ミアラッハが軽く引いている。

 深夜、第三階層でオーガ先生と打ち合う。

 だいぶ目も慣れた。

 光翼を使わなくても、仙術を使わなくても、純粋な剣技だけで打ち合えている。


「素晴らしい上達ぶりです、マスター」


「あなたのお陰よ」


「ではそろそろ、命のやり取りをしましょう」


「真剣勝負ね。いいわ、殺してあげる」


「――参る!!」


 殺気を乗せた剣の一撃をいなして、こちらも殺すつもりで剣を振るう。

 互いに真闘気法を展開して、高速での剣のやりとりを楽しむ。

 ヒリヒリする。

 殺気が心地よい。

 対人戦闘スキルが先読みをするが、オーガ先生は読まれたことを察して先読みを外してくる。

 強くなっているのは、私だけではない。

 オーガ先生も強くなっているのだ。


 しかし豊富なスキルをもつ私の方が有利なのは否めない。

 武器伸長したアダマンタイトの剣が、オーガ先生の左腕を斬り飛ばした。

 片腕を失いつつも、オーガ先生の勢いは止まらない。


 ……ああ、終わってしまう。


 それでも徐々に戦いの天秤は傾いていく。

 オーガ先生の出血が酷い。

 だが、だからこそこの有利な局面を制することに躊躇してはならないのだ!


 斬る。


 オーガ先生を両断した。


「――お見事」


 最期の呟きを聞きながら残心。


 しばしの間があって、オーガ先生の死体が迷宮に飲まれる。

 そして、新しいオーガ先生がスポーンした。


「マスター。それでは死合いましょうぞ」


「ええ。何度でも」


 そこからは経験値と熟練度を稼ぐために、オーガ先生を斬りまくった。

 途中、フェンサーのレベルが50を超えたので、エクスカリバーに転職するのも忘れない。


 一晩中、オーガ先生を斬り殺すレベリングをした。


《【転職】

 エクスカリバー(レベル49)

 ノーブル(レベル35)

 ファイター(レベル24)

 スカウト(レベル33)

 フェンサー(レベル52)

 ランサー(レベル27)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル45)

 アルケミスト(レベル26)

 マーチャント(レベル1)

 オフィシャル(レベル1)

 メイド(レベル1)

 トリックスター(レベル28)

 バード(レベル22)

 ダンサー(レベル1)

 テイマー(レベル1)

 ロード(レベル25)

 ウォーロード(レベル26)

 カースドナイト(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 チャンピオン(レベル20)

 ビショップ(レベル1)

 ウィザード(レベル22)

 セージ(レベル24)

 サモナー(レベル26)

 ネクロマンサー(レベル1)

 パペットマンサー(レベル20)

 パラディン(レベル30)

 モンク(レベル21)

 ルーンナイト(レベル22)

 バトルマスター(レベル28)

 ハーミット(レベル22)

 ダンジョンマスター(レベル21)

 エンペラー(レベル20)》


 エクスカリバーのレベルが49まで一気に上がっていた。

 【?】がふたつもある。

 ワクワクしながら、新しいスキルを確定させた。

 結果は?

 【葬剣】と【剣理】だ。

 前者はアンデッド特攻、後者は剣の理を理解するというものだ。

 特に剣理は剣にまつわることならば全てに適用されるため、鍛冶にも活かせる。

 非常に強力なスキルだ。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ビショップ レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【真闘気法】【練気】【仙術】【呪歌】

     【魔曲】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】【量産】【人形使役】

     【剣技】【剣術】【葬剣】【剣理】【槍技】【槍術】【鎚技】

     【二刀流】【多刀流】【武器伸長】【霊鎧】【素手格闘】【投げ】

     【関節技】【格闘術】【回避】【対人戦闘】【魔法斬り】【鎧貫き】

     【気配察知】【罠感知】【罠設置】【魔力制御】【魔法範囲拡大】

     【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】

     【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】【俊足】【気品】【美声】

     【カリスマ】【幸運】【不眠不休】【指揮】【鼓舞】【福音】【光翼】

     【創世神信仰】【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】

     【ヨルガリアとの絆】【迷宮管理】【迷宮帰還】【経験値20倍】

     【熟練度20倍】【転職】》


 さあ今日はイフリート迷宮攻略の日だ。

 ビショップを鍛えよう。


 〈ディメンションゲート〉でイフリート迷宮に向かう。


「クライニア、また一晩中、剣を振ってたの?」


「そうよ。遂にエクスカリバーのクラスにもなっちゃった」


「なっちゃったって……」


 ミアラッハが軽く引いている。

 そんなことがあったけど、第五十階層まで順調に突破。

 第五十階層の中ボスはブラッドトロールだ。

 もちろん太陽のない迷宮の中。

 以前、戦った時よりも手強いのは確実ですが、こちらも強くなっているんですよ。

 なによりミアラッハという心強い前衛がいるのです。

 扉を開けて、いざ参らん!!


 迷宮の床からぬぅっと現れたブラッドトロール。

 以前、太陽の元で見たのとは比べ物にならない俊敏さを見せて、突進してきました。

 私たちは左右に散開して、両サイドから挟み撃ちにします。


 ミアラッハは〈さみだれ〉を繰り出し、ブラッドトロールの右腕をズタズタに傷つけます。

 こちらもいつもの瞬殺コンボを放ち、頭部と心臓付近に〈マナジャベリン〉を叩き込みました。

 しかし硬い。

 再生もあるので、徐々に傷が塞がっていきます。

 しかし再生力はそれほどでもないようで、私たちの攻撃力の方が圧倒的に勝っています。


「〈火薙ぎ〉!!」


「〈マジックハンド〉〈マナジャベリン〉〈死棘〉!!」


 ブラッドトロールの右腕がミアラッハの〈火薙ぎ〉で斬り飛ばされました。

 そして私の瞬殺コンボがブラッドトロールの側頭部を破壊。

 死に至らしめます。


 終わってみれば、割りと余裕のある戦いでした。

 私の魔力量、もともと多かったのに以前より格段に増えてますからね。

 クラスチェンジしまくって能力値を伸ばしてきた甲斐があります。


 宝箱には罠も鍵もないので、開けました。

 中身は?

 槍でした。


 ふむ、槍か。

 性能によっては私のサブウェポンにしてもいいですけど。

 鑑定結果次第かな。


 手を繋いで、転移魔法陣に乗ります。

 第一階層に戻ったら、迷宮帰還で帝国に戻ります。

 ちなみに中ボスを倒して転移魔法陣に乗らずに迷宮帰還すると、ショートカットが開通しないので注意です。

 そんな間抜けなことはしませんが。


 さて行商人が来ていますね。

 衣類や日用雑貨など、多数取り揃えています。

 商人が定期的に来てくれるようになったということは、この国が商売の場になると判断されたということなので、素直に嬉しいですねえ。


 冒険者ギルドで迷宮品と素材を売却。

 ただし第五十階層で出た槍は確保しました。


 槍は、破壊不能の特性があるミスリルの槍です。

 破壊不能の特性は非常に強力なので、自前でDPを消費して作る気にはなれないですね。


 城に戻って夕食を食べたら、腹ごなしにリュートの演奏を楽しみます。

 呪歌と魔曲と鼓舞が乗った演奏のおかげか、ミアラッハの兵棋演習の駒づくりが捗ったようですね。

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