麦の人

 私はいつもひとりぼっちで

 周りから浮いていた。


 ある日、教官が玉投げをするように指示をした。

 奇数だから、当たり前だけど私は一人だ。

 教官が一緒にやってくれるわけもない。

 仕方がないので、壁に当てていたら、怒られてしまった。

 布製の柔らかい球。


 諦めて人のいないほうに向けて投げて、うつむいていると、反対からころころと帰ってきた。球には麦の穂のようなものがくっついている。

 はっ、として顔を上げると、美しい女性が立っていた。

 白のながいノースリーブのワンピース、足元ははだし、明るい髪はハーフアップで後ろにまとめている。腕には麦が美しい装飾となっている。

 女性は美しく微笑むと、手をひらりひらりと振った。

 恐る恐る投げ返すと、麦の穂と一緒に返ってくる。


 それが うれしくてうれしくて

 ただ その やさしいえみに つつまれていた

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