ダンジョンマスターってクラス知ってる?

 冒険者ギルドで鑑定をしてもらう。


 薬瓶、カード、矢筒、ブレスレット、水晶、籠手、拳銃、弓、水晶、人形だ。

 順番に見てもらう。


 まず薬瓶。

 これはマナポーションといって、魔力を大幅に回復するポーションの一種だ。

 迷宮産のマナポーションは効果が高い。

 しかし怪我や病気を治すポーションほど需要がないらしい。

 需要がないなら放出する理由はない、確保。


 次にカード。

 半透明のカードで、人類共通語で『断空』と書かれている。

 これは武器に錬成することで、書かれた文字通りの特性を付与するカードらしい。

 本来、迷宮産の武器にしかついていない特性を、人類制作の武器に付与できるスグレモノだ。

 なお『断空』の効果は武器を振るった際の空気抵抗を無視するというもの。

 要は素早く武器を振れるようになるスグレモノというわけですね。

 私の魔法の武器が完成したら付与してもいいので、確保。


 次に矢筒。

 これはマジックバッグの一種で、矢が見た目より多く入るというもの。

 弓使い垂涎の品だが、人を選ぶ点で需要が多いとはいえない。

 とはいえマジックバッグ自体が高級品なので、金貨80枚になった。


 次にブレスレット。

 幸運のブレスレットといって、宝箱を開けるときに良いものが出やすくなるという効果がある。

 私の幸運と重複するのか不明だが、その効果ゆえに欲しがる冒険者は多いらしい。

 確保!


 次に水晶ふたつ。

 やはりスキル結晶だった。

 確保だね。


 次に籠手。

 これは呪われている籠手で、ときどき握力がなくなるというもの。

 特性は腕力強化。

 カースドナイト用に確保しておく。


 次に拳銃。

 私には拳銃にしか見えないけれど、火薬ではなく魔力で魔法を撃ち出すマギガンという古代文明時代の武器だそうだ。

 便利そうなのだが、いかんせん私たちには似合わない。

 手軽な遠隔武器ということで魔法の使えない人向けに需要があるらしい。

 お値段高めで金貨100枚。


 次に弓。

 雷属性を矢に付与して撃ち出すことのできる魔法の武器だ。

 特性が強力で、追尾である。

 特性と相まって高値がついた。

 金貨100枚なり。


 最後に人形。

 これはパペットマンサーのクラスで使う人形で、自律して行動する人形らしい。

 〈アースハンマー〉〈ウォータースピア〉〈ウィンドカッター〉を撃つことができるとのこと。

 パペットマンサーになったときに使えそうなので、確保しておく。


 だいぶお金が貯まってきてしまった。

 宝箱が出現しまくるのが原因だが、幸運のブレスレットでさらに金策が加速するのかな?


 宿に戻らずにレストランに出かける。

 ちょっとお高いが、冒険者でも利用できるとあって、人気のお店らしい。

 今は亡き『三魔炎』と中ボス部屋の前での雑談で知った店だ。

 店主が元冒険者だったとかなんとか。


「ドレスコードがないのは嬉しいね」


「私は装備をつけたままというのは落ち着かないけど……」


 他のお客はまばらで、冒険者パーティらしきテーブルがいくつかある。

 みんな武器とか持ってるから、そういう店なのだろう。

 料理は質が高く、元辺境伯令嬢のミアラッハの舌も満足させるレベルの高さ。


 特に私は、じゃがいもの濃厚なポタージュに四角い猪肉が入ったものが気に入った。

 あと久々にまともなワインを飲んだ。

 お酒にこだわりがないふたりだから、いつも安いワインしか飲んでいなかったから、贅沢した気分になれる。


 ゆったり料理を楽しんでから、宿に戻った。

 さてチャンピオンのレベルがぴったり20になっている。

 スキルが増えるのだ。

 【?】を選択するとグルグルと文字が回転を始める。

 この瞬間がたまらない。

 新しいスキルは?

 【練気】だ。

 闘気を溜めて一撃の威力を高めるという技である。

 悪くない。


 あとはスキル結晶だ。

 ミアラッハと私でひとつずつ消費する。

 さてなんのスキルが増えるかな?

