自傷
来る日も来る日も、僕は初恋が成就することを祈りながら、スタジオにやってくる凛を眺めていた。小学生の気持ちなんて中学生にはお見通しらしい。練習の終わりに、瑞穂は凛にペットボトルを手渡した。
「ちゃんと小さなボーカルを可愛がらないとだめだよ。これ渡してあげて」
凛は無表情で僕に水を差し出した。
僕はその左腕の手首に傷跡を見つけた。かなり深く怪我をしているようだ。そしてその怪我は、悲しみと絶望を物語っている。僕だって傷の意味くらい知っている。
「凛、それ」
凛は表情を変えない。
「水だよ。どうしたの?」
「なんでもない。ありがとう」
僕は帰り道に、おじさんに相談した。おじさんは何ということもないようにこたえる。
「寂しいだけだよ。そういう女は多い」
「どうしたらいいの?」
「お前が孤独を埋めてやれよ」
小学生に何ができるんだろうか。結局おじさんは何も教えてくれないと思っていると、言葉が付け足された。
「好きになったなら、好きだと言えばいい。まあ若い恋愛はよく分からないから、三人組に相談してみろよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます