一気に上級クラスが増えたね。
ステータスバグになったら、冒険者にはなれない。
なにせスキルが読めない以上、何の戦力にもならないからだ。
だからこれまで、迷宮に挑んだステータスバグの冒険者というものは存在しない。
危険な情報だ。
ステータスバグになった人物を迷宮に連れて行くと、高確率で宝箱が出現する。
まだ確定ではない。
この迷宮だけが特別なのかもしれない。
でも、私たちはそうは思わなかった。
第十階層、中ボスの部屋。
今回は並ぶ冒険者もいないので、私たちは迷うことなく部屋に入った。
第十階層の中ボスはリザードマンリーダーとリザードマンソルジャー五体。
リザードマンの厄介なところは【連携】スキルを持っているところだろう。
連携は、他の同種族と連携を取るというそのままの名前のスキルだが、バラバラに襲いかかってくる魔物と比較してその厄介さは比にならない。
まあそれも、今回ばかりは相手が悪かったとしかいいようがないが。
「〈ブリザード〉!!」
魔法範囲拡大した〈ブリザード〉。
変温動物であるリザードマンたちには効果バツグンだ。
ちょうど範囲内に収まったため、リザードマンリーダーも含めて六体を氷漬けにしてやった。
「……すごい」
「まあね。このくらいはね。……それより中ボスの素材、リザードマンリーダーの鱗を回収しないと」
「あ、そうだね」
〈ウィンドカッター〉をまとった手でサクサク解体していく。
闘気法をまとい、ビリビリと鱗を剥がした。
正直、人型生物の皮を剥がすのはちょっと気持ちが悪い作業だ。
「ごめんね、ひとりに任せちゃって。クライニア」
「いいのいいの。……ミアラッハそのうちにもナイフ使って解体を覚えてもらうから」
「冒険者としては逃れられないよねえ……」
「これでよし、と」
剥いだ鱗は自分ごと〈クレンリネス〉して、〈ストレージ〉に仕舞う。
中ボスたちの死体が迷宮に飲まれると、やはりというか宝箱が出現した。
「……いつつ目。一階層にひとつだね」
「ほんとハイペースだな。今度は別の迷宮に潜って確かめてみようか」
「そうだね」
罠は爆発だ。
仕方ないので解除する。
〈ストレージ〉からスカウト用ツールを取り出す。
要はピッキングツールの親戚みたいなものだが、トラップの解除に必要な道具が入っている。
そういえば罠感知と罠設置のスキルはあるが、罠解除のスキルはない。
慎重にやらなければならないということだ。
今度、罠解除の講習でも受けておいた方がいいかな。
なんてことを思いながらも、無事に解除できた。
宝箱を開けると?
中からはハンマーと鉄床が現れた。
なにこれ?
「鍛冶師の使っている道具、かな?」
「そうだね」
そういえば私、ブラックスミスにクラスチェンジできるんだよね。
これ、使えるのかな?
持ってみるとズシリと重い。
あー多分これアダマンタイト入ってるね。
持った感じで分かる。
ハンマーと鉄床を〈ストレージ〉に入れた。
そして手を繋ぎ、一緒に転移魔法陣に乗る。
無事に第一階層に戻ってきた。
まだ日は高い。
第十階層にも敵はなし、私たちってば強いわ。
乗合馬車に乗る。
今回も知り合いは他にいないので、黙って馬車に揺られて街に戻った。
* * *
真珠のネックレス、本、スプーン、石ころ、ハンマーと鉄床。
今回、迷宮から出たのはこれら五種類の宝物だ。
鑑定師の前に並べると、ひきつった笑顔で「今日も豊作ですね?」と私たちを見上げたのだった。
うん、豊作だねえ。
順番に鑑定してもらう。
まず真珠のネックレスは国宝級の値打ちがあるとのことなので、即座に現金化するのも難しいとのこと。
どんだけ高いの……。
王都のオークションにかけることを提案されたので、冒険者ギルドに任せる。
多少は中ぬきされるが、それでも十分な金額が転がり込んでくるだろう。
次に本。
これは迷宮産によくある雑学本。
今回のこれは魔物の生態について書かれているもので、私たちが潜っている迷宮に出現する魔物がイラスト付きで網羅されていたものだ。
売ってもそれなりの額になるのだが、一応、一通り目を通したいので、一旦売却は保留にしてもらう。
実は〈アナライズモンスター〉、名前以外の情報は私が覚えているものが思い出されるという効果があるのだ。
暗記していなくても、一通り目を通しておくことで、名前以外のスキルなどが表示されるようになる。
あの迷宮に今後も潜るかはともかくとして、魔物総覧は読んでおいて損はないのである。
次にスプーン。
これはマジックアイテムで、クルクルとかき混ぜるごとに液体が甘くなっていくという不思議なアイテムだ。
