自分の作品を見せるのが一番ですよ。

 早朝になって、〈ディメンションゲート〉でキウス王城の客間に戻ります。

 さて昨晩の成果を確認しましょう。


 スカウトのレベルは、68になりました。

 スキルがふたつも増えますよ、やったね。

 新しいスキルは?

 【鷹の目】と【夜目】でした。

 鷹の目はいわゆる空からの俯瞰の視界を得るスキルですね。

 夜目はそのまま、暗くてもものがよく見えるようになるスキルです。

 髪飾りや〈ナイトウォーカー〉があるので、夜目は微妙ですが……まあいいでしょう所詮は下級クラスです。

 期待しすぎてもいけません。


 転職を起動します。


《【転職】

 スカウト(レベル68)

 ノーブル(レベル55)

 ファイター(レベル61)

 フェンサー(レベル52)

 ランサー(レベル52)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル40)

 ブラックスミス(レベル50)

 アルケミスト(レベル26)

 マーチャント(レベル1)

 オフィシャル(レベル1)

 メイド(レベル1)

 トリックスター(レベル28)

 バード(レベル25)

 ダンサー(レベル1)

 テイマー(レベル1)

 ロード(レベル25)

 ウォーロード(レベル26)

 カースドナイト(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 ハンター(レベル1)

 エクスカリバー(レベル49)

 グングニル(レベル36)

 チャンピオン(レベル20)

 ビショップ(レベル23)

 ウィザード(レベル60)

 オラクル(レベル1)

 セージ(レベル24)

 サモナー(レベル60)

 ネクロマンサー(レベル1)

 パペットマンサー(レベル20)

 パラディン(レベル30)

 モンク(レベル21)

 ルーンナイト(レベル22)

 バトルマスター(レベル28)

 セイント(レベル61)

 ハーミット(レベル22)

 ダンジョンマスター(レベル66)

 エンペラー(レベル60)》


 ん?

 ハンターが増えてますね。

 狩人のクラスですが、一体なんの条件を満たしたのでしょうか。

 スカウトのレベル……はさすがにないでしょう。

 それ以外で考えられるのは、鷹の目のスキルかな?

 この世界ではハンターは鷹匠の役割も兼ねていますからね。

 本来は【弓技】がないと就くことができないと思うのですが、どうやら鷹の目でもいいらしいです。

 多分ですが。


 ともあれ次のクラスはどうしましょうね。

 ダンサーかな?

 パーティで踊る機会があると思うのです。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ダンサー レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【真闘気法】【聖闘気】【練気】【仙術】

