第4話


「それじゃあ準備をお願いね、カゲ」

クラリスは隣に控えていた男に肩を叩く。

「承知した」

カゲはクラリスの言葉に反応し床に手をつく。すると黒い渦が現れ3人を飲み込んだ。




「ちょっ、なんだこれ!?」

ラウルは目の前に広がる光景に驚く。地の果ても見えない何もない荒野が目の前に広がっていた。

「ここは訓練場よ」

「いや、だとしてもどこだよ。こんな広い場所見たことないぞ」

「ここは異空間、私達が良く訓練で使うのよ。なんにもなくて思う存分暴れられるよ」

「そうですか…」

色々と聞きたいことばかりだがとりあえず話を進めるために細かいことは気にしないことにしよう。ラウルは勝手にそう心に誓った。

「さあさっそく始めるわよ」

「はい…」

「まずあなたが手にした力について理解してもらうわ」

「はい…」

また話を聞くのかと思ったが口には出さない。話を聞くだけなら部屋でやればよかったのにとも思ったがそれも口には出さないよう我慢する。

「あなたのスキルは何かしら?」

「え、超回復とステータスには書いてますけど…」

「そう超回復。当たりのスキルよ」

「そうなんですか?なんか地味だなって感じですけど…」

「何言ってんのよ。そのスキルさえあればどんなにキツイ訓練しても大丈夫ってことでしょ。まあ地味ではあるけどね。じゃあ話している時間も勿体無いしさっそく訓練開始よ。カゲよろしく!」

「承知した」

カゲがまた床に手を着くと、ラウルの周りを囲うように透明な壁が現れた。

「え!!」

「はい、じゃあ話を聞きながらでいいから頑張ってねー。四方八方からボールが飛んでくるよー」

ふざけんな、そんな言葉を出す余裕もなくボールが飛んでくる。

「あぶね!」

「ま、とりあえずレベル1ってことで野球の軟式ボールね。スピードは160キロ。5分間避け続けて1 分のインターバル、それで1セット。そうね、とりあえず初日だし50セットにしましょうか!何か質問があったら遠慮なくしてね〜」

そんな無茶にも感じる言葉はもうラウルに届いてはいない。避けるので精一杯だ。

「ふ、ふざけんな、こんな無理だろ!」

「そんなことないわ。頑張って〜」



なんとか5分を乗り切った。

「はぁはぁ、なんなんだこの訓練は!」

「あら無駄口叩いてていいのかしら?1分しかないわよ。しっかり回復しないと」

「1分って、ふ、ふざけんな。つーかアンタキャラ変わりすぎだろ!」

「ほらほら後30秒よ〜。この時間が一番重要なんだから集中しなさい〜」

「おちょくってんのか!」

「黙って回復に専念なさい。ほら後10秒!」

「嘘だろ。は、早すぎる…」

「サン、ニー、イチ、はい2セット目スタート!」

「やってやんよー!」



「もうムリ、、、」

31セット目、力尽きたラウルはその場で倒れ込んだ。

「まあ初日にしては良くやったほうかな」

「なかなかスパルタですね」

「…私も余裕が無くなってるのよ。早く戦力になって貰わないとね。このままでは次は追い返せない」

「ですね…」





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