第1話 闘技場(1)
ヘムレイズ大陸は人とエルフ、ドワーフ、そして魔物――様々な種族が同居する。
人やエルフ、ドワーフなどは自分達の領域を守り、生きている。
魔物を除いては。
魔物を支配するのは原始的な欲求。つまり、食欲。
そのために、魔物は人里離れた深遠な森、鳥すら羽を休めるのを躊躇う峻険な谷、人が堂々と練り歩く街中など、現れる場所を問わなかった。
だかたこそ、人は魔物を見れば、全てを捨てて逃げるしかない。
国家の擁する軍隊も魔物を前にしては烏合の衆に過ぎない。
エルフのような超常の力もなく、ドワーフのような頑健な肉体もない、ひ弱な人間にはそんなことくらいしか出来ない。
しかし、いつしか魔物を狩るのを生業にする命知らずが姿を現れはじめる。
ある者は金のために、ある者は名誉のために、ある者は己のために。
そんな命知らず者たちのことを、【猟犬】《スレイヤー》と呼び、賞賛し、怖れた。
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