やってみるか、剣術?

 魔族の持ち物を調べる。

 通信に使う呪符が一枚だけ。

 呪符と死体をストレージに仕舞う。

 

 魔族討伐の報酬を貰うかどうかで悩んだが、そろそろ出立した方がいいかな。

 レベルアップもしたし、またステータスの更新をと迫られたら面倒だ。

 

《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス フェンサー レベル 29

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【魔力制御】

     【気配察知】【魔法範囲拡大】【素手格闘】【罠設置】【鎧貫き】

     【魔力自動回復】【?】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》

 

 さすが魔族、経験値豊富ですな。

 フェンサーが下級クラスであることを差し置いても、強敵だったという証だろう。

 

 レベル20になったので、スキルを確定する。

 グルグル文字が回る。

 【?】は【剣術】になった。

 

 純粋な剣の技量を表すスキル【剣技】に対して、剣で起こす魔法を【剣術】と呼ぶ。

 剣閃を飛ばしたりするのが有名だ。

 便利なスキルだが、魔法と同様、知っていなければ使えないし、修練も必要なはず。

 まあ当たりの部類なので、良しとしよう。

 

《【転職】

 フェンサー(レベル29)

 ノーブル(レベル10)

 ファイター(レベル1)

 グラップラー(レベル31)

 スカウト(レベル27)

 プリースト(レベル1)

 メイジ(レベル22)

 アルケミスト(レベル1)

 メイド(レベル1)

 チャンピオン(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 ウィザード(レベル22)

 ハーミット(レベル1)》

 

 転職を起動する。

 だいぶレベル20のクラスが増えた。

 剣での近接戦闘もすることだし、ファイターになっておくことにした。

 

《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ファイター レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【錬金術】【剣技】【剣術】【魔力制御】

     【魔法範囲拡大】【素手格闘】【気配察知】【罠設置】【鎧貫き】

     【魔力自動回復】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》

 

 スキルの並びを少し変えた。

 【剣技】と【剣術】は並んでいる方が見栄えが良い。

 

 よしステータスの更新はこれでお終い。

 

「〈クリエイトゴーレム〉」

 

 ゴーレム馬を出して、先に進むことにした。

 油断して顔がハニワになったが、頑張ってもシーサーになるだけなので、このままで行くことにする。

 

 マサフレイ子爵領を出るのが目標だ。

 イスエンド男爵領から東へ東へと進んできたこの旅も、もうすぐ大詰め。

 次はいよいよブライナー辺境伯領である。

 ブライナー辺境伯領には国境がある。

 上手くいけば、隣国に脱出できるはずだ。

 

 〈スタミナ〉と〈ナイトウォーカー〉を使って夜間も進む。

 時折、魔物と遭遇するが、大抵は〈マジックアロー〉の餌食だ。

 ギガントボアという巨大なイノシシの魔物にだけは、〈マジックアロー〉は力不足だと明白だったため、〈アイスセイバー〉で足元を薙ぎ払ってから〈ブリザード〉で倒した。

 立派な牙は換金素材になりそうなので、根本から引っこ抜いて〈ストレージ〉に仕舞う。

 解体して内蔵を捨てて、肉にしてやはり〈ストレージ〉に仕舞った。

 あばらの肉を〈ファイアボール〉で炙って〈クリエイトソルト〉で塩を振って食べる。

 脂が乗ったいい肉だった。

 

 街や村に寄ると何事か事件に巻き込まれる気がしたので、一気に突っ切る。

 野菜を仕入れたのは、このためだ。

 生のままで食べられるキャベツをバリバリかじりながら、休みなく進む。

 街道から外れているので遠回りになるし、道も悪いから時間はかかるだろうけど、下手に街や村に寄るより気が楽だ。

 

 そんなことを思っていたのだが、現実は非情である。

 

 森から槍を持ったオーガが現れたのだ。

 眼光鋭く、こちらを睨むオーガ。

 ゴーレム馬では逃げ切れる気がしない。

 こちらに向けてまっすぐに走ってくるオーガを迎撃する。

 

「〈ブリザード〉!!」

 

 オーガなら以前に倒したことがある。

 そのときの経験から、氷属性の魔法で動きを止めるのがいいと思ったのだが、なんと槍を持ったオーガは吹雪を突っ切ってこちらに肉薄してきたのだ。

 

「GAAAAA!!」

 

「ッ!?」

 

 槍が右足に突き刺さる。

 激痛に悲鳴を上げかけたが、そんな場合じゃない。

 

 槍が抜かれ、今度は上半身を狙って突き込まれる。

 ゴーレム馬から転がるように反対側に落ちて回避。

 ヤバイ、このオーガ強い!

 

「〈ヒール〉!!」

 

 右足の傷を癒やす。

 同時、ゴーレム馬の胴体が爆ぜた。

 オーガの槍の一撃がゴーレム馬を破壊したのだ。

 

 闘気法を全開にして距離を取る。

 足の傷は〈ヒール〉で塞がったらしく、痛みはない。

 

 さあ仕切り直しだ。

 

「〈アイスセイバー〉!!」

 

 上段から斜めに斬りつける。

 しかしこともあろうか、オーガは槍で〈アイスセイバー〉の刃を叩き壊した。

 

 氷属性の魔法じゃ駄目か?

 

 〈ストレージ〉から剣を抜く。

 剣に闘気をまとわせ、距離を詰める。

 突き出された槍の穂先を切り上げる。

 槍はガキィン! という鈍い音とともにかちあげられた。

 ヒドラの首をも落とした一撃なのだが、どうやらこの槍は業物らしく、更にオーガの闘気法で強化されているらしかった。

 薄っすらと闘気を纏っている。

 

 無駄のない闘気の運用方法に、熟練の戦士の業を見た気分だ。

 

 私の方はといえば、闘気を垂れ流しにして纏っている。

 そうか、闘気は最低限まとえば、それで効果があるのか。

 勉強になるね。

 

 私は纏っている闘気を薄くして、魔力の消耗を抑えつつ、剣を構えた。

 やってみるか、剣術?

 

「はあッ!!」

 

 剣閃を飛ばす。

 成功だ。

 

 しかしオーガにはあっさりと回避されてしまった。

 

 タメがあったのが悪かったのだろうか。

 それとも剣術の名前がなかったのが悪かったのかな。

 

 オーガは槍を連続で突いてきた。

 後退して距離を取る。

 

 ええと確か剣閃を飛ばす剣術には幾つも名前があって、流派によって違うのだっけか。

 さすがに覚えていない。

 魔法戦に切り替えよう。

 

「〈シャドウセイバー〉!!」

 

 突如として足元から刃が現れた。

 さしものオーガもこれには回避もできずに足に傷を負わせることに成功。

 よし、行ける。

 

「〈ダークブリンガー〉!!」

 

「GAAAAA!!」

 

 闇の八剣をオーガは槍で叩き落とす。

 

「〈シャドウセイバー〉!!」

 

 しかし足元からの攻撃には不慣れなようで、また直撃した。

 よし、もう一息だ。

 

「〈コールライトニング〉!!」

 

 オーガの頭上から稲妻を落とす。

 水平を直線的に飛ぶ〈ライトニング〉よりも、天から落とす〈コールライトニング〉の方が威力は上だ。

 足に傷を負ったオーガの動きは大きく鈍っている。

 私は〈コールライトニング〉を数発撃って、なんとかオーガを仕留めた。

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