第3話

頭を乾かし脱衣所から出てクラリス達のいる居間へ移動する。

「ごめん、待たせたね」

「気にしないで」

そうクラリスは微笑む。俺をそして世界を救ってくれた恩人。目の当たりにしていなければあんな力があるとは思えないほど華奢な女の子だ。

「さて約束の日ね」

「ああ。勿体ぶってもしょうがないから単刀直入に聞くよ、君達は何者であの化け物と白い人間は何者なんだ?」

クラリスは細い指で自身の下唇に触れ、少し間を置いてから話し出した。

「彼らはこの世界とは別に存在する人間よ。そしてこの世界を侵略しようとしている。あの化け物は彼らが作った生物兵器といったところね」

クラリスは下唇を触りながら続ける。

「昔戦争があって負けた彼らは狭く暗い世界に閉じ込められた。そして今その復讐を始めている。奪われたものを取り返すためにね。ラウル、貴方からしたら知ったことではないかもしれないけど、これは永く続く戦いの一端でしかないのよ。ただ今回の彼らはとても入念な準備をしていたわ。これを最後の戦いにするためにね」

「なんだよそれ…、戦争なんて聞いたことないぞ!」

ラウルは想像を超えた回答につい声を荒げてしまう。しかしクラリスは淡々と続ける。

「そう彼らはひたすらに力を蓄えていたの暗く狭い世界でね。あなた達が戦争のことなんか忘れそして戦い方を忘れるまでね。その作戦は上手くいったようね。私達がいなければ貴方達は全滅し世界は乗っ取られていた。世界を奪われたくなければあなた達はまた力をつけなければいけない」

「だからこの力を渡したのか?」

「そうよ。ただ全員ではないわ。力を求めた人たちだけ。この力は求める者にだけ宿る」

ラウルはステータスとつぶやき自身の能力を確認する。

「俺の能力で立ち向かえるのか?」

「今のままでは無理ね。けどあなた達は力を得たばかり。やる気次第では立ち向かえるようになる」

「そうか、わかった」

ラウルは拳に力をいれる。

「ところでクラリス達は何者なんだ?話を聞いている限りあいつらとも俺たちとも違う世界の人に聞こえるのだけど」

「私はあなたと同じこの世界で生まれ、育った人間よ。ただもう知る人は居なくなった“狭間の住人”の末裔」

「狭間の住人?」

「昔は沢山いたらしいわ。光と闇の世界を行き来し2つの世界のバランス保つ役割を持った一族。生まれながらにして不思議力を持っているのが特徴よ」

「そうなんだ…」

ラウルは少し驚いたがすぐに落ち着くことができた。確かにあの日の異様な光景と手に入れた力のことを考えると妙に納得できる。

「俺の他にも力を手に入れた人はいるのかな?」

「いるわ。むしろ今はこの力を皆に広めるのが私達の役目だと思ってる。そして奴らに対抗できるようになって欲しい」

「わかった。それなら戦い方を教えてください」

ラウルは頭を下げる。

「…ええ。そのつもりだったわ。覚悟してね」

クラリスはラウルの決断の早さに驚く。何が彼の覚悟を支えているのだろうか。

「…わからない」

「え?」

「なんでもないわ。気合も十分みたいだしさっそく始めましょうか」




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