幼馴染のぬくもりが名残惜しい。
レブリック家までは馬車で送迎された。
「クライニア!!」
「こんにちは、アリアガット。突然、お邪魔して悪いわね」
「いいのよ。でもどうしたの、お供も連れずに。危ないじゃない」
「家出してきたの」
「まあ!!」
うん、家出少女を装うことにしました。
馬車の中で頭を巡らせたけど、他に理由が思いつかなかったんだよ!
「お父様と喧嘩をして、ひとりで馬に乗ってウチにやって来たの!?」
「まあ、平たく言えばそうなるわね」
「危なっかしい子ねえ……」
「面目ない」
「それでそんな貧乏臭い格好しているの?」
「乗馬服に着替える間がなかったので、使用人室から失敬したの」
「へえ……やるわねえ」
ドン引きされてないかこれ。
大丈夫?
幼馴染だしまだイケる?
「まあともかくウチに入りなよ」
「そうさせてもらうわ」
突然の訪問にも関わらず、レブリック家ではアリアガットの両親とともに歓迎されました。
いやホント申し訳ない……。
夕食を頂いた後、アリアガットの部屋で食後のティータイムと洒落込む。
「で、喧嘩の理由はなに?」
「そこまでは言えないわよ」
「え~」
非難の声にも耳を貸さないことにします。
そもそも理由なんて考えつきませんでしたしね。
「そういえば誕生日ってそろそろじゃなかったっけ? 成人の儀式ってもうした?」
「それがまだなの。ちょうど直前に喧嘩になって、飛び出してきちゃったから」
「もったいないなー。先輩との縁談が進んでるんでしょ?」
「あはは、まあね」
縁談かあ。
破談になってるよね、これ絶対。
「アリアガットはまだなんだっけ誕生日」
「あと一ヶ月くらいかな」
「そっか。楽しみだね」
「うん!」
キラッキラの笑顔。
眩しいなあ。
「でさあ……嫌なことがあっても家を飛び出してウチまで来ちゃうのはやり過ぎだよ」
「う、はい」
「今日はウチに泊まっていけばいいけど……ひとりで謝れる?」
「うん、これ以上は迷惑かけられないし」
「そっか。ならよろしい」
持つべきものは幼馴染である。
一緒にお風呂に入って、一緒のベッドで眠る。
……とはいえ、これ早馬で父に連絡が行ってるパターンだよね。
レブリック家にクライニアが来ている。
ただそれだけの情報をきっと、アリアガットの両親は父に知らせるだろう。
だから私は、深夜にコソっと起きて、ベッドから出る。
幼馴染のぬくもりが名残惜しい。
きっとアリアガットと会うのも、これが最後になるだろう。
「〈サイレントムーブ〉」
無音行動の魔法だ。
自己が発する音を無くすという隠密用の魔法である。
用意してくれた夜着から、質素な上下に着替えて、カバンを持ち、窓から出る。
さようなら、アリアガット。
願わくば、君がステータスバグなどに遭遇しないことを祈っているよ。
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