ついにレベルカンストです。
寝室の私のベッドの下に、魔力回復パネルを設置しました。
これは上に乗っている人物の魔力を自動的に回復していくトラップの一種です。
罠ではないが、特殊な効果をもつ床や壁などの設置物全般を罠と呼ぶので、ややこしい。
害はないので、魔力の回復の恩恵を受けつつ、〈ジェネレイト温度計〉を行使して、〈ストレージ〉に仕舞っていく。
午後一杯つかって温度計の生成をしました。
まだまだ九十本には届かないが、意外と早いペースで生成できていますね。
そういえば魔力の測定をしていないことに気づきました。
今更だが測っておくべきだろうか?
……いやオチが見えている。
膨大な魔力を測定しきれずに、測定装置の方が壊れる未来だ。
明らかに私の魔力量は、人並みではない。
少ないのならともかく、多くて困ることはあるまい。
夕食は前辺境伯も一緒だ。
ミアラッハが一日をどう過ごしたか聞いて驚いた。
前辺境伯を連れて第三階層で戦いぶりを見せたというのだ。
「オーガたちのレベル、上げたけど勝てた?」
「かなり苦戦したけど、なんとか勝てたよ。一言、言っておいて欲しかったかな」
「ごめんね。物足りなくてつい」
「それで? 物足りるようになったの?」
「それがレベル上げても余裕でね……」
「クライニア、あなた強くなりすぎたのよ」
前辺境伯は「あれと戦える騎士はウチにもいないぞ」と言った。
「ミアラッハもクライニアも本当に強くなったのだな……」
「そうですね。私もそうですが、ミアラッハもかなり強いですよ。金ランク冒険者を相手に勝利できるくらいには強いです」
「ふむ……クライニアに預けて良かった。ミアラッハ、いま幸せかい?」
ミアラッハははにかみながら「……はい」とだけ答えました。
前辺境伯は、明日に帰るそうです。
地位を息子に譲ったものの、まだまだ危なっかしくて見てられないとのこと。
ミアラッハの元気な姿が見れて、満足したようですね。
明日は前辺境伯を見送るために休日にします。
私は……温度計を生成ですかね。
まあその前に、深夜のオーガ先生と戯れる時間があるわけですが。
目指せ、ダンジョンマスター99レベル以上!!
果たしてレベル99でカンストするのか、100以上があるのか。
楽しみですね?
で、結果はというと。
惜しくも94レベル止まり。
時間が足りなかったか……必要経験値がかなり多いらしいですね。
ネクロマンサー99レベルのヨルガリアの凄さが分かろうというものです。
朝食の時間を過ごして、少し談笑した後、ブライナー前辺境伯はローレッタたちと帝国を出ました。
今日はミアラッハは部屋で兵棋演習の駒を作るとのこと。
私は師匠のもとへ行って硅砂を出してきたら、部屋で温度計作りですね。
「師匠。あ、ヒルダさんもいますね」
「おう、来たか。ちゃんとグラスワーカーになったぞ」
「久しぶりね、クライニア皇帝。私もドワーフとして頑張らせてもらうわ」
美味しいお酒のためならなんでもするって感じで頼もしいです。
ヒルダへの謝礼は、ホワイトドラゴンの鱗と皮になりました。
オリハルコンとヒヒイロカネより若干安いけど、それなりのDP出費です。
まあ今の帝国の規模なら、数日もすれば回収できるでしょう。
昨日、第二階層にした投資のことを思えば、ささいなものです。
硅砂を出していきましたが、これ九十台には足りないので、できた分を引き取って、また硅砂を出して、を繰り返さなければならないようですね。
師匠の店のスペースにも限界がありますし。
これも帝国の産業のためです。
お酒で国が潤うのなら、ためらうこともありませんね。
そして午後一杯つかって、温度計を生成し続けました。
結構、出せましたから、あと数日もあれば九十個に届くでしょう。
夕食後は、腹ごなしにリュートの練習をして、またオーガ先生のもとで修行というか経験値稼ぎですね。
ガツガツ稼ぎますよぉ!!
* * *
レベル100になった途端、得も言われぬ感覚に襲われました。
ああ、これがこのクラスの限界なのだなあ、と。
ついにレベルカンストです。
ステータスを確認すると、スキルが増えていました。
新しいスキルは?
【迷宮破壊】です。
これは支配下にある迷宮をこの世から消滅させるというとんでもないスキルです。
迷宮は一度できると、二度と消滅してくれません。
そのくせ放置していると魔物が溢れ出てくるスタンピードがあるのだから、厄介なのです。
迷宮品という見返りもあるのですが、段々と難易度を上げていく迷宮は人類にとって敵でしかありません。
その行き着く先が大迷宮、つまり迷宮の融合らしいのですが……。
さて転職を起動します。
《【転職】
ダンジョンマスター(レベル100)
ノーブル(レベル55)
ファイター(レベル61)
スカウト(レベル68)
フェンサー(レベル52)
ランサー(レベル52)
ライダー(レベル62)
グラップラー(レベル31)
プリースト(レベル20)
メイジ(レベル40)
ブラックスミス(レベル50)
アルケミスト(レベル26)
マーチャント(レベル1)
オフィシャル(レベル1)
メイド(レベル1)
トリックスター(レベル28)
テイマー(レベル60)
バード(レベル27)
ダンサー(レベル50)
ロード(レベル25)
ウォーロード(レベル26)
カースドナイト(レベル1)
アサシン(レベル21)
ハンター(レベル1)
エクスカリバー(レベル49)
グングニル(レベル36)
ドラゴンナイト(レベル1)
チャンピオン(レベル20)
ビショップ(レベル23)
ウィザード(レベル60)
オラクル(レベル1)
セージ(レベル24)
サモナー(レベル60)
ネクロマンサー(レベル1)
パペットマンサー(レベル20)
パラディン(レベル30)
モンク(レベル21)
ルーンナイト(レベル22)
バトルマスター(レベル28)
セイント(レベル61)
ハーミット(レベル22)
エンペラー(レベル60)》
さて能力値への補正の高い上級クラスのレベルカンストを目指しましょう。
スキルの美味しさを考慮すると、ウィザードかな?
《名前 クライニア・イスエンド
種族 人間 年齢 15 性別 女
クラス ウィザード レベル 60
スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【ルテイニア地方語】【算術】
【礼儀作法】【宮廷語】【全属性魔法】【闘気法】【真闘気法】
【聖闘気】【練気】【仙術】【呪歌】【魔曲】【舞踏】【馬術】
【騎乗】【人馬一体】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】【量産】
【人形使役】【剣技】【剣術】【葬剣】【剣理】【槍技】【槍術】
【葬槍】【鎚技】【二刀流】【多刀流】【武器伸長】【霊鎧】【聖殻】
【素手格闘】【投げ】【関節技】【格闘術】【回避】【対人戦闘】
【後の先】【魔法斬り】【鎧貫き】【突撃】【気配察知】【罠感知】
【罠設置】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔法収束】
【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】
【多重詠唱】【無詠唱】【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】【宗匠】
【俊足】【跳躍】【魅力】【気品】【美声】【カリスマ】【威厳】
【獅子心】【幸運】【夜目】【鷹の目】【夜の王】【毒無効】
【不眠不休】【誘惑】【威圧】【畏怖】【指揮】【鼓舞】【福音】
【光輪】【光翼】【飛翔】【創世神信仰】【シャルセアとの絆】
【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】【アルマルドとの絆】
【小型召喚】【騎獣強化】【迷宮管理】【迷宮帰還】【迷宮の申し子】
【迷宮外設置】【迷宮介入】【迷宮破壊】【経験値20倍】
【熟練度20倍】【転職】》
よし、今日からウィザードを鍛えて、さらなる魔法強化を図りたいと思います。
早朝、ミアラッハと迷宮都市キャストルリアーヌへ向かおうとしていると、神殿の前で神殿長のハーティアに会いました。
どうやら私たちを待っていたようですね。
「クライニア皇帝陛下。お話があるのですが、少しだけお時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「ええ、いいですよ。何か困ったことがありましたか?」
「いいえ。実は……昨晩、遂に神託が下ったのです」
「ほう。それはおめでとうございます。神様は何と言ってきたのでしょうか?」
「それが……『クライニアはオラクルを取得すべし、と伝えよ』とだけ。ねえクライニア陛下。陛下はオラクルになれるのですか?」
「あー……なろうと思えば、なれますね」