砂糖やハチミツなどを使わず、液体自体が甘くなるということでダイエット効果バツグンなこの品。
王侯貴族らのご令嬢に垂涎の品ということで売却。
次に石ころ。
これは空気中のマナを自動的に蓄積していく石で、貯まった魔力が水晶となって表面から生えてくるというスグレモノである。
魔力の塊である水晶は様々な用途に用いることができ、さながら金のなる木のようなものらしい。
ただし気が長い代物でもあり、ドワーフやエルフに珍重されるものとのこと。
お値段はまあまあの金貨5枚。
いかんな、金銭感覚が狂ってきている。
最後にハンマーと鉄床。
これは私の睨んだ通りアダマンタイト製の一品で、鍛冶師なら一度は使ってみたい道具とのことで、なかなかの値がついた。
もちろんブラックスミスになれる私が売却するはずもなく、手元に置くことにした。
道中で剥いだ魔物の素材を〈ストレージ〉から出して売る。
依頼の中ボスの素材もカウンターに出して、依頼完了だ。
「クライニア、鍛冶なんてするの?」
「ブラックスミスのクラスがあるからね。休日にちょっと弟子入りしてくる」
「じゃあ明日は別行動ね」
「うん。もしならずものに襲われそうになったら、遠慮なく魔槍召喚して殺してね」
「……どうして私が襲われることになるのよ」
「えー。だってお金、持ってそうじゃん」
「大半、あなたに預けてあるでしょ」
「そんなこと知らないよ、ならずものどもは。身体目当てもあるかもしれないしね」
「エッチなこと言わないの!」
やいのやいの。
そんなことを言い合いながら宿に戻る。
さて今日の収穫は?
《名前 クライニア・イスエンド
種族 人間 年齢 15 性別 女
クラス プリースト レベル 20
スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】
【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【剣術】【槍技】
【槍術】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【素手格闘】【気配察知】
【罠感知】【罠設置】【鎧貫き】【魔力自動回復】【同時発動】
【怪力】【俊足】【?】【創世神信仰】【経験値20倍】
【熟練度20倍】【転職】》
ピッタリ20になっていた。
同時発動のおかげで複数〈マジックアロー〉を飛ばして魔物を減らしていたから、経験値は多めに入ったのだろう。
スキルが増えているので、確定させる。
グルグルと文字が回転し、【消費魔力軽減】が出た。
アタリである。
よしよしクラスチェンジもしておこうと転職を起動する。
《【転職】
プリースト(レベル20)
ノーブル(レベル10)
ファイター(レベル24)
スカウト(レベル33)
フェンサー(レベル29)
ランサー(レベル1)
グラップラー(レベル31)
メイジ(レベル22)
ブラックスミス(レベル1)
アルケミスト(レベル1)
メイド(レベル1)
ウォーロード(レベル1)
チャンピオン(レベル1)
アサシン(レベル21)
ビショップ(レベル1)
ウィザード(レベル22)
パラディン(レベル1)
モンク(レベル1)
ルーンナイト(レベル1)
セージ(レベル1)
ハーミット(レベル1)》
一気に上級クラスが増えたね。
ビショップはプリーストの上級クラス。
パラディンはウォーリアとプリーストの、モンクはグラップラーとプリーストの、セージはプリーストとメイジの複合上級クラスだ。
でも明日は鍛冶をするのだし、ブラックスミスになっておこう。
《名前 クライニア・イスエンド
種族 人間 年齢 15 性別 女
クラス ブラックスミス レベル 1
スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】
【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【剣術】【槍技】
【槍術】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【素手格闘】【気配察知】
【罠感知】【罠設置】【鎧貫き】【魔力自動回復】【同時発動】
【消費魔力軽減】【怪力】【俊足】【創世神信仰】【経験値20倍】
【熟練度20倍】【転職】》
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