初恋

退屈そうな凛を連れて、瑞穂は練習にしょっちゅう顔を出すようになった。瑞穂はとても優しい。いつも練習が終わると僕にだけ水をくれる。

「何で俺のがないんだよ」

ケイ君の決まり文句になった。凛以外が笑う。


 そんな凛を見て思ったんだ。

 笑顔が見たい。


 僕は歌いながら、凛に目を向けることが多くなった。誰も気づいていないと思っていたら、帰りの車の中でおじさんが言う。

「集中しろよ。声変わりまであと少しだぜ?」

言葉に詰まる。

「精一杯、格好をつければいい。初恋が実るなんていい話じゃないか」

初恋。僕は恋に落ちたらしい。

「どうしたらいいの?」

おじさんは笑顔を見せ、ノッキン・ノン・ヘブンスドアを流した。


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