これはスグレモノですよ。

 冒険者ギルドで宝箱から出た品々を鑑定してもらう。

 今回は、瓶詰めの鱗、銀色のインゴット、無色透明の液体の入った薬瓶、白いシート状のもの、漆黒の美しい布だ。

 

 鑑定師は「またこんなに……」と呟くと、順番に鑑定を始めた。

 

 まず瓶詰めの鱗。

 瓶自体は保存魔法がかけられている。

 問題は中身の鱗の方だ。

 レッドドラゴンの鱗――正真正銘、ドラゴンの鱗である。

 成竜の、大きめのところを十枚。

 金額を聞いたが、入手困難な代物なので取っておくことにした。

 武器や防具の強化素材になるのだ。

 

 次に銀色のインゴット。

 これはなんとなく想像がついていた。

 ミスリルだ。

 鑑定の結果もミスリルと出た。

 鍛冶の素材だが、自分用ならあいにくとアダマンタイトの方が嬉しい。

 だけどふとミアラッハの解体用のナイフがまだないな、と思ったので確保しておくことにした。

 

 次は無色透明の液体の入った薬瓶。

 錬金術で使う触媒だった。

 その名も妖精の酒。

 この触媒は錬成時に追加することで、ランダムに追加効果を与えるものだ。

 ただしランダムといっても悪い効果はつかないらしい。

 このひと瓶で二回分になるとのこと。

 せっかく錬金術もあるので、取っておくことに。

 

 次は白いシート状のもの。

 何だと思ったら、ホワイトドラゴンの薄皮らしい。

 竜素材は貴重なので確保。

 ギルド職員は何か言いたげだったが、無言で売らないという意思表示をする。

 

 最後に漆黒の美しい布。

 これは正真正銘、布なのだが、織られた糸が問題だった。

 マギシルクという古代文明の丈夫で耐魔法性能のある高級糸を黒く染めたものらしい。

 染料も特殊で、闇属性に特に耐性を強める効果があるものだとか。

 竜素材に劣るが、強力な防具素材なので確保した。

 

 売るものがない。

 銀貨25枚を支払って、すがるような目の鑑定師のもとから立ち去った。

 

 さてさっそく宿に戻って錬金術の時間だ。

 

「ねえクライニア。錬金術なんていつ習得したの?」

 

「あ……」

 

「また隠し事? ていうか錬金術くらい隠さないでもいいんじゃないの?」

 

「や、つい面倒で」

 

「まあいいけどね。それで何を錬成するの?」

 

「そりゃ私たちの防具用の素材。このホワイトドラゴンの薄皮はミアラッハの防具にする。黒い布の方は私ね。で、両方にレッドドラゴンの鱗と妖精の酒を錬成します」

 

「豪勢な防具ね」

 

「ていうか私たち、防具、身につけてないしね。回避に支障が出るからっていうのもあるけど」

 

「布素材の防具って値が張るのよねえ」

 

「でも今回の宝箱で、それが揃っちゃった」

 

「ていうか低階層からドラゴンの素材が出るって凄いわよね」

 

「凄いね。まあともかく錬成するよ」

 

 念の為、アルケミストに転職しておく。

 これだけの素材を錬成するなら、経験値が凄いことになるはずだからだ。

 

《【錬金術】

 ホワイトドラゴンの薄皮

 +レッドドラゴンの鱗

 +妖精の酒

 →ホワイトドラゴンの薄皮(炎属性耐性・?)+1》

 

 よし、ゴー!!

 妖精の酒の効果は?

 

 ホワイトドラゴンの薄皮(炎属性耐性・物理攻撃無効)+1

 

 おお、凄い。

 物理攻撃無効なんてつくのか。

 魔法の乗った打撃や術系の打撃はさすがに喰らうだろうけど、単純な物理ダメージをゼロにするのは破格だ。

 

 よし次。

 私の防具も強化しよう。

 

《【錬金術】

 マギシルク(闇属性無効)

 +レッドドラゴンの鱗

 +妖精の酒

 →マギシルク(闇属性無効・炎属性耐性・?)+1》

 

 よし、これでOK!

 結果は?

 

 マギシルク(闇属性無効・炎属性耐性・即死無効)+1

 

 げ、即死なんてあったのか。

 これはミアラッハにも即死無効装備を用意しなきゃだね。

 

「できた。これを防具屋に持っていこう」

 

「これ、加工できる防具屋なんてあるの?」

 

「…………」

 

「しばらく死蔵かしらね」

 

 そうだね。

 下手な防具屋に持っていくのは憚られる。

 明日、師匠の知り合いに防具職人がいないか聞いてみるか……。

 

《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス アルケミスト レベル 26

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【鍛冶】【剣技】【剣術】

     【槍技】【槍術】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【素手格闘】

     【気配察知】【罠感知】【罠設置】【鎧貫き】【魔力自動回復】

     【同時発動】【消費魔力軽減】【怪力】【俊足】【創世神信仰】

     【?】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》

 

 うわ、一気にレベル20を越えてきたか。

 素材が素材だけに、入ってきた経験値が馬鹿にならなかったらしい。

 新しいスキルは?

 【魔法付与】でした!

 これはスグレモノですよ。

 武器や防具、装飾品なんかの完成品に魔法をひとつ付与できるんだよね。

 

 転職の候補も確認しよう。

 

《【転職】

 アルケミスト(レベル26)

 ノーブル(レベル10)

 ファイター(レベル24)

 スカウト(レベル33)

 フェンサー(レベル29)

 ランサー(レベル1)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル4)

 マーチャント(レベル1)

 メイド(レベル1)

 ウォーロード(レベル1)

 チャンピオン(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 ビショップ(レベル1)

 ウィザード(レベル22)

 パペットマンサー(レベル1)

 パラディン(レベル1)

 モンク(レベル1)

 ルーンナイト(レベル9)

 セージ(レベル1)

 ハーミット(レベル1)》

 

 下級クラスにマーチャント、上級クラスにパペットマンサーか。

 マーチャントは商人だね。

 パペットマンサーは珍しい、人形使いだ。

 アルケミストの上級クラスっぽいから、錬金術で強化した人形を使って戦うのかな?

 ちょっとこのクラスの情報はない。

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