第7話
やられる。そう思った瞬間、異獣は見えない壁にぶつかった。
「この異獣の特徴は俊敏な動きから繰り出される爪での攻撃と鉄のように発達した体皮です。なのでしっかり弱点を攻撃しないとナイフではダメージは与えられませんよ」
異獣は見えない箱の中で暴れている。
「まずは落ち着いて回復してください」
ラウルは深呼吸しながら回復に集中する。
「そのまま聞いてください。この空間の半分はもう彼らの物です。なので周囲に漂うエネルギーも彼らの世界の物が混ざっています。だから普通より回復が遅いのです」
先に言えよとラウルはイラッとする。
「集中が乱れてますよ。今回の目的はこの状態に慣れることと実践経験を積むことです」
「そんな悠長なこと言ってていいのか?今この瞬間も侵食されてるんだろ?」
「その侵食はクラリス様が食い止めてます」
「は?」
「それがクラリス様にしか出来ない仕事です。クラリス様は唯一異世界の空間に影響を与えることができる能力を持っているのです」
「なんだよそれ、この能力は鍛えれば誰にでもなんでも出来るんじゃないのか?」
「我々の世界でなら誰でも何でもできます。ただ異世界となると勝手が違うのです。異世界のエネルギーは認知できないので使いようがないのです」
ラウルは不純物のように普通のエネルギーと一緒に漂う異世界のエネルギーとやらが使えないことに納得がいかなかった。使い方は一緒ではないのだろうか。
「難しい顔してどうしたんですか。もう回復しましたよね。さっさと戦ってください」
「ちょっと待って!」
カゲにラウルの声が届く前に異獣が再び襲ってきた。
まだ頭の整理が出来てないのに。そんなことを思いながらも目の前の脅威に集中することにした。
生き物の弱点で狙いやすい所といえば腹部だがどうだろうか。足元の石を蹴りつけ、相手の動きを見る。本能的に弱点を隠し守るはずだがそんな素振りもなく、石は腹部に当たる。
「クソッ!」
異獣の攻撃は激しさを増す。
「ダラダラやってると囲まれるぞ!」
カゲの言う通り囲まれたら処理しきれない。それに一匹でもこのままでは消耗戦になってしまう。ラウルは一度大きく距離を取り息を吐く。
「覚悟は決めた、あとはやるだけ」
ラウルはそう呟くと一気に距離を詰めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます