二人きりになりたかったのに

帰り際に瑞穂が僕に言った。

「凛を送って帰ってあげて」

凛が目を見開いていると、おじさんが割って入る。

「俺も一緒に帰る」

僕は落胆した。この人は何なんだ。


 三人で静かに歩いた。当たり前だ。失恋した僕と相手の女の子、そしてよく分からないおじさんが歩いているんだ。何を話すのか見当もつかない。しかしおじさんが問いかける。

「なあ、凛」

「何?」

「好きな男いるか?」

僕はデリカシーのなさに驚いた。

「いないよ」

返答に僕は安堵したところで、おじさんが続ける。

「ルイはどうだ?」

凛が僕を見つめる。

「小さい」

「そうだな。大きくなったらどうだ?成長期だ」

さすがに笑っている。

「考えとく」

おじさんが笑顔を見せると、凛の表情が弛緩する。

そして彼女は、僕に微笑みかけた。

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