ガラスの加工、できるよね?

「なんじゃ、このだだっ広い空間は……」


「迷宮の中なのね。壁と天井があるわ」


 師匠とヒルダはきょろきょろと周りを見渡しながら、目抜き通りを歩いている。

 しばらく歩くと、ふたりのために用意した店が見えてきた。


「あちらが師匠の武器屋、あちらがヒルダさんの防具屋です」


「立派な建物じゃのう」


「ボロくする理由もないですからね」


 引っ越しの荷物を〈ストレージ〉からどんどん出していく。

 師匠とヒルダの引っ越しはすぐに終わった。

 細かい整理整頓は、翌日に持ち越すらしい。


「食事は城の食堂で食べてください。まだ食事処がないんです」


「あの魔王城みたいなところでか? ハハハ、本当に面白いのう!」


 確かに威圧感のある城だけど。

 ていうか魔王なんているの、この世界に。

 聞いたことないけど。


 まあ師匠とヒルダにはバカ受けしているので、良しとする。

 料理はウチ自慢のコックたちが作っている。

 白パンにシチューだ。

 鶏肉がよく煮込まれていて美味しいったらない。


 師匠とヒルダもここの料理が気に入ったらしい。

 ただし酒が街で仕入れてきた安物のワインなのが不満らしかったので、DPを使って『竜の吐息』を出してあげた。

 迷宮品だが、比較的DP消費が安いのでこのくらいは出せる。

 戦闘に関係のないものはそうDPがかからないのでありがたい。


「満足いただけましたか、師匠。ヒルダさん」


「サイコーじゃ! 料理は美味いし酒も格別じゃ!」


「本当よ。『竜の吐息』なんて何年ぶりに飲んだことか」


 どうやらお土産の『竜の吐息』は師匠がひとりで消費したっぽいね。

 お裾分けしてあげようよ、同じドワーフなんだから。


 しかしDPを使って『竜の吐息』を出すのはもったいない。

 今度、師匠に蒸留器でも作ってもらおう。

 ガラスの加工、できるよね?


 さて師匠とヒルダが気分よく店に帰っていった後、私はリビングでステータスの確認をしていた。

 ウォーロードのレベルが26になっている。

 スキルが増えるね、やったぜ。

 新しいスキルは?

 【指揮】でした。

 たまに見るけど、使えるのかな?


 転職を起動する。


《【転職】

 ウォーロード(レベル26)

 ノーブル(レベル35)

 ファイター(レベル24)

 スカウト(レベル33)

 フェンサー(レベル29)

 ランサー(レベル27)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル35)

 アルケミスト(レベル26)

 マーチャント(レベル1)

 オフィシャル(レベル1)

 メイド(レベル1)

 トリックスター(レベル28)

 バード(レベル1)

 テイマー(レベル1)

 ロード(レベル25)

 カースドナイト(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 チャンピオン(レベル20)

 ビショップ(レベル1)

 ウィザード(レベル22)

 セージ(レベル24)

 サモナー(レベル26)

 ネクロマンサー(レベル1)

 パペットマンサー(レベル1)

 パラディン(レベル1)

 モンク(レベル1)

 ルーンナイト(レベル22)

 ハーミット(レベル2)

 バトルマスター(レベル1)

 ダンジョンマスター(レベル21)

 エンペラー(レベル20)》


 ん、上級クラスにバトルマスターが増えている。

 確かウォーロードとチャンピオンのレベルを上げると出現するというクラスだ。

 せっかくなので、次のクラスはバトルマスターにしようか。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス バトルマスター レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【練気】【仙術】【錬金術】【魔法付与】

     【鍛冶】【量産】【剣技】【剣術】【槍技】【槍術】【二刀流】

     【多刀流】【武器伸長】【素手格闘】【投げ】【関節技】【気配察知】

     【罠感知】【罠設置】【鎧貫き】【魔力制御】【魔法範囲拡大】

     【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】

     【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】【俊足】【気品】【カリスマ】

     【幸運】【指揮】【福音】【光翼】【創世神信仰】

     【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】

     【迷宮管理】【迷宮帰還】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》


 さあいよいよ明日はケルベロス迷宮攻略の日だ。

 またぞろDPが大量に入ることを想像して、気分が高まる。

 しかしそんなテンションでもキッチリ熟睡できたのは、至高の安眠シリーズのおかげだろう。

 こればっかりは出して本当に良かったね。


 翌朝、私たちはゴーレム馬と木馬でケルベロス迷宮へとやって来た。

 第八十階層からのスタートである。

 終点の第百階層まで、一気に進もう!


 * * *


 ケルベロス迷宮、第百階層のボス部屋前。

 豪華な装飾の施された扉を開けると、むわっとした熱気を感じた。

 マグマがボコボコと泡立つフロアだ。

 無事な陸地はやはり三割程度しかない。

 マグマの中から、ボコリとみつ首の巨大な黒犬が現れた。


 さあラストバトルだ!!