「え、本当になれるんですか。凄いです。神官でもなれない人の方が多いのに」
しかしオラクルですか。
実は神様からの一方的な神託が面倒くさそうだから、習得していなかったのですが。
まさかハーティアに催促させるとは思いませんでしたよ。
「それでは陛下。どうぞ神殿でクラスチェンジしていってください」
「え? ……ああ! そうですね」
転職すればいいか、と思っていたけど普通の人はモノリスでクラスチェンジするものです。
うっかりしていましたよ。
私とミアラッハは先導するハーティアについていきます。
ハーティアはさあどうぞ、と言わんばかりにモノリスの横に立ちました。
私はモノリスに触れます。
ズラリ。
クラスの一覧が表示されます。
というか表示しきれなくて横にスクロールバーが表示されてますね。
これにはミアラッハもドン引きです。
「クライニア。あなたどれだけクラスを持っているの……」
「育ててないクラスも多いんですよ?」
言い訳になってないですが、さておきオラクルですね。
文字は問題なく読めるので、オラクルを選択しました。
ステータスに変化は……ありました。
【神託】が増えてます。
ああ、やっぱりかあ。
《名前 クライニア・イスエンド
種族 人間 年齢 15 性別 女
クラス オラクル レベル 1
スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【ルテイニア地方語】【算術】
【礼儀作法】【宮廷語】【全属性魔法】【闘気法】【真闘気法】
【聖闘気】【練気】【仙術】【呪歌】【魔曲】【舞踏】【馬術】
【騎乗】【人馬一体】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】【量産】
【人形使役】【剣技】【剣術】【葬剣】【剣理】【槍技】【槍術】
【葬槍】【鎚技】【二刀流】【多刀流】【武器伸長】【霊鎧】【聖殻】
【素手格闘】【投げ】【関節技】【格闘術】【回避】【対人戦闘】
【後の先】【魔法斬り】【鎧貫き】【突撃】【気配察知】【罠感知】
【罠設置】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔法収束】
【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】
【多重詠唱】【無詠唱】【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】【宗匠】
【俊足】【跳躍】【魅力】【気品】【美声】【カリスマ】【威厳】
【獅子心】【幸運】【夜目】【鷹の目】【夜の王】【毒無効】
【不眠不休】【誘惑】【威圧】【畏怖】【指揮】【鼓舞】【福音】
【光輪】【光翼】【飛翔】【創世神信仰】【神託】
【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】
【アルマルドとの絆】【小型召喚】【騎獣強化】【迷宮管理】
【迷宮帰還】【迷宮の申し子】【迷宮外設置】【迷宮介入】
【迷宮破壊】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》
そしてすぐに神託が起動の兆候を見せました。
あ、来るなこれ。
その予感とともに、時間が止まりました。
《クライニア、聞こえていますか? 聞こえていますね?》
はいはい、聞こえていますよ。
《私は創世神。クライニア、増えすぎた迷宮を【迷宮破壊】で適度に間引きなさい》
え、破壊していいんですか?
《あなたが存在している間に迷宮を減らしておかなければ、人類はやがて強大に膨れ上がった迷宮に太刀打ちできずに滅ぶことになるでしょう》
まあ遠からず、そうなるでしょうね。
それを防ぐために、迷宮を破壊して回れ、と?
《その通りです。【迷宮破壊】のスキルを持つあなたにしかできないことです》
はあ……面倒ですがやります。
それで、報酬は?
《…………報酬?》
まさかタダ働きですか?
《創世神が人類滅亡の危機を救え、という神託をしているのに報酬が必要なのですか? 人類救済のために働く気はないのですか?》
だって迷宮が融合しまくって人類が滅亡するまで、かなり時間がありますよね?
それこそ千年単位でしょう?
そりゃ〈不老不変〉の仙術を習得しているので、いずれ来る未来に備えて迷宮を破壊して回るのはやぶさかではないのですが。
何の報酬もないというのは、ちょっと人使い荒すぎませんか。
《まったく……それではクライニア。何を報酬として求めますか?》
うーん、何を出せますか?
お金にも困ってないし、欲しいものがすぐに思いつきません。
神様なら私が喜びそうなもの、思いつきませんか?
