魔女の末裔の私、使える魔法が苦手なクラスメートの飼いネコに憑依するという使い道がないものだった件
有栖悠姫
プロローグ
「百瀬くん、わざわざ呼び出してごめんね」
夏樹もその中の一人であり、話したこともなかったがやはりその高身長だけで格好よく見えてしまい、惹かれるを抑えられなかった。だから卒業の日にわざわざ呼び出したのだ。初対面のはずなのにこうして呼び出しに応じてくれたのだから、脈はあるのではと期待してた。何より夏樹は自分の容姿に自信があった。元々顔立ちは整っているし、3年間でみっちり勉強した化粧でいつもの三倍は盛れていた。美人だと有名だったし、告白されることも多かった、まあ微妙だと思った何人かは袖にしたが。だから、計算しつくされた年上の笑みを見せつければ容易く落ちると。
「話したことないけど、前から百瀬くんのこと背が高くて格好良いなって思ってて。私と付き合ってくれないかな?」
180を超える長身を見上げながら、恥じらいを見せつつ、告白する。これで大体の男子は落ちた。大和は無表情で何を考えてるか読むのは難しかったが、恐らくうまくいくだろうと言う根拠のない自信があった。やがて大和が口を開いた。
「…誰ですか」
「…?」
今何と言ったか、この伊藤夏樹を知らないと申したか。この学校で自分を知らない男子がいるわけがないと高を括っていた夏樹は余りの衝撃で二の句が継げなくなった。
「花飾り付けてるってことは三年生ですよね、すみません、本当に名前分からなくて」
冗談かと思ったが、その真剣な表情から本当に自分の事を知らないのだということは疑いようもない事実らしい。夏樹は膝がガクガク震えて来た。
「…そっか、名前知らないんだ、私三年の伊藤夏樹、よろしくね。改めて言うけど私と付き合ってくれないかな」
顔が引きつるのを何とか抑え、無理やり笑みを作りながら優しく問いかける。出鼻をくじかれたが、こんな美人に告白されて断る男子はまずいない。今は何とも思ってなくても、付き合っていく上で好きにさせる自信はあった。だが、その期待に反して大和はつまらなそうに夏樹を見下ろしていた。
「すみません、付き合えません」
「えっ!な、何で」
思わず口から漏れ出てしまった。こんな言葉、自分とは無縁だと思ってた。自分が断られるとは少しも思っていない、傲慢とも取れる言い草。だが、それでも目の前のこの男が自分を袖にした理由を知りたかった。自分は人を袖に出来る立場だった、決して断られる立場ではないのだ。
「先輩の事何とも思えないんで、綺麗とか、可愛いとか、そういう感情が一切湧いてこないんです」
「っ…ひ、ひどいっ」
余りの言い草に耐えられなくなり、夏樹はその場から走り去っていた。こんな扱いをされたのは初めてだった。走りながら両目の目じりに涙が滲み始めていた。その場に残された大和の事なんてもうどうでもよかった。自分のプライドに傷をつけた挙句、暴言を吐いた男の事なんぞ一刻も早く記憶から抹消したかった。
****************
(最低だ…断るにしても言い方があるでしょう、酷すぎる…)
そんな一場面を
(女子の方は、男子が美人美人て騒いでた伊藤先輩だったような、男の方は確か…)
百瀬大和、背が高くてかっこいいけどちょっと怖いとクラスの女子達が話していた。一花も話したことすらないし、それ以上の情報は何一つ知らない。が、今日新たに「酷い奴」という情報が加わった。
(あんな奴と関わりたくないな)
そう心の中で呟くのと、告白された相手を泣かせた張本人がさっさと帰っていることに気づいたのは同時だった。
魔女の末裔の私、使える魔法が苦手なクラスメートの飼いネコに憑依するという使い道がないものだった件 有栖悠姫 @alice-alice
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