隣の後輩は出かけたい。ついでに彼女ぶりたい。

御厨カイト

隣の後輩は出かけたい。ついでに彼女ぶりたい。


「ねぇ、先輩!ちょっとお出かけしませんか!」


「……はっ?今俺がどういう状況なのかお前には見えて無いのか?」


「えーっと……そうですね……、レポートを書かれているところでございます。」


「だよな?そんなあと数時間後が締め切りのレポートを書いている俺に対して、お前はそういう悠長なことを言うんだな?」


「そ、そ、そんな事言ったって最近全然先輩構ってくれないじゃないですか!」


「当たり前だろ!卒業前でレポートとか卒論とかに追われてるんだから!と言うか、構ってないって何だ!別に俺らはカップルでも何でもないんだから。」


「そう……ですよね……。すいません、先輩の状況を考えずに言ってしまって……。」



後輩である凛は、さっきまでの元気さが何処に行ったのか心配になるほどズゥーンと落ち込んでしまう。



「あ、いや、その、……すまん、言い過ぎた。」


「い、いえいえ、私もホント先輩の状況を考えて無かったので……すいません。」


「……」



……困ったな。

確かに、最近バイトとかもあって尚更遊んだり出来なかったのは凄く懐いてくれてるからこそ申し訳ないけど……

うぅむ……、どうしたものか。


……男見せるか。



「……はぁー……、仕方ねぇな……。今からちょっぱやでレポート書き上げるから待ってろ。」


「……えっ?」


「出かけたいんだろ?だから、サッサと書き上げてやる。そんな訳だから、待ってろ。」


「……はい!」


暗い顔から、パァーッと明るくさせてそう言う。

分かりやすい彼女の様子に、思わず微笑む。


「と言うか、先輩そうやって早く書き上げることが出来るんだったら、なんでこんな締め切りギリギリまでレポート溜めてるんですか?」


「……五月蠅いぞ、それ以上聞くんじゃない、話しかけるんじゃない。」



……まったく、勘の良い後輩は嫌いだよ。














数十分後








「ふぅ、やっと書き上がった……。」


「おぉ!流石先輩です!」


「よし、それじゃあ、これ提出してくるからもうちょっと待ってろ。あ、どこ行きたいかは決めておけ。」


「了解です!」




そうして、俺はレポートを提出した後、ウキウキの様子の凛と出かける。






「それで?今日は一体どこに出かけるんだ?」


「実はですね、以前から行ってみたかったクレープ屋あるんですよ!」


「……お前、前のスイパラと言い、カフェと言い、俺を場違いな場所に連れていくのが好きなんだな。」


「アハハ、別にそう言う訳じゃないんですけどね。ただ単に先輩と行きたいな~と思ってるだけです。」


「さいですか……。」


「という訳で、さっきそのお店の場所をちゃんと調べたので今から向かいましょう!」


「ほいよ、ちゃんと案内してくれよ。」


「分かってますよ!」


「……前に場所をちゃんと確認して無くて、滅茶苦茶迷ったことは忘れて無いからな。」


「……た、多分大丈夫です!今回はちゃんと確認しましたから!」


「ふむ、なら良いのだが。」


「まあまあ、それじゃあ行きましょうか!」




凛はマフラーを巻きながらそう言う。



「あれ?そのマフラーって――」


「はい、先輩が以前買ってくださったマフラーです。」


「使ってくれてたんだ。」


「そりゃ、あの先輩が買ってくれた物ですからね。大切に使わさせて頂いています。」


「そうか、ありがとう。」


「いえいえ、こちらこそ買ってくれてありがとうございます!」



満面の笑みで、感謝を伝える彼女。

その顔を見れただけでも満足だ。



それからは他愛の無い話をしながら、凛の言っていたクレープ屋へと向かう。



「ここが、そうか?」


「はい!ここがさっき言ったクレープ屋さんです。」


「ほう、流石人気店なだけ人が沢山いるな。」


「ですね……。席が空くまで少し待ちましょうか。」


「そうしよう。」


お店の前に置いてある椅子に座り、メニュー表を見る。

あんまり、こういう所謂女子ウケするようなお店に来たことが無い俺は、メニュー表に描かれているメニューを見て、目をパチクリさせる。


「……いやー、最近のメニューは凄いんだな。カラフルだ……。」


「もう、そんなおじいちゃんみたいなことを言わないでくださいよ。」


「あんまりこういう店には来ないからな。慣れてないんだよ。」


「確かにそうですね。でも、逆に先輩がこういうお店に来るというのも想像が出来ないです。」


「だろ?」


「はい、想像しただけで笑いが、フフッ、こ、堪えられません。」


「……今日はお前のおごりな。」


「えっ!?ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」


「よーっし、思いっきり高い奴頼んでやろ。」


「せ、先輩容赦が無さすぎます!」



そんなわちゃわちゃしたやり取りをしていると、席が空いたようで店員さんに呼ばれる。



「お次は……、テーブル席ご希望の2名のお客様!席が空きましたのでご案内いたします!」


「あ、は、はーい!今行きます!先輩、席が空いたようですよ。」


「そのようだな。行こうか。」


「お客様ですね、ではご案内いたします。本日、当店はカップルデーのため割引をしております。是非ご活用ください。」


「え、いや俺たち別にカップルじゃないんですけ――」


「はい、ありがとうございます!」


「えっ!?」


「ウフフッ、今だけ先輩の彼女です♪」



今まで見たことが無いほどの笑顔を見せる凛。

……不覚にも少し「ドキッ」としてしまう。



「……ふざけたこと言ってないでサッサと入るぞ。」


「えぇー、私は真面目なんですけど!……ってちょっと先輩待ってくださいよ!」





少し赤くなった顔を隠しながら、駆け足で店員さんの後を追う俺。





……まったく、今から甘いもんを食べるっていうのに、その前に甘い気持ちになっちまってどうすんだ。





















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隣の後輩は出かけたい。ついでに彼女ぶりたい。 御厨カイト @mikuriya777

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