気持ちの問題なのだ。

 いや強敵だった。

 オーガも長じればあそこまで強くなるものなのね。

 

《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ファイター レベル 24

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【剣術】【魔力制御】

     【魔法範囲拡大】【素手格闘】【気配察知】【罠設置】【鎧貫き】

     【魔力自動回復】【?】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》

 

 よしよし、レベルが20を越えた。

 新しいスキルは?

 【怪力】だった。

 うーん、悪くないけど、良くもない感じ。

 剣での攻撃力が上がると考えれば、まあ悪くないか。

 

 次いで転職を起動する。

 

《【転職】

 ファイター(レベル24)

 ノーブル(レベル10)

 フェンサー(レベル29)

 スカウト(レベル27)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル1)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル1)

 アルケミスト(レベル1)

 メイド(レベル1)

 ウォーロード(レベル1)

 チャンピオン(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 ウィザード(レベル22)

 ルーンナイト(レベル1)

 ハーミット(レベル1)》

 

 下級クラスに鍛冶師のブラックスミスが増え、上級クラスにウォーロードとルーンナイトが増えた。

 ルーンナイトは確か魔法戦士だ。

 ファイターとメイジの上級クラスだったと思う。

 

 さて残る下級クラスもだいぶ減ってきた。

 プリーストにクラスチェンジしよう。

 

《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス プリースト レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【剣術】【魔力制御】

     【魔法範囲拡大】【素手格闘】【気配察知】【罠設置】【鎧貫き】

     【魔力自動回復】【怪力】【?信仰】

     【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》

 

 さてプリーストになったわけだけど、どうやら信仰を決めなければならないらしい。

 というより信仰系スキルがあって初めてなれるクラスなのだ、プリーストは。

 私の転職スキルはその辺を無視するからややこしい。

 

 まあ無難に創世神を信仰しとこう。

 闘神とか魔法神とかでもいいけど、得られる神聖魔法はどちらも戦闘系ばかり。

 その点、創世神ならば便利な神聖魔法が得られる。

 

《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス プリースト レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【剣術】【魔力制御】

     【魔法範囲拡大】【素手格闘】【気配察知】【罠設置】【鎧貫き】

     【魔力自動回復】【怪力】【創世神信仰】

     【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》

 

 うん、これでよし。

 系統外魔法である神聖魔法が使えるようになったはずだ。

 

 創世神の神聖魔法は、〈ジェネレイト〉系だ。

 〈クリエイト〉系と違うのは、頭にあるものならば、魔力の許す限り生成できるというところ。

 

「〈ジェネレイトチョコレート〉」

 

 日本の懐かしきチョコレート菓子が手元に現れる。

 やった、異世界の物品も単純なものならばジェネレイトできるようだ。

 

 ただし燃費は最悪だ。

 チョコレートひとつ生成するのに、〈テレポート〉一回分くらいの魔力を持っていかれた。

 ともあれ魔力の多い私だから、〈ジェネレイト〉系は重宝することだろう。

 

 創世神を信仰して正解だったね。

 

 * * *

 

 ブライナー辺境伯領に入った。

 さて出国に際して必要なものは、冒険者タグのみでいいはず。

 貴族院で習ったから間違いはない。

 ただし、ステータスと冒険者タグを見比べられるという出入国審査があるので、私の場合はそこがネックだ。

 

 ブライナー辺境伯領に知り合いはいない。

 ただ領主に通行許可を出してもらえれば、隣国に脱出できるということでもある。

 知らない人にステータスバグだとバレるのは別に構わない。

 知人にステータスバグだとバレるのは、遠慮願いたい。

 気持ちの問題なのだ。

 

 とはいえ領主にコネはもちろんないので、ちょっと目立つ必要がある。

 領主の目に留まるような依頼があれば良いのだけど。

 

 そんなことを考えながら、街道に入る。

 ゴーレム馬を土に戻して、ここからは徒歩だ。

 

 国境の防衛を担っているブライナー辺境伯のこと、領都は国境にほど近い位置にある街だ。

 国境それ自体は砦があり、両国ともに砦を抜ける必要がある。

 ひとまず領都に向けて歩いていく。

 

 門衛に冒険者タグを見せて街に入る。

 

 異国の物産が入ってくることもあってか、市場に活気がある。

 行商人たちが珍しい品がないかギラギラした目で商店を回っているのが印象的だ。

 

 さてまずは冒険者ギルドからかな。

 

 依頼の張り出されている掲示板を眺める。

 うーん、普通。

 これは領主の目に留まるような依頼はないね。

 

 仕方がないので、買い取りカウンターに向かう。

 

「すみません、買い取りをお願いしたいのですが」

 

「はい。こちらのカウンターの上にどうぞ」

 

「では……〈ストレージ〉」

 

 受付嬢が静かに息を呑む。

 出したのは?

