その不安はごもっともです。

 夕食後のデザートはミアラッハのアップルパイでした。

 気分よくリュートを引いてから、いざオーガ先生のところで修行です。

 セイントは聖闘気、聖殻、毒無効となかなか素敵なスキルをもたらしてくれています。

 コイツもたいがい人外系なクラスですね。


 オーガ先生と対戦します。

 セイントは身体能力に高い補正がつくので、いつもより楽勝ですね。


 夜明け頃にはセイントのレベルは92まで伸びました。

 レベル80のスキルは?

 【第六感】でした。

 これは霊感や虫の知らせのような五感を超越した危険感知能力のようですね。

 さすがセイント、強いスキルです。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス セイント レベル 92

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【ルテイニア地方語】【算術】

     【礼儀作法】【宮廷語】【全属性魔法】【闘気法】【真闘気法】

     【聖闘気】【練気】【仙術】【呪歌】【魔曲】【舞踏】【馬術】

     【騎乗】【人馬一体】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】【量産】

     【人形使役】【剣技】【剣術】【葬剣】【剣理】【槍技】【槍術】

     【葬槍】【鎚技】【二刀流】【多刀流】【武器伸長】【霊鎧】【聖殻】

     【素手格闘】【投げ】【関節技】【格闘術】【回避】【対人戦闘】

     【先の先】【後の先】【魔法斬り】【鎧貫き】【突撃】【気配察知】

     【罠感知】【罠設置】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔法収束】

     【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】

     【多重詠唱】【無詠唱】【魔法武器化】【魔力強化】【耐性貫通】

     【怪力】【宗匠】【俊足】【跳躍】【魅力】【気品】【美声】

     【カリスマ】【威厳】【獅子心】【幸運】【夜目】【鷹の目】

     【第六感】【過去視】【未来視】【夜の王】【毒無効】【不眠不休】

     【誘惑】【威圧】【畏怖】【指揮】【鼓舞】【士気高揚】【戦技教導】

     【福音】【変身】【光輪】【光翼】【飛翔】【不滅】【絶対命令】

     【魔法創造】【剣術創造】【創世神信仰】【神託】

     【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】

     【アルマルドとの絆】【小型召喚】【騎獣強化】【迷宮管理】

     【迷宮帰還】【迷宮の申し子】【迷宮外設置】【迷宮介入】

     【迷宮破壊】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》


 さて今日は第六十階層からのスタートです。

 闇の大精霊ヴジャトーに加えて光の大精霊オベロンも雑魚として登場するようになっていますね。

 精霊殺しの〈エレメンタルスレイヤー〉を剣術〈砕破〉で叩き込み、一撃死させます。

 光翼と仙術〈縮地〉で飛び回りながら、精霊を殺していくのが効率良い感じですかね。

 ミアラッハの魔槍で大精霊クラスとやり合うのは時間がかかりますから、精霊の相手は私が引き受けます。

 代わりに実体のある相手はミアラッハに任せることに。

 リッチも雑魚として出現するようになったので、念の為に〈マインドプロテクション〉を切らさないようにします。

 闇の大精霊ヴジャトーもリッチも闇魔法、つまり精神に作用する魔法を使ってきますからね。

 無効化しておくに越したことはありません。


 なおリッチは葬槍スキルのお陰でミアラッハでも比較的早く倒せます。

 しかし精霊といいリッチといい、素材になるものがなにもない区間ですね。

 とっとと駆け抜けてしまいましょう。


 第六十五階層、中ボスは?

 グレーターデーモンです。

 存在自体が魔法であるこいつには、魔法の武器しか効果がありません。

 そして魔法そのものに対しても高い抵抗能力があります。


 私は〈ストレージ〉からアダマンタイトの魔法の剣を取り出しました。

 ミアラッハはもちろん魔槍で攻撃です。

 一足先にミアラッハが槍術〈さみだれ〉を放ちました。

 ガガガガッと、表皮に浅い傷を付けるにとどまります。


「ミアラッハ、そいつは魔法でできています。魔法斬りを試した方がいいかもしれません!!」


「分かった!!」


 再び〈さみだれ〉を放つミアラッハ。

 魔法斬りを乗せた突きの連打は、確実にグレーターデーモンの存在を削り取っていきます。

 しかしグレーターデーモンも黙ってやられるだけではありませんでした。


「――〈ブリザード〉」


 効果範囲の大きな〈ブリザード〉を自身を中心にして放ったのです。

 自分を巻き込んでいるはずですが、〈ブリザード〉がグレーターデーモンにダメージを与えている様子がありません。

 レジストしているのか、自身を対象から外しているのか、何らかの回避手段を持っているのでしょう。

 ミアラッハが堪らずに後退しました。


 逆に私は聖殻を頼みにして吹き荒れる吹雪の中に突っ込みます。

 ダメージは軽微ですね。

 この程度なら耐えられます。

 魔法斬り〈霊破斬〉を叩き込みます。

 バッサリと腕を切り落とすことができました!


 グレーターデーモンは落ちた腕を拾って、なんとそれを己の口に持っていったではありませんか。

 そしてモシャモシャと腕を食べ始めます。

 切り離された自身の存在を補強するためでしょうか?

 まったく化け物じみていますね。


 〈ブリザード〉が途切れたので、ミアラッハも戦線に復帰しました。

 魔法斬り〈さみだれ〉でグレーターデーモンを削りにかかります。

 私も魔法斬り〈霊破斬〉で足を、腕を、切り落としました。


 食べるのは時間がかかると見たのか、グレーターデーモンは切り落とされた自身の肉体を変質させます。

 切り落とされた部位がケルベロスとなり、襲いかかってきました。

 ええい、鬱陶しいわ!!