《神を一体なんだと思っているのですか》
全知全能とまでは思ってませんけど、私の欲しがるものを提示する程度の能力はあると見込んでいますよ。
《ふむ……では固有スキルの追加でどうでしょうか。欲しいスキルを言いなさい》
固有スキル?
それは私の全属性魔法とか経験値20倍とか転職とかみたいな奴のことですか?
《その通りです。それはあなたが元々、望んだものです》
へえ……それはちょっと興味深いですね。
私、転生時にスキルを選んだんですか?
《そこにいるふたりも同様に、転生時に望んだスキルを得ているはずです》
というか、聞きたいのですがステータスバグってなんですか?
どうして日本語で書かれているんですか?
《魂にこびりついた前世の記憶と欲求がステータスバグを引き起こしています。あなたたちは前世の強い衝動を、転生時に浄化しきれなかったからステータスが人類共通語ではなく、前世の第一言語で表示されてしまうのです》
ふむふむ。
では私は……前世に強い未練のようなものがあってこのような状態にある、と?
《そう受け取っても間違いではないでしょう。あなたは転生時に、成長に特化した固有スキルを望みました。あらゆる魔法に適性をもち、あらゆるクラスになることができ、あらゆるスキルを極めることができる――そう、望んだのです》
へえ。
じゃあミアラッハは槍特化ビルドで、ハーティアは聖女ビルドを選んだんですか。
《来世にどんな生き方を望んだかで、固有スキルは決まります。前世の記憶を魂に内包しているあなたたちは、他者より優れた能力を求めがちなのです》
なるほど。
あと私たちが迷宮に潜ると、やたら宝箱が出てくるのは何故ですか?
《前世の記憶を取り戻したあなたに対するボーナスのようなものだと、迷宮神は言っています》
ボーナス?
《迷宮神の考えは私にもよく分かりません。ですがあなたという存在に特別な価値を見出しているのは確かですね》
そうですか。
では、報酬に固有スキルひとつですね。
何がいいかなあ。
武器も防具もお金もクラスもスキルも地位も充実しているんですよね。
今更、欲しいものといえば……。
創世神様に質問ですが、今この地上において、私より強いものはいますか?
《そうですね……今のあなたに勝てるだろう生物は、古代竜くらいのものでしょう。それが何か?》
では古代竜を倒せるようになるためには、何が必要でしょうか?
《古代竜はこの世の理をすでに越え、神の域に至っています。それを倒そうとするのならば、自ずと神になるしかないでしょう――》
では固有スキルとかではなく、神になりたいです。
この世の何より強くなるために。
《神への階梯を昇るというのですか。なるほどいいでしょう。条件を満たしたならば、神へのクラスチェンジを許可しておきます》
待ってください、条件ってなんですか。
報酬なんですから無条件に渡してくださいよ。
《条件はあなたが今、潜っている大迷宮と呼ばれている重合迷宮の破壊です。あれは周囲の迷宮を取り込み、最も早く人類滅亡の引き金を引く存在。あれをまず破壊しなさい。そうしたなら、神へのクラスチェンジを許可します》
なるほど、条件は大迷宮の破壊ですか。
どのみち迷宮は間引いていかなければならないといのなら、他国にある大きな迷宮からになりますからね。
望むところです。
《ではクライニア。あなたが神への階梯を昇るときを楽しみに待っていますよ》
ふ、と時が動き出しました。
「クライニア?」
「あ、ミアラッハ。今ね、神託が下ったの」
ハーティアが「本当ですか、クライニア陛下!?」と驚きます。
「ええ。創世神から適度に迷宮を間引け、とのお達しでしたよ」
「え、迷宮を間引く? どうやって……」
「私の迷宮破壊のスキルを使ってです。支配下に置いた迷宮を破壊できるスキルを習得しているんです、私」
「はあ……またいつの間に」
「とりあえず、最初に大迷宮を破壊することになりました」
「え、大丈夫なの? だって、迷宮都市は大迷宮からの産物によって支えられているのでしょう?」
「ですが同時に、複数の迷宮が合わさった危険な存在でもあるんですよ。あそこから壊せと神が望んでいるのですから、問題ありません」
実際にはいつ破壊してもいいんですが、早く神になりたいのです。
そうすれば、この世で最も強い存在となれる……。
たぎりますね!!
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