 私は【福音】、毒・病気・呪いを問答無用で解呪するというスキルだ。

 ミアラッハは【再生】、傷が勝手に治っていくというスキルだ。


 おっと、ミアラッハのステータスを確認したところ、ランサーのレベルが40を超えていた。

 新しいスキルが増えるね!

 増えたスキルは【葬槍】、槍での攻撃がアンデッドに特攻となるスキルだ。


《名前 ミアラッハ・ブライナー

 種族 人間 年齢 16 性別 女

 クラス ランサー レベル 41

 スキル 【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】【再生】

     【槍技】【槍術】【葬槍】【回避】【闘気法】【縮地】【空歩】

     【魔法斬り】【馬術】【製菓】【醸造】【魔槍召喚】》


 さて次のクラスは何にしようかと転職を起動したとき、事件は起こった。


《【転職】

 チャンピオン(レベル20)

 ノーブル(レベル10)

 ファイター(レベル24)

 スカウト(レベル33)

 フェンサー(レベル29)

 ランサー(レベル27)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル35)

 アルケミスト(レベル26)

 マーチャント(レベル1)

 メイド(レベル1)

 トリックスター(レベル28)

 バード(レベル1)

 ウォーロード(レベル1)

 カースドナイト(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 ビショップ(レベル1)

 ウィザード(レベル22)

 セージ(レベル24)

 サモナー(レベル26)

 ネクロマンサー(レベル1)

 パペットマンサー(レベル1)

 パラディン(レベル1)

 モンク(レベル1)

 ルーンナイト(レベル22)

 ハーミット(レベル2)

 ダンジョンマスター(レベル1)

 エンペラー(レベル20)》


 ダンジョンマスター。

 知らないクラスだ。

 恐らく迷宮をクリアしたことで条件が解放されたのだろうけど……。


 うーん、それだけならもっと知られているはず。

 聞いたこともないクラスだから、もっと別の条件もありそうだ。

 だけどその辺をすっ飛ばしてしまうのが転職というスキルだから、検証はできない。


「ねえミアラッハ。ダンジョンマスターってクラス、聞いたことある?」


「ダンジョンマスター? いいえ、知らないわ」


「だよねえ……」


 こういうときはリッチのヨルガリアに尋ねてみるのがいいだろう。

 長生きしているだけあって、博識なのだ。

 というわけで召喚。


「ちょっと聞きたいんだけど、ダンジョンマスターってクラス知ってる?」


「ほお。ダンジョンマスターですか? 伝説のクラスですな。架空のクラスともされていたものですが、もしやマスター、なれるのですか?」


「うん。クラスチェンジの候補に出てきててね。どんなクラスか知りたいの」


「ダンジョンマスター……伝説の上では、迷宮を作成・管理することのできるクラスだと聞いております。残念ながら、そのクラスを所持しているという人物は知られていません。ただそのようなクラスが存在する、という伝承が残されているのです」


「迷宮を作れちゃうの?」


「はい。伝承ではそのように。実際になって確かめるのが早いでしょうな」


「そっか。そうだね。ありがとう」


「いえいえ。できれば結果を見届けさせて頂けると幸いなのですが」


「うん、いいよ」


 さて迷宮を作成できるとはどのようなものなのだろうか。

 間違っても、この宿に作るわけにはいかない。

 だが普通はクラスチェンジは神殿で行うものだ。

 ダンジョンマスターになった途端に、迷宮が出来上がるということもないだろう。


 というわけで、転職を起動してダンジョンマスターになった。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ダンジョンマスター レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【練気】【仙術】【錬金術】【魔法付与】

     【鍛冶】【量産】【剣技】【剣術】【槍技】【槍術】【二刀流】

     【多刀流】【武器伸長】【素手格闘】【投げ】【関節技】【気配察知】

     【罠感知】【罠設置】【鎧貫き】【魔力制御】【魔法範囲拡大】

     【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】

     【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】【俊足】【幸運】【福音】

     【光翼】【創世神信仰】【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】

     【ヨルガリアとの絆】【迷宮管理】【経験値20倍】【熟練度20倍】

     【転職】》


 【迷宮管理】というスキルが増えている。

 意識してみると、


《迷宮を設置しますか?》


 という無機質なアナウンスが脳裏に響く。

 慌ててキャンセルした。


 どうやら本当に迷宮を作成できるらしい。

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