 同時発動〈マジックハンド〉、同時発動+魔法武器化+武器伸長〈ディメンションスピア〉、槍術〈死棘〉!!


 瞬殺コンボでケルベロスを屠ります。

 後がなくなったグレーターデーモンが自分を中心にまたも〈ブリザード〉を放ちますが、私は強引に攻勢に出て存在を削り切りました。


 ようやく勝利です。


「これで第六十五階層もクリアですね」


「強かった……」


「ええ。でもまだまだ先があります」


「うん。頑張って今日はあと五階層進もう」


 相変わらず大精霊とリッチという旨味のない組み合わせの雑魚戦を切り抜けて、先に進みます。

 とうとうグレータードラゴンが稀に出現するようになりましたよ?

 〈ドラゴンスレイヤー〉〈砕破〉で首を落として、〈ストレージ〉に仕舞います。

 素材として成竜は美味しいですね。


 さて第七十階層です。

 中ボスは……フェンリルです!!

 鎖を垂らした巨大な狼ですね。

 氷属性を司る神獣です。


 遂に神獣とご対面ですね。

 その存在は既に神域にあり、魔法の武器でさえ傷をつけることは難しいという難敵です。

 ミアラッハは縮地と空歩で一気に距離を詰めて槍を突きこみます。

 しかし身をくゆらせたフェンリルの毛皮に浅い傷を付けるに留まりました。


 私は〈ディメンションスピア〉を使った瞬殺コンボを叩き込みましたが、空間を削る槍をレジストしてされてしまいます。

 仕方がないので私も近接戦闘に参加することに。

 〈ストレージ〉からアダマンタイトの魔法の剣を抜きます。


 いざ、勝負!!


 〈斬鉄〉を頭部に叩きつけます。

 フェンリルの側頭部に超重量の剣が黒い軌跡を残して打撃しました。

 斬れないのかよ!!


 フェンリルは自身を中心に吹雪を呼び始めます。

 〈ブリザード〉の魔法ではなく、吹雪を操作する権能を持っているようですね。

 私とミアラッハに〈アイスプロテクション〉をかけて冷気に対する耐性をつけておきましょう。


「GAAAAAA!!」


 フェンリルの爪がミアラッハと私を襲います。

 ミアラッハは縮地で後退しつつも、すれ違いざまに魔槍を一閃して腕に傷を負わせます。

 私も〈縮地〉しながら距離を取りました。


 そして再度、接近を試みます。

 フェンリルを縛る鎖がジャラジャラと鳴りながら私の方へと向かって来ます。

 ええい、面倒な。

 〈斬鉄〉で鎖を迎撃しますが、どうやらただの剣術では斬れない模様。

 第六感がこの鎖に絡まれるのはマズいと警告を発してきたので、私は〈縮地〉で回避することにしました。


 しかし硬いですねえ。

 ミアラッハの魔槍も私の剣も魔法も、フェンリルには有効打を与えられていません。

 私は一旦、アダマンタイトの魔法の剣を〈ストレージ〉に仕舞い、〈ディメンションソード〉を構えます。

 〈砕破〉を使ってフェンリルの首筋に空間を斬り裂く剣を叩きつけました。

 なんとか大きく傷をつけることができましたので、これで攻めることにします。


 傷を負ったフェンリルが叫びます。

 猛烈な吹雪を呼び寄せてきますが、それは〈アイスプロテクション〉で無効化済みですよ!!


 〈ディメンションソード〉〈砕破〉を繰り返しながら、フェンリルを削っていきます。

 ミアラッハは魔槍で攻撃していますが、大きな傷を負わせるには至りません。


 長期戦の末、なんとかフェンリルを撃破する頃には、〈アイスプロテクション〉を三度かけなおさなければなりませんでした。


「硬すぎ……なにコイツ」


「フェンリルは神獣ですからね。神域の獣ということで、普通の魔法では効果が薄いようです」


「クライニアの魔法は? あれ効果があったように見えるけど」


「空間を削る〈ディメンションソード〉を使い捨てにする〈砕破〉で威力を高めて強引に防御力を突破していましたが……さすがにキツいですね」


「あと三十階層もあるけど、大丈夫かなあ」


 その不安はごもっともです。

 何か神域の獣にもダメージを与えられるように、攻撃手段を開拓しなければ。


 ミアラッハと手を繋いで転移魔法陣に乗り、迷宮帰還で帝国に戻ります。

 いつもより少し帰りが遅くなりましたが、冒険者ギルドに寄って素材を売却します。

 フェンリルの素材はズタボロではありますが、オリハルコンとアダマンタイトの鎖や、毛皮と肉が素材として高値で売れました。

 死んで神性を失ったらしく、なんとかギルド職員でも解体できるようですね。

 たくさんのグレータードラゴンの素材には目を回していましたけど。

 どうやら冒険者ギルドの威信にかけてオリハルコンのナイフを用意してきたそうで、グレータードラゴンの解体は冒険者ギルドでできるようになったそうです。

 良いことですね。


 城で夕食を摂ったら、リュートの演奏をして、オーガ先生のもとで修行です。

 セイントのレベルを100にしておくくらいしか出来ることはありません。

 神性を帯びた魔物を殺す魔法の開発も行いたいですが……とっかかりがなくて難航しそうですね。

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