いえ、別にいいわ、「そうか、あんな強い力だ、消耗も激しいだろうし——「私は別に平気よ?」
「今はな、本当に平気だったらお前がなんでこんなとこにいんのか、聞きたくなっちまうけどな、」
「、、、わたッ「おぉい神楽死体?あったぞぉ「あっわかった今行く、悪いな」
「いえ、大丈夫よ(やっぱり、このスキルは消耗が激しいわね、、、私は、こんな力、別に欲しくなかった、、、)お母さん」
「ん?、お母さん、か、、、懐かしいな、」「?神楽、どした?」
「いや、いい翔吾、それよりこれ」
「あぁ、そうだな、ひでぇモンだよ、肉なんて殆ど残ってない、だが、このポーションが残ってる」
その唯一無傷に等しい程に傷の無かったポーションは蓋が開いており、光の粒子が火だるまにされた男の周りに散布していた
「ッ!?おい翔吾ッ!!」バンッ
神楽はその存在を知っていた、それは名前こそ無いものの性能は随一の本人の生命力を収納し、必要な時に必要な分だけ出せるというものである。
それは死んでからも有効で、まるでゾンビの様に何度だって立ち上がってくる。
更に厄介な点は取り出した生命力の量、収納している時間に応じて、取り出した時、プラスでその者の全ステータスを底上げし、時には限界突破さえもしてしまう物なのだ。
そしてそれを今、この男は全ての生命エネルギーを取り出すという事で使った。
だが、代償がないわけでも無く、取り出した生命力は僅か1分で枯れてしまうということである、つまりその生命力によるプラス補正は1分しか掛からずそのまま生き絶えてしまう。
だがそれでも今この場にいる誰かを殺すという点に関しては1分も有れば出来てしまう、それが元からパワーアップした状態なら尚のことである。
「ジぃね゛ェェ゛ェェェ!!」
「ッガハッに゛げぇ ——ドゴォォォォンンンン
神楽は翔吾や花音に「逃げろ」と言う前に復活した男に首を掴まれ男は壁目掛けて突っ込んだ。
その途端壁は崩落し、代わりに現れたのは地面の無い、ただひたすら真っ暗な奈落の穴、それだけだった。
そして男はその奈落に神楽を連れたまま落ちて行った。
「神楽、神楽ァァァ!!」
「ッ私の、注意不足、慢心してた、だから、」
「そんな事はどうでもいいんだよ!!神楽が、助けに行か——「ダメよ、貴方まで死んでしまうわ、それじゃ、死んでまで貴方のことを守った神楽の事を無駄にするだけ」
「だけど!!」
「貴方は関係ない、コレは探索者の仕事、貴方じゃ下に降りる事も上がることも出来ない、足手纏い」
「それじゃあ!!神楽の事はどうだって良いって言うのかよ!!」
「そんな事は言ってない、今は取り敢えず何が起こったのかを報告しにいかなくちゃいけない」
「成程な、となると、今は上の奴等にしか教えれんな、パニックになる奴もいる、
だがあえてお前らには言っておこう、そいつは、元々この学校に居た誰かだ」
そんな思ってもみなかった言葉を食らった翔吾は硬直し、花音は冷や汗を垂らしその緊張感を伝えた。
「じゃあこの学校には、まだ」
「いるだろうなぁ、スパイ」
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