 魔族の死体とオーガの死体だ。

 連絡用の呪符とミスリルのナイフ、オーガの槍も一緒である。

 

「素材価値はないと思いますけど、買い取ってもらえませんか。〈ストレージ〉に死体を仕舞いっぱなしにするのも気分よくないので」

 

「は、はい。これは……魔族? それにこちらのオーガはボロボロですが、亜種のようですね」

 

 おお、さすがは買い取りカウンターの受付嬢。

 見ただけで出した死体の価値が分かる。

 

「二体ともかなり強力な魔物でした。死体自体はアンデッドになられても困るので処分で構いません。持ち物はそれなりのものだと思うのですが……」

 

「はい。魔族を討伐したということなら報奨金を出せます。こちらのオーガは……ちょっと分かりませんが。ナイフはミスリル、槍の方はアダマンタイトの合金ですね。こちらは冒険者ギルドでの買い取りですと武器屋に持ち込まれるより買取額が落ちると思います」

 

「構いません。買い取ってください」

 

「はい。では……少々お待ち下さい」

 

 受付嬢は魔族とオーガの死体を職員に運ばせて、槍とナイフ、呪符を査定に出した。

 魔族の討伐の報奨金は上司と相談とのことなので、しばし待つことになる。

 別室に案内されたので、そちらで待つことになった。

 

「あなたが魔族を討伐した冒険者? まだ若い女性とは思わなかったわ」

 

「あ、どうも」

 

 エルフの女性だ。

 どうやらこの女性がギルドの支部長らしい。

 

「魔族は上位の実力者だと思うのだけど、あれひとりで倒したの? オーガの亜種の方もかなり危険な実力を持っていたでしょう」

 

「ええ、苦労しましたね」

 

「苦労、のひとことでは済まないのだけど……冒険者タグを見せてもらえる?」

 

「はい」

 

 私は銀色のタグを差し出した。

 

《名前 クライニア

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ウィザード レベル 5

 スキル 【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【基本魔法】【時空魔法】【剣技】【闘気法】【魔力制御】》

 

「……これ更新は?」

 

「倒す前のものですね。【氷魔法】【雷魔法】【光魔法】【剣術】が増えてます」

 

 よく使うので、この辺りは申告しておいた方がいいと思っての選出である。

 

「……このスキルを見るに、貴族院を出ているようだけど」

 

「それについては、私のステータスをご覧になれば分かります。〈ステータスオープン〉」

 

《名前 ■■■■■■■■■■■

 種族 ■■ 年齢 ■ 性別 ■

 クラス ■■■■■ レベル ■

 スキル 【■■■】【■■■■■■■■】【■■】【■■■■】【■■■】

     【■■■■■】【■■■】【■■■】【■■】【■■】【■■■■】

     【■■■■■■】【■■■■】【■■■■】【■■■】【■■■】

     【■■■■■■】【■■■■】【■■■■■】

     【■■■■■】【■■■■■】【■■】》

 

「ステータスバグ?!」

 

「私、実はこれ読めるんですよ」

 

「これを、読めるの!?」

 

「ええ。ですからスキルも使えます」

 

「そう、それで貴族院の出でありながら冒険者になったということ」

 

「そういうことです。もう実家とは縁が切れています」

 

「……なるほどね。職員を読んで冒険者タグの更新を行わせるわ」

 

「ありがとうございます」

 

 ギルド職員に来てもらって冒険者タグを更新してもらった。

 

《名前 クライニア

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ウィザード レベル 15

 スキル 【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【基本魔法】【氷魔法】【雷魔法】【光魔法】【時空魔法】

     【剣技】【剣術】【闘気法】【魔力制御】》

 

 これで大体、本気で戦えるだろう。

 ウィザードのレベルも不自然でないように上げておいた。

 

「ねえあなた。もしかして、他のステータスバグの人のステータスも読めるの?」

 

「分かりません。見たことないので」

 

「そう。ひとり、領地で面倒を見ている子がいるの。見てもらえないかしら」

 

「……分かりました、読めなくてもガッカリしないでくださいね」

 

「ええ。駄目でもともとよ」

 

 ギルドの支部長はハルシオーネという名前だそうだ。

 彼女が言う領地で面倒を見ている子、というのは十中八九、貴族だろう。

 もしかしたら領主一族に連なる子かもしれない。

 だとしたらこれは奇貨だ。

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