 ミアラッハは空歩で、私は光翼で空中に躍り出た。

 地面のマグマに触れたくないので、空中戦を仕掛けるのだ。


 ケルベロスはみっつの首すべてで火炎の吐息を吐き出す。

 広範囲を焼くが、そこに私たちは既にいない。

 上空に退避していた。


「ミアラッハ、まず首を減らそう。急所は多いから、〈死棘〉より〈さみだれ〉や〈火薙ぎ〉の方が効率がいいはず!!」


「分かった。援護、お願いね!!」


「任せて。――〈シャドウセイバー〉!!」


「〈さみだれ〉!!」


 足元から無数の影の刃が生えてきて、ケルベロスを地面に縫い付ける。

 ミアラッハの槍術が、ケルベロスの頭部のひとつを突きの連打で吹き飛ばした。


 苦悶の雄叫びをあげるケルベロス。

 私たちは勝利に向けて、攻める手を止めない。


「〈マジックハンド〉〈マナジャベリン〉〈死棘〉!!」


 十本の〈マナジャベリン〉がケルベロスの急所という急所に向けて放たれる。

 地面から生える〈シャドウセイバー〉は魔法武器化しており、その形状を留めてケルベロスを地面に縫い止め続けていた。

 そこへ上空から長槍の雨が降り注ぐ。

 〈マナジャベリン〉は的確に急所を捉え、しかし表皮を浅く突き破るにとどまり、絶命には至らない。

 硬い。

 さすがは迷宮最下層のボスだ。


 しかしどれだけ硬かろうとも、ミアラッハのもつ魔槍の貫通力には耐えられない。


「〈さみだれ〉!!」


 残りふたつのうちのひとつが、突きの連打をくらう。

 原型をとどめずに脳漿を撒き散らして破裂した。


 残る首はあとひとつ。


 決死の際、火炎の吐息を吐く。

 間近で熱を感じたミアラッハは、縮地でその場から離脱する。


 空では漆黒を帯びた剣を構えた私が、落下の勢いとともに首を両断した。


 ドゴォン!!


 重量を増したアダマンタイトの剣は、ケルベロスの首を断ち切り、地面にクレーターを穿った。


 かくして、私たちはケルベロス迷宮を制覇した。

 宝箱が出現する。

 罠は爆散、鍵もかかっている。

 魔法の罠なので〈ディスペル〉で消して、スカウト用ツールでピッキングする。

 中身は?

 本日、ふたつ目のスキル結晶だ。

 美味しい。


 そして私は迷宮管理から迷宮支配を実行する。


《この迷宮を支配下に置きますか?》


 イエス!


《迷宮 名称未設定

 DP 12410667pt

 第一階層:石室

 ︙

 第百階層:石室》


 おや、1200万ポイントもあるぞ。

 迷宮大変動は、てっきり1000万ポイントで起こるものだと思っていたけど、違うのかな?

 まあいい。

 ポイントを全部、クライニア帝国に移す。


 手を繋いで転移魔法陣に乗り、第一階層へと戻った。

 街へ行き、冒険者ギルドでスキル結晶以外を売却。

 人気のない場所まで移動してから、迷宮帰還を使って、迷宮に戻る。


 さあスキル結晶を使おう。

 ミアラッハのスキルは?

 【突撃】でした。

 騎乗した状態で使用するスキルだね。


《名前 ミアラッハ・ブライナー

 種族 人間 年齢 16 性別 女

 クラス グングニル レベル 6

 スキル 【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】【再生】

     【槍技】【槍術】【葬槍】【突撃】【回避】【闘気法】【縮地】

     【空歩】【魔法斬り】【馬術】【製菓】【醸造】【魔槍召喚】》


 そして私のスキルは?

 【鼓舞】でした。

 【指揮】などと相乗効果があるっぽいね。

 好相性だ。


 さて私のステータスはというと、バトルマスターのレベルが28になっている。

 新しいスキルがあるぞ。

 【?】の中の文字がグルグルと回転する。

 新しいスキルは?

 【対人戦闘】でした。

 その名の通り、対人戦において、先読みができたりするスキルらしいね。


 転職を起動する。


《【転職】

 バトルマスター(レベル28)

 ノーブル(レベル35)

 ファイター(レベル24)

 スカウト(レベル33)

 フェンサー(レベル29)

 ランサー(レベル27)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル35)

 アルケミスト(レベル26)

 マーチャント(レベル1)

 オフィシャル(レベル1)

 メイド(レベル1)

 トリックスター(レベル28)

 バード(レベル1)

 テイマー(レベル1)

 ロード(レベル25)

 ウォーロード(レベル26)

 カースドナイト(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 チャンピオン(レベル20)

 ビショップ(レベル1)

 ウィザード(レベル22)

 セージ(レベル24)

 サモナー(レベル26)

 ネクロマンサー(レベル1)

 パペットマンサー(レベル1)

 パラディン(レベル1)

 モンク(レベル1)

 ルーンナイト(レベル22)

 ハーミット(レベル2)

 ダンジョンマスター(レベル21)

 エンペラー(レベル20)》


 明日は休日なので、鍛冶をします。

 ひとまずブラックスミスかな。

 もうすぐレベル40だ。

 新しいスキルが手に入りそうだね。


 近場の迷宮はこれで攻略してしまった。

 しばし休息として、次の行動方針を練りたいと思う。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ブラックスミス レベル 35

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【練気】【仙術】【錬金術】【魔法付与】

     【鍛冶】【量産】【剣技】【剣術】【槍技】【槍術】【二刀流】

     【多刀流】【武器伸長】【素手格闘】【投げ】【関節技】【対人戦闘】

     【気配察知】【罠感知】【罠設置】【鎧貫き】【魔力制御】

     【魔法範囲拡大】【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】

     【消費魔力軽減】【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】【俊足】

     【気品】【カリスマ】【幸運】【指揮】【鼓舞】【福音】【光翼】

     【創世神信仰】【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】

     【ヨルガリアとの絆】【迷宮管理】【迷宮帰還】【経験値20倍】

     【熟練度20倍】【転職】》

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