大迷宮攻略編

庭付き一戸建てを紹介されました。

 光翼での移動は、確かにゴーレム馬より速いです。

 でも感覚としては徒歩と変わらないっていうか、馬任せにして進めないので、結構、疲れるんですよね。


 これはもう一気にいかないと駄目だな、と思って丸一日中、飛んでます。

 眼下の景色を見ながら、ルテイニア地方の迷宮都市――キャストルリアーヌの街を目指します。

 地図なんてないのですが、大陸のだいたいの概要は知っていますし、隣の地方なのでなんとかなるでしょう。


 と、そんなことを思いながら飛ぶこと二日目。

 事件は起こりました。


「GAAAAA!!」


「うわ!?」


 なんとドラゴンに絡まれました。

 〈アナライズモンスター〉の結果、レッサードラゴンだと判明。

 正真正銘、亜竜ではない竜です!


 さてどうしたものか。

 倒すのは簡単です。

 しかしもったいないな、とも思うのですよ。

 せっかく迷宮の外で出会ったのも何かの縁、ここはテイムにチャレンジしてみましょう。


 転職を起動してテイマーになります。

 〈ストレージ〉からいつだったか迷宮から出た投げ縄を取り出し、――レッサードラゴン目掛けて投げました。

 よし、上手く命中しましたよ!

 レッサードラゴンはそれまでの態度が嘘のように、おとなしくなりました。

 よしよし、あとはテイムするだけです。

 ここは誘惑の出番ですね!


「私のものになりなさい」


「GRUUUU……」


 お、頭を垂れて何かを待つ仕草をしています。

 確か、名前を与えるんでしたっけね。


「ええと、よし。今日からお前はアルマルドだ」


「GRUUUUU!!」


 テイムが成功したようですね。

 縄を解きます。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス テイマー レベル 13

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【ルテイニア地方語】【算術】

     【礼儀作法】【宮廷語】【全属性魔法】【闘気法】【真闘気法】

     【聖闘気】【練気】【仙術】【呪歌】【魔曲】【舞踏】【錬金術】

     【魔法付与】【鍛冶】【量産】【人形使役】【剣技】【剣術】【葬剣】

     【剣理】【槍技】【槍術】【葬槍】【鎚技】【二刀流】【多刀流】

     【武器伸長】【霊鎧】【聖殻】【素手格闘】【投げ】【関節技】

     【格闘術】【回避】【対人戦闘】【後の先】【魔法斬り】【鎧貫き】

     【気配察知】【罠感知】【罠設置】【魔力制御】【魔法範囲拡大】

     【魔法収束】【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】

     【消費魔力軽減】【多重詠唱】【無詠唱】【魔法武器化】【魔力強化】

     【怪力】【宗匠】【俊足】【跳躍】【魅力】【気品】【美声】

     【カリスマ】【威厳】【獅子心】【幸運】【夜目】【鷹の目】

     【夜の王】【毒無効】【不眠不休】【誘惑】【威圧】【畏怖】【指揮】

     【鼓舞】【福音】【光輪】【光翼】【飛翔】【創世神信仰】

     【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】

     【アルマルドとの絆】【迷宮管理】【迷宮帰還】【迷宮の申し子】

     【迷宮外設置】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》


 飛翔スキルが生えてます。

 あとはアルマルドとの絆です。

 召喚と同じ扱いですか。

 ならばアルマルドのステータスも見えるはず。


《名前 アルマルド

 種族 ドラゴン 年齢 115 性別 男

 クラス レッサードラゴン レベル 47

 スキル 【火の吐息】【炎の吐息】【火無効】【炎無効】【爪】【牙】

     【ドラゴン語】【怪力】【威圧】【飛翔】》


 『レクタリス地方語のスキル結晶』と『ルテイニア地方語のスキル結晶』を生成して、アルマルドに使用させます。

 確か高位のドラゴンは人語を操るはず。

 アルマルドも、スキル結晶を使えば言語が増えるはずです。

 結果は?


《名前 アルマルド

 種族 ドラゴン 年齢 115 性別 男

 クラス レッサードラゴン レベル 47

 スキル 【火の吐息】【炎の吐息】【火無効】【炎無効】【爪】【牙】

     【ドラゴン語】【レクタリス地方語】【ルテイニア地方語】【怪力】

     【威圧】【飛翔】》


「アルマルド、話はできそうですか?」


「はいマスター。言語スキル結晶なんて珍しい品を使っていただき、感謝します」


「大丈夫ですよ。大して珍しいものじゃないですから」


「え?」


「いえ、こちらの話です。キャストルリアーヌに行きたいのですが、アルマルドに乗っていいですか?」


「喜んで! キャストルリアーヌというと、大迷宮がある街で合ってますか?」


「その通りです」


「上空を飛んだことがあります。ささ、背中にどうぞマスター」


「では遠慮なく」


 乗ったはいいものの、騎乗具がないので足場が不安定ですね。

 魔法でなんとかしましょう。

 〈ストラグルバインド〉でアルマルドの背中に自分の身体を固定します。


「よし、出発してください」


「はい!!」


 アルマルドが飛びます。

 わあ、楽ちん。

 これはいいですねえ。


 アルマルドの翼でキャストルリアーヌに辿り着いたのは、それから丸二日後のことでした。


 * * *


「ありがとうございます、アルマルド。また呼び出しますが、今は自由にしていていいですよ」


「はい、マスター。また呼んでくださいね」


 〈ストラグルバインド〉を解除して、地上に降ります。


 迷宮都市キャストルリアーヌは、街の中心に大迷宮の入り口があります。

 私は街の外の少し離れた場所から、冒険者タグを見せて街に入りました。

 別名、冒険者の街と言われるキャストルリアーヌは、行き交う人々の多くが胸に冒険者タグを下げています。

 とりあえず、転移先として相応しい一軒家を購入しましょう。

 冒険者ギルドに向かいます。

 この街の冒険者ギルドは支部ではなく本部です。

 なので、建物は大きく、多くの冒険者が出入りしていました。


 私も入ります。


 相談カウンターに並び、順番を待ちます。

 その間、男性のぶしつけな視線を幾度となく感じましたが、無視しました。

 魅力スキルが悪さをしているのでしょう。


 順番が来たので、椅子に座ります。


「こちらは相談カウンターとなっています。どのようなご用件でしょうか?」


「ひとりで住める一軒家を購入したいのですが」


「不動産のご購入ですね。住むのはあなたひとりでいいのかしら?」


「はい。迷宮が近いと嬉しいですね」


「残念ながら、迷宮近くは競争が激しく、空き物件はないのです」


「そうなんですね。じゃあ少し離れてもいいので、ちょうど良さそうな物件を紹介してください」


「不動産屋をご紹介しますので、そちらに相談してみてくださいね」


「あ、そうなんですね。分かりました。不動産屋を紹介してください」


「女性のひとり住まいなら、ここがオススメです」


「分かりました。ではここに行きます」


 私は不動産屋に向かいました。

 女性のひとり暮らしに向いているというだけあって、不動産屋の建物は綺麗で清潔感があります。

 中に入って、女性の受け付けに声をかけました。


「すみません。ひとり暮らし用の家を買いたいのですが」


「不動産のご購入ですね。失礼ですが、ご予算はどのくらいでしょう」


「そう大きくなくてもいいんです。予算ということなら、金貨1000枚くらいならすぐ出せますけど」


「え、金貨1000枚ですか?!」


「そこまで立派な家屋じゃなくてもいいんですけど」


「そ、そうですよね。ひとり暮らしですものね。ご安心ください、治安のいい地区にあるひとり暮らし用の物件を紹介できます」


「それじゃあ、そこを下見させてください」


「はい、喜んで」


 私は女性と一緒に、物件の下見に向かいます。

 治安がいい、というだけあって、閑静な住宅街にある、庭付き一戸建てを紹介されました。

 少し広すぎるかな?

 でも一戸建てと言ってしまったからには、このサイズくらいが最小でしょう。


「いかがでしょうか」


「そうですね。中も見せてもらえますか?」


「はい」


 中も綺麗にしてあります。

 家具を用意すれば、すぐにでも住めそうですね。

 とはいえ拠点は帝国の城ですが。

 ここには転移ポイントを設置して、〈ディメンションゲート〉で行き来するだけになる予定です。


「いい感じですね。おいくらでしょう」


「金貨250枚になります」


「分かりました。では不動産屋で支払います」


「荷物をお持ちでないようですが……」


「時空魔法が使えますので」


「あ、なるほど」


 その後、不動産屋で一括支払いして、鍵を貰います。

 冒険者タグに紐付けられた預金口座から、年に一回、税金が支払われるそうです。

 冒険者ギルドに向かい、金貨1000枚を預金しておきます。

 山と積まれた金貨に周囲が静かになりましたが、気にしたら負けですね。


 その後は家に入って、転移ポイントを設定します。

 二階のひと部屋を転移用に使うことにしました。

 〈ディメンションゲート〉を行使すると、グワン、と穴が空きました。

 成功です。

 迷宮都市から帝国に戻り、城へ帰還。

 どうやらミアラッハは第三階層でオーガ先生と戯れているようですね。

 修行熱心です。

 人のこと言えないと思いませんか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る