第12話 緊急事態発生2

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―――




「「「ははははは、皆殺しだあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」


 鎧を身に着けた魔人族たちは、馬型のモンスターに跨り土煙を上げながら攻め入って来る。

 総勢5000が一斉に迫りくる様は、凄まじい迫力である。

 さて、対する『人類防衛連合』は全員が歩兵である。

 ただでさえ魔人族の方か元々の体力はあるというのに、騎兵と歩兵ではさらにその戦力は開くばかりのはずだ。

 しかし。


「魔人どもめ……見るがいい誇り高き『人類防衛連合』の力を」


 指揮官はそう呟くと、声を張り上げて言う。


「全砲塔、撃てえ!!」


 ズドン!!


 という、轟音が戦場に響き渡った。

 魔人族の兵たちが馬ごと吹き飛ばされ、そうでない者たちも多くが衝撃に落馬した。

 これこそ『人類防衛連合』が莫大な資産を投じて作った、『魔石式大砲』である。

 起爆剤を火薬から起爆性の魔法石に代えたことで、従来の数倍の威力を実現した代物である。

 ただし、威力は数倍になったが運用コストは十数倍である。

 魔法石は火薬とは比べ物にならないほど高価だ。

 だからこそ、こんなものの製造と運用は有り余る防衛費を湯水のように垂れ流している『人類防衛連合』にしかできなかった。


「魔銃隊、行け!!」


 そこに追撃をかけるのは、銃を持った歩兵たちである。

 彼らは実戦不足からか、ややもたつきながらも敵と接近し。


「打てぃ!!」


 司令官の言葉と共に、『魔王軍』の兵に向けて銃を発砲した。

 『魔王軍』兵士たちはそれに対して、全く躱す気配を見せなかった。

 それも、そのはず。彼らの身に着けている鎧は、前の戦争で人間たちが使う銃を通さなかったのだ。

 しかし。


「ぐあ!!」

「ぐぅ!!」


 『人類防衛連合』の兵が放った弾丸は、あっさりとその鎧を貫いた。

 これも『人類防衛連合』が各国から徴収した資金を湯水のように投じて開発した魔石銃である。

 従来の火薬式銃よりも二倍近い貫通力を実現したが、その分、これも大砲と同じく魔法石を燃料にしておりコストは十倍近い。

 しかし。そうであっても非常に有効なのは確かだった。

 戦いが始まって20分が経過したが、未だに人類側の犠牲者はほとんどいない。

 『魔王軍』は対魔人用新兵器に攻めあぐねていた。

 形勢は明らかに人類優勢。


「さあ、打て!! どんどん打て!!」


 『人類防衛連合』の兵たちはより勢いづいて、大砲や銃を打ち続けるのだった。


   □□


「へえ、意外とやるじゃないか」


 デレクは会議室の壁に映った戦いの様子を見ながら、楽し気にそう言った。


「ああ、デレクの言う通りだ。ここまで戦えるとは正直思っていなかった」


 アランはそう言った。

 それを聞いてサイモン長官はそら見たことかと調子をよくして言う。


「ははは、そうでしょうとも。だから言ったではありませんか。我々専門家に任せておけばいいと」


「まあ、コスパはクソみたいに最悪だけどね。さすがは戦いもしないのに僕らからバカ高い防衛費をむしり取ってただけある」


 デレクの言葉に、サイモン長官は顔をしかめる。

 まあ確かに、魔石式の大砲や銃で見る見るうちに小国の国家予算に近い費用が消費されていく様は心臓に悪い。

 権威はあっても財政的にはそれほど豊かではない第一王国のマーガレットなどは、人類側が優勢であるにも関わらず顔を青くしている。


(……まあ、それでも。そのおかげで何とかなりそうだ)


 アランはそう思った。

 欲を言えば、このまま『魔王軍』が引き下がってくれればいいのだが。

 彼らは知性の無いモンスターとは違うため、そういう選択肢もあり得る。

 しかし、そんなことを思っていた時だった。

 戦場を映していた映像に異変が起きる。


   □□


「よーし、打て打て、ドンドン打て!!」


 それは『人類防衛連合』が指揮官の声と共に景気よく、高価な魔石式大砲を打ち続けていたときだった。

 景気よく砲弾を打っていた砲塔が一つ、突如空から飛来した燃え上がる岩石に吹き飛ばされたのだ。


「な、なんだ!?」


 指揮官が敵の方を見ると。


「まったくなんでアタシたちが、わざわざ戦わなくちゃいけないわけえ?」

「ソウイウナ。コレモ、ワレワレノモクテキノタメダ」


 二体の魔人族新たにその場に現れた。

 しかし、指揮官を含めたその場にいた人間は、最初その二体が魔人族であることが分からなかった。

 それもそのはず。

 先ほどまで戦っていた他の魔人族とは明らかに見た目が違うのだ。

 まずもって、通常魔人族は何かしらのモンスターをベースに人間に近いサイズをしており、二足歩行で手が二本である。

 しかし、新たに表れたその二体はまず明らかにサイズが大きかった。

 どちらも5mを超える大型である。


「おお。ヘビーリィレイ様とボルケーノ様が戦われるぞ」

「急いで退避しろ。巻き込まれるぞ!!」


 『魔王軍』の兵士たちが、勝利を確信した歓喜と恐怖と共に我先にと左右に別れて二体の正面を開ける。


「ほんっと、使えない連中だわ」


 女の甲高い声を放つのは、恐らくマーメイドをベースにした魔人、ヘビーリィレイ。

 しかし、その見た目は人魚の美しいイメージとは真逆で禍々しい。髪はうごめく海蛇で出来ており、全身を余すところなく分厚い鱗が覆っている。邪悪に吊り上がった口元と、黒い一つ目はひたすらに嗜虐的な性格を感じさせる。

 大きな雲の上に乗って移動しており、周囲には小さな雲が浮いている。


「オ前タチ、サガッテイロ」


 そう言ったのは火口周辺に住むファイアゴーレムがベースの魔人、ボルケーノ。

 岩石を寄せ集めた巨大な体躯の間から、常にドロドロと高温のマグマを垂れ流す様は、まさに歩く活火山といったところである。


「感謝なさい。仕方ないから、アナタたち人間(かとうせいぶつ)に見せてあげるわ」


 ヘビーリィレイは人間たちを見下す感情を全く隠さない声音で言う。


「『暗黒七星』の力をね」

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