     【呪歌】【魔曲】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】【量産】

     【人形使役】【剣技】【剣術】【葬剣】【剣理】【槍技】【槍術】

     【葬槍】【鎚技】【二刀流】【多刀流】【武器伸長】【霊鎧】【聖殻】

     【素手格闘】【投げ】【関節技】【格闘術】【回避】【対人戦闘】

     【後の先】【魔法斬り】【鎧貫き】【気配察知】【罠感知】【罠設置】

     【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔法収束】【魔力自動回復】

     【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】【多重詠唱】【無詠唱】

     【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】【宗匠】【俊足】【魅力】

     【気品】【美声】【カリスマ】【威厳】【獅子心】【幸運】【夜目】

     【鷹の目】【夜の王】【毒無効】【不眠不休】【威圧】【畏怖】

     【指揮】【鼓舞】【福音】【光輪】【光翼】【創世神信仰】

     【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】

     【迷宮管理】【迷宮帰還】【迷宮の申し子】【迷宮外設置】

     【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》


 社交ダンスは貴族院以来です。

 上手く踊れるといいのですが……。


 しばし時間を持て余していると、朝食の時間になりました。

 部屋でいただくことにします。


 夜のパーティまで時間があるので、王都を観光したいと言ったら、上司に確認をとります、とメイドさん。

 勝手に外出もできないのか……。


 しばらく待つと、外務卿がやって来ました。


「王都の観光でしたら、私がご案内しましょう」


「いえ、そんなお手間を取らせるようなことはできません。ひとりで羽根を伸ばしたいと思っていたのですよ?」


「しかし賓客をおひとりにするのもはばかられます。何かトラブルがあってはなりません。申し訳ないのですが、私にエスコートさせてください」


「はあ……そうですね。仕方ないですね。そこまで仰るなら」


「ありがとうございます。これから出かけられますか?」


「ええ。是非」


 そういうわけで、ライアン外務卿と一緒に観光することに。

 気疲れしそうだなあ。


 そんな内心とは裏腹に、ライアン外務卿は「それではエスコートさせていただきます」と言いいました。

 部屋でひとり暇するよりマシかなあ。


 まずライアン外務卿と馬車に乗ります。

 連れて行かれたのは、王都の高級店。

 主に衣服を扱っている店ですね。


「ライアン外務卿、ここは?」


「服飾を専門に扱っている店です。お気に召しませんか」


「うーん。私、装備はこれで間に合ってますから」


「そ、装備ですか……。冒険者らしいですな。普段着などはどうしてらっしゃるのですか?」


「普段着もこれですよ。〈クレンリネス〉で着回していますし、〈リジェネレート〉が付与されているのでほつれることもありません」


「り、〈リジェネレート〉が付与されているのですか?! それは……なんとも。さすがは凄腕の冒険者ですな」


 苦笑しか返せません。


「今夜のパーティのドレスはどうされますか? お持ちになっているドレスに似合う装飾品なども取り扱っているはずですが」


「そうですねえ。まあ見るだけ見てみましょうか」


 ライアン外務卿の顔を潰すのも忍びないので、ウィンドウショッピングと洒落込みましょう。

 店に入ると、店員さんがひとりついてくれます。

 私はしがない男爵家の者でしたので、こういう最上級の対応はなかったものですから、偉くなったもんだなあと感慨にふけります。


「装飾品を見たい」とライアン外務卿が告げて、装飾品のあるフロアへ。

 おお、まるごと装飾品のフロアなんですね。

 宝石類はそれなりに迷宮産のものを見ているので、特に心惹かれるものはありませえん。

 おや、一番高級なガラスケースに入った真珠のネックレスに見覚えがあります。

 あれは多分、オークションで金貨500枚くらいになった奴。

 この店が買ったのですかね。

 お値段、金貨700枚です。


「お目が高い。そちらの真珠のネックレスは粒の大きさが揃っている一品ですな」


「ああいえ。実はこれ、多分なのですが私たちが迷宮の宝箱から入手してオークションに出されたものじゃないかなあ、と思っていたところでして」


「なんと! それは……また……」


 金額をチラ見した外務卿が狼狽しています。

 売値がこの値段だから、多分、間違いないよね。


「てっきり王家あたりが落札したのかと思っていました」


「いや、確かに王家に相応しい品ではありますが、オークションに毎回参加されるわけではないので、落札しそびれたのでしょうな」


「なるほど、確かに毎回オークションに参加はしないでしょうね」


 でもこんな品があるなら、王家に予め連絡が行ってもおかしくはないと思うのだけど。


 雑談をしながら装飾品を眺めていきます。

 宝石は綺麗だけども、高いお金を出して購入する気になれないんですよねえ。


 そんな気配を察してか、ライアン外務卿は「そろそろお昼ですな。何か食べたいものはありますか?」と聞いてきました。


「そうですね……ひとりならその辺の屋台を巡るつもりだったのですが……」


「屋台ですか……」


「ああいえ。ライアン外務卿が一緒ですし、屋台はないでしょう。お任せしてもよろしいですか?」


「はい。では私の行きつけの店がありますので、そこにしましょう」


 店を出て、馬車で近くにあるレストランへ。

 ドレスコードは大丈夫なのかな? と思っていたら、個室へ案内されました。

 行きつけというだけあって、融通が効くのでしょう。


「ここは王城の元料理人が料理長を務めておりますから、味は保証できます。もっともクライニア皇帝は美食に慣れていらっしゃるので、驚きは少ないかも知れませんが」


「いいえ。私、確かに食事は美味しい方がいいと思っていますけど、そうこだわりがある方じゃないんです」


「そうなのですか?」


「ええ。城の者たちが頑張ってくれているだけで」


「向上心のある料理人をお持ちなのですね」


「そうですね。配下には恵まれています」


 ポークをはじめとした料理人たちは、私がDPで用意した連中だ。

 ダンジョンマスターである私に忠誠を誓っているようなものなので、手を抜くなどということはあり得ない。


 料理が順番に運ばれてくる。

 注文はしていないが、コース料理なのだろう。

 味は満足のいくものだった。


「帝国は食糧をどこから輸入しているのですか?」


「ああ、食糧は実は別の階層で農業をしています。だから肉も野菜も新鮮なものが食べられるのですよ」


「なんと、それは気づきませんでした」


「農業をしている階層は一般には解放していませんからね」


 そんな話をしつつ、食後のお茶をいただきます。

 そういえばワインや蒸留酒は作っているけど、お茶は作っていなかったな。

 帰ったらお茶も作らせよう。


 午後は私に合わせてくれたのか、武器屋を見て回りました。


「ここの店主はドワーフでして、認めた者にしか武器を売らないのですよ。腕が良いだけにもったいないのです」


「分かります。私も鍛冶をたしなんでいて、師匠がドワーフなので」


「鍛冶を……自らおやりになるのですか?」


「ええ。自分の剣を打つために随分と修行をしました」


「はあ、色々できるのですね」


 そんな会話を聞きつけたのか、ドワーフの店主が「その細腕で剣を打てるのか?」と聞いてきました。


「君! この方はクライニア帝国の皇帝だ。その口の聞き方は無礼だぞ」


「いいんですよ、ライアン外務卿。ドワーフの職人に敬語を強要するのはよくありません」


「ほう、お嬢ちゃんはドワーフをよく分かっとるな!」


「自分の作品を見せるのが一番ですよ」


 私は〈ストレージ〉から愛用の剣を出して、店主に見せました。


「んな!? これはアダマンタイトの魔法の剣!! しかも何か付与がされておる……!!」


「〈ヘヴィウェイト〉を付与して、〈断空〉のカードを錬成した剣です。重力属性と闇属性ももってますね」


「こ、これをお嬢ちゃんが打ったのか……!?」


「ええ。自慢の剣です」


「大したものじゃ。わしより腕前がいいぞ」


「でも打てるのは剣だけなんですよ。槍とか斧とか打ったことがないので」


「いや、この剣が打てればそれで十分じゃろ。魔法付与までできるのか……うらやましいのう」


 ドワーフの店主と武器談義で盛り上がりました。

 話のキリのいいところでライアン外務卿が「そろそろ城に戻らなければ、パーティの準備があるだろう」と言ってくれました。

 そうですね、ドレスに着替えなければなりませんし、早めの時間からパーティが始まると聞いています。

 名残惜しいですが、武器屋を